第15話
地上3階建、地下に至っては2階まであるこの宮殿。まだ半分も案内されてないけど既に迷子になる自信があります…あれだよ、市役所とかにある案内板が欲しい。
「ぐぅぅ〜」
僕のお腹が盛大に鳴り食事を要求する。ちょっとだけ恥ずかしいけど朝から何も食べてないし色々あったからしょうがないよね?
「リト様、食堂の方へご案内しましょう。残りの部屋につきましては客室やら使用人部屋になりますのでご案内は不要でしょう」
お腹の音を聞き流し食堂へと案内するロッテン。むむっ、気遣いの出来る男ってカッコいい。
ポンコツメイドだと思ってたエミリーですら精霊女王ならばこのロッテンは何者だろう…色々と考察するけど何も思い浮かばない。
そうこうしてるうちに重厚な扉の前に案内されると中から扉が開かれる。
「うへぇ〜」
天井に煌めくシャンデリア、高級感漂う長テーブル、初めて見る暖炉。どれもこれも嫌味なく存在感を放っているがまとまりのある落ち着いた空間を演出している。
「ささっ、こちらへ」
ロッテンに促されていわゆる家長が座る席に案内される。
むむっ、やはりさりげなく椅子を引き出来る男のロッテン。素敵なおじ様ですこと。
「はぁ〜」
時刻は夕方なのだろうか?右手を見ればガラス越しに木々の間からオレンジ色に反射した水面の湖。素晴らしい眺めに思わずため息が漏れる。
「景色最高だよ、どこぞの高級レストランみたい。いや行ったことはないけど…」
しばらくの間景色を堪能しているとどこからか美味しそうな匂いが漂ってくる。
「リト様、お待たせしました」
いつの間にかにこやかな笑顔で料理をのせたワゴンを押して側に立ってるエミリー。
この匂い…やっぱりカレーは食欲をそそる。
いや、この高級感漂う食堂でカレーもどうかと思うけども、この口は朝からカレー仕様になってるからそんな事は気にしてられない。
銀製の蓋を取り湯気が立ち上るカレーが目の前に。
「!!」
「カレールゥーだけでは物足りないので色々とスパイスを調合して仕上げております」
もう我慢できない。エミリーを見上げるとコクンと頷く。
「いただきます!」
右手にフォークを持ちいざ!
「ズルズルズル…美味しい…」
あぁ…程よい辛さに色々なスパイスの香りが鼻を抜けて…幸せ。顔がとろけちゃう…
そんな顔をにこやかに見守るエミリー。あんまり見られると恥ずかしいからさ…
「皆んなも一緒に食べよ?」
「「では失礼して」」
各々、席に座るエミリーとロッテン。そこへメイドの妖精たちが給仕を始める。
え?カレーなのに何故フォークでズルズル啜ってるのかって?
ふふふ、カレーライスも至高だけど僕は茹で上がってお湯を切ったそうめんにカレーをかけて食べるカレーそうめんが大好きなのです。汁気の多いカレーうどんとも全然別物で、あの細い麺にカレーのルゥが絡まってそうめんの喉越しもいい。お米よりもクセになる美味しさ。
誰かが言ってたじゃない。
カレーは飲み物だって…
「はぁ〜最高〜」
あれから食事を終えた僕は3階にある露天風呂に身を沈めている。頭に髪を纏めてタオルで巻いている女の子スタイルですね。もちろん身体も髪もメイド達に洗われました…
メイド達のヤル気に恥ずかしいとか言ってられない状況で流されるしかなかったのですよ…
「でも嫌じゃないよ?」
空には満天の星空。ここが地球とは別の異世界だと忘れてしまう。
「あの人達は大丈夫かな?まぁ明日のことは明日考えよう」
多少のぼせ気味の身体を湯船から引き上げる。外の風が熱った身体に気持ちいい。
浴室から出ると…
「うん、予想してた…」
一列に並んだ4人のメイド達がバスタオルを手にワラワラと寄ってきて身体を拭かれ、パジャマに着替えさせられて、椅子に座らせられる。
魔法ってほんとに便利。温かい風魔法で髪を乾かされ櫛で整えられる。化粧水を付けられてパックまで…
「えっと、僕男だからここまで必要?」
「ご主人様、男の子と言えどその綺麗なお顔とお肌にはお手入れは必須です。いえ、むしろ私達がやりたいのです!」
「そ、そう?」
必要だから2回言うけど決して流された訳じゃないよ?むしろ嫌いじゃない。
顔にパックをされたまま寝室に案内される僕。
「どこぞの高級エステかな?いや行った事ないけど…」
今日2回目の似た感じのくだりを呟く。
両開きの扉が開かれる。
はじめに目に入ってくるのは天蓋付きの大きなベット。重厚な味わいのある家具や鏡台。
もう驚きはしないぞ!ポフンとベッドに身を投げ出す。ちょうど良い身の沈みを感じるマットレス、手触りの良い軽い掛け布団、ネグリジェ姿のエミリー、、、
「ふぇ?」
「ささ、今日はどの絵本をお読みいたしましょう?」
今まで一度もそんなのやった事ないのに何言ってんすかね…
それに、ベットの魔力が気持ち良すぎて相手にする気もなれない。今日はこのまま放置して寝よう。明日は何しようかな?そんな事を考えながら瞼を閉じる。
「おやすみエミリー……」
うん、こんなポンコツエミリーでも隣にいる温もりは心地いい…
それよりも誰か!
顔のパックを剥がすタイミングを教えて!
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