第14話

 え?え!エミリーってばこの世界では精霊女王なの?メイドさんじゃなくて?

驚愕の事実にポカーンとしてると…


「人違いです。なので2人とも立ち上がりなさい」


「えっ、いやでも…教会に描かれている御姿にそっく…」


「本人が違うと言ってるのです。仮に私が精霊女王だとしても今は我が主人、こちらのリト様に仕える専属性隷女王なのです」


結局どっちなの?


「それより…命を助けた我が御主人様に跪かずに私に跪くとは何事ですか?まぁ人族で私よりも遥かに上位なリト様の存在の大きさとナニの大きさに気付けと言われても無理な話ですが…」


なんだと…6歳児では平均的だよな?

それよりも言われてハッとしたのか2人が改めて僕に跪き礼を述べる。


「当たり前のことをしただけですから礼は不要ですよ?それよりも温かいものでもお腹に入れて少し落ち着きましょうか」


 先程作ったコンソメスープをカップによそい2人に手渡す。

さて、2人が飲んでいる間にこれからの事を考える。


「えっーと、馬は無事だけど馬車は壊れてて怪我人が4人…」


 怪我人は呼吸は弱いが落ち着いてきている。ただなぁ直ぐに動かせる訳ではないのは見ても明らかだ。とは言えここでしばらく野営する訳にも行きそうにない。

うーん、とあれこれ考えている僕に


「リト様1度拠点に戻られてはいかがでしょう?」


思考してる僕を察してかエミリーから声がかかる。


「うん、それは考えたんだけど怪我人を余り動かす訳にはいかないじゃない?」


「ちなみにですが、私が居なかったらどうやってお戻りに?」


 それを言われてハッとする。確かに突然転移?で連れてこられたので此処がどこだかもわかってないし拠点がどの方向でどのくらい離れてるのかもわからない。


「とりあえず感を頼りに?」


「ふふふっ、やはりリト様は私がお側に居ないとダメですね。これはくんずほぐれつの添い寝の貸し1つですよ」


 にこやかな笑顔で僕をヒョイと抱き上げると何やら呪文の様なものを唱え始める。

木々がざわめき暖かい風が頬を撫でると僕達は緑の光に包まれた。


 眩い光が止むのを感じるうっすらと目を開ける。そこは僕が魔法の練習をした木が切り倒されて開けた場所だった。


「おおっー、エミリー凄い」


 転移魔法もそうだけどちゃんと馬も馬車も怪我人も全員連れてきてる。


「リト様もこれくらいなら直ぐに覚えられますよ」


「ほんと!」


 転移魔法なんてますますチートな夢が広がるじゃん!ワクワクが止まらない。

それよりも、スープを飲んでいた手が止まり呆気に取られている2人。そりゃそうだよね、何も言われずにいきなり景色が変わったら誰だってビックリするに決まってる。

 状況を説明するのに声をかけようとして逆に背後から声をかけられる。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


そう言って胸に片腕を当て綺麗なお辞儀で出迎えてくれたのは、バトラーのロッテン。


「そう言えば朝から姿が見えなかったよね?」


「色々と準備がございましたので。とりあえずこちらへ」


そう促されてロッテンの後を付いていくと…


「ナニコレ…」


「拡張されてるとはいえ、いつまでもテント生活はさせられませぬ故勝手ながらに小さいながらも建てさせていただきました。もちろんお風呂などは地下から源泉を引いておりますし、トイレなども女神様からシャワートイレなるものを…リト様の記憶を…うんたらかんたら…」


 これ屋敷ってレベルじゃなくない?湖面の前に立派な宮殿。1度は行ってみたいと思ってたウィーンのあの宮殿にそっくり。それに、まぁなんと言う事でしょう湖と反対側はこれでもかというほど色々と咲き乱れたバラの庭園。バラの香りが鼻腔をくすぐる。3人しかいないのに無駄に広くない?そもそも20畳の部屋を与えられてもきっと僕ならクローゼットの中の方が落ち着くよ?


「さすがはロッテン。リト様には狭すぎますがとりあえず今はこれで良しとしましょう」


ふんす、とまるで自分の手柄のように胸を張るエミリー


「いやいや、十分広すぎるから!3人しかいないのに手入れが大変だから!」


今後無駄に拡張されても困るので全力で現状を受け入れる。


「リト様広さは問題ではないのです。何故なら…」


そう言ってパチンと指を鳴らすエミリー

(何その仕草無駄にカッコいい!)

すると、ふわふわと色とりどりの光が玄関前に集まる。

 次の瞬間、可愛いメイド服を着て背中から羽根の生えた少女達が左右に別れて列を作り綺麗なお辞儀で僕を迎える。


「「「お帰りなさいませ御主人様!!」」」


「えっ!どこから?」


「リト様、彼女らは私の眷属のシルキーや妖精族の中から厳選な審査の結果選ばれた50名になります。ちなみに募集倍率は100倍を超えております」


「そ、そう…」


 審査内容が気になるが聞かない方が身のためだろうなきっと。


「それでは今日一日はテントの方にお泊まりになられますかな?」


ロッテンからそう問われるけど…


「僕もこっちに…」


 決して妥協した訳じゃないからね。この先きっとテントで泊まる事もあるはず。楽しみは先にとっておく事にしただけだから。そう自分に言い聞かせる。


「では屋敷の中を案内いたします」


うん、お願い。でもその前に


「怪我人を運んであげよ?」


決して宮殿の事で忘れてた訳じゃないし、まだカレーを食べてない事も覚えてるからね!

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