第8話

 さて、結界を無事?張り終わった僕は次の作業に取りかかる事にする。


「まずはテントを張れる場所の確保だよね」


 辺りはジャングルの様に木の密度が凄い事になっている。まずは定番のウインドカッターで木を切り倒して切り株を引っこ抜いてからの土魔法で整地かな?

チェーンソーでも一本の木を切り倒すのは大変な作業なのだ。ただの風魔法で木を切り倒すのは容易ではないだろう。

僕はしっかりとイメージを固める。


「しっかりと圧縮、しかも薄くて触れたものは豆腐を切る様に程よい抵抗力を感じる程度に力加減をして…うん、打ち出しの初速は速い方がいいな」


イメージが出来上がった所で軽く左手を振るうと優しい微風がリトの頬を撫でる。

しばらくその場に立ち様子を見ていたが木々に変化はない。


「確かに発動したはずなんだけど…」


木に近寄り狙った辺りを見てみるが切断された様な形跡は見当たらない。


「もう少し強めにやってみる?力を抑えるって逆に難しくね?」


独り言を呟きながら木に触れた時、

(ギギギーッ)

(ミシッミシミシッ)

(ズドドドーン!!)


「イヤイヤ…立木を1、2本狙ったはずなんですけど!」


リトの魔法を発動した位置から幅5メートル奥行は100メートルはあろう場所を扇形に広がって木々が倒れた。


「魔法ってある意味難しいね…」


威力の調整はこれから覚えていく事にしてやっちゃったものはしょうがない。前向きに考えて切り株を見てみる。


「おおっ!ささくれも無く滑らかに切り倒されてる!」


 余りにも綺麗に切り倒された事で気持ちよさを覚えてもう一度魔法を発動してみたい気持ちに駆られるが無駄な自然破壊は良くないと思い自重する。

問題は残った切り株なんだけど、これは土魔法で取り除くの?それとも力技で引っこ抜く?うーんと唸って考えてる所にエミリーから声がかかる。


「リト様、風魔法の練習ですか?」


「うん、それもあるけど…テントを張れる場所を作るのに1、2本でよかったんだけどね力加減がまだ難しいみたい」


「それならば木に触れて収納魔法で収納すれ…「それは知ってたよ!!」ばよろしいのでは?」


 ぐっ!エミリーに指摘されちょっと恥ずかしい。しょうがないよね!魔法のない世界から来て使い方の発想が思いつかなかったんだから。

何事もなかった様に切り株触れて収納するリト。どうやら風魔法の練習の一環で押し通す事に決めたようだ。


 さて土魔法で整地も出来たし次はテントの設営だ!僕はマジックバックから某メーカーのテントを取り出す。こういうのは組み立てる時がワクワクするよね?

 えっ?収納魔法があるのに何故マジックバックを持ってるのかって?それは下界に降りる前日の日に遡る。


 僕は下界での楽しい日々を想像してワクワクしながら必要なものを収納に詰め込んでいたんだけど、


「リトや、明日はいよいよ下界に降りるのかや?」


「あっ、お爺様。はい。母様の許しが出たので明日下界に降りようと思います。あー楽しみだなぁ」


「そうか、可愛い子には旅をさせよとは言うが可愛い孫には不自由させたくないでの。どれ爺ちゃんからプレゼントじゃ」


 そう言って手渡されたのはショルダータイプの鞄とベルトに通して使うポーチだ。どちらも上質な革が使われているのだろう。まだ真新しいが使い込めば良い感じに味が出そうだ。


「お爺様これは?」


「それは下界にあるマジックバックに似せて作ったものじゃ。これから色々と必要なものが出てくるかもしれんからな」


「収納魔法なら使えますよ?」


「それは知っておる。じゃがそのマジックバックは収納魔法とは別物じゃぞ。盗難防止、時間停止、重量軽減、容量無限は当たり前じゃが、1番の特徴は空間共有じゃな」


「空間共有?」


「物は試しじゃ!欲しいものを紙に書いて鞄に入れてみると良い」


 そう言われて僕は欲しいものを考える。そう言えばキャンプするのにテントも何も持ってなかったんだ。神界ではキャンプなんてしないしお店なんてないからね。

机に向かい羊皮紙に欲しいものをリストアップしていく。

世界に関係なく欲しい物なんでも良いのかな?

お爺様の言う通り物は試しでどんどん書いていく。

うん、とりあえずこんなものかな?書き上がった羊皮紙を折りたたんでマジックバックに入れてみる。


「えっ!今さっき羊皮紙を入れたばかりなのに!」


 カバンの中に入れた手から中に入っている物のリストが頭に流れてくる。あっという間に欲しかった物が揃ってる事に驚くと共にその中に僕が入れた羊皮紙とは違う手紙が入ってる事に気づきそれを鞄の中から取り出す。

懐かしい前世のメモ用紙、そこにはこれまた懐かしい字で

(リト元気でやってるか?欲しい物があったら遠慮なく手紙入れろよ。父さんはこれから母さんとハネムーンじゃ)

ガハハと笑い声が聞こえてきそうな手紙にちょっと涙が出る。


 いやハネムーンって、僕が産まれてこっちに来てから何年経ってるんだよ。仲良さそうな2人が想像できてホームシックになる。


「ジィジありがとう」


寂しさを隠す様にジィジの足にしがみついてお礼を言う。絶対に泣いてないからね!ちょっとツンデレ風に言ってみる。


「ホッホッホッ、まぁ娘が向こうに行ったから作れたようなもんじゃ。大したことではない」


はぁ〜母様は下界に降りる許可を僕に出すとすぐに飛んでいったからな、母様も楽しむなら僕も楽しもうと心に決めた時後ろからヒョイと抱きかかえられる。


「リト様には私めもおりますよ」


 抱っこの形に抱き直され背中をトントンしてくる。うん、こっちの世界に産まれてきてからずっと傍で面倒を見てくれてるエミリー。

この背中トントン弱いんだよなーと思いながら眠りについた。




なんて事がありました!マジックバックの作りや支払い?はどうなってるかわからないがこれは凄いです!マヨネーズ作ってとか醤油味噌を求めてとか心配がなくなりました!お米はたまに食べたくなるかもしれないけど僕はパン派なので余り気にしない。

まぁ今はとりあえずテントの設営の続きをしよう。


「リト様今晩も一緒に寝ましょうね?」


背中をトントンする仕草を見せるエミリー。

うん…まだちょっと寂しいから今晩も一緒によろしくね。

決して背中トントンが欲しいんじゃないからね!またもやツンデレ風に心の中で言ってテントを設営するリトであった。





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