第6話

 僕は今母様の正面に座り直し説教と言うか注意をしている所だ。プライバシーを覗くと言うことについて。注意と言っても覗かれている事がわからないのだから効果があるかは分からないのだけども…


「でもねぇ息子の成長は気になるものよ?つい覗きたくなるのよ?部室?で2人盛ってたと「だからヤメロ!」きも…」


エミリー大人しくしてるが顔が崩れてヨダレが出てるぞ、美人が台無しだ。

いやあれは部活終わりに帰ろうと思って準備してたんだが、人気のない学校というシチュエーションになんか突然に2人してスイッチが入ったんだよな…あんなに積極的な麗奈は…


「焦ったいからヤル気スイッチ押してあげたのよねぇ〜」


「あんたのせいか!」

母様は愛の女神と言うより変態エロ女神確定だな。

「母様は今侮辱を受けた気がします」


変な所鋭いな…


「オホン、で、話を戻してもう下界に降り立っても問題ない?」


「いいわよ」


あれ?意外とあっさりと許可が降りたぞ?まだ早いとかもっと一緒の時間をとか言われると思ったのだが?


「ママの方も問題が片付いてきたしこっちの世界はリトちゃんに任せてミコトさんの所に戻ろうかしら?ウフフ、リトちゃんは弟と妹どちらが欲しいのかしら?いっその事双子という選択肢も…」


 あーあ、エロ女神妄想の世界にトリップしちゃったよ。でもこれでやりたかったソロキャンや釣りとか色々と出来ると思うとワクワクしてきたな。病室で見てた動画、どれも楽しそうだった。前世みたいに便利な道具とかないけどそれもまた良し。うんうん、焚き火を前に夜空を見上げて飲むコーヒーは美味しそうだ。

もうね、暇すぎて既に降り立つ場所はリサーチ済みなんだよね。深ーい森の中に綺麗な泉があってその背後には泉を囲むように南アルプスを思わせる山々…高い山々の向こうには緩やかに草原が広がり海が広がる。まずはのんびりログハウスなんかを建てて…あー夢が膨らむ。僕も僕とて妄想の世界に浸っていると逆に妄想の世界から帰ってきた母様に声をかけられる。


「でも流石に1人じゃ駄目よ。条件としてエミリーとバトラーのロッテンを連れて行くことね」


うぐっ、1人気ままにとは行かないようだが。まぁ神界で平和ボケしているよりはいいか?エミリーなんかは胸の前で手を組んでウルウルしちゃってるよ。


「リト様の身の回りのお世話はこのエミリーにお任せください!料理から掃除、裁縫に始まりお風呂でリト様の小像さんを……ぐへへっ…」


身の回りには変態しかいないのかな?神罰を落とそうと思ったのだが1回落とした後の反応観てるとどうやらご褒美みたいに感じてるようだが?ここは放っておく方がよさそうだ。


「神罰が落ちてこない?ハッ!これはまさかの高度な放置プレイと言われるもの…それはそれで色々とグチュグチュしてしまいます…ぐへへへっ…」


何がグチュグチュするの⁈とは聞かない。もう残念ながら色々と諦めよう。


「はぁ〜、母様の条件わかりました。その条件でお願いします」


これでやっと異世界生活のスタートラインかな?温くなった紅茶を一気に飲み干し一息入れる。


「あ、そうそう。昨日ミコトさんからリト宛に荷物が届いたわよ?」


そう言って母様は空間収納から長い箱を取り出し僕の前に置く。


「まさかの宅◯便!」


「あら?知らなかったの?アニメでもやってたから知ってると思ってたわ」


「まさかの魔◯の宅◯便!」


「うふふ、前の世界でも意外と神が経営してる会社ってあるのよ。アダムとイヴを連想するリンゴのロゴの会社とか◯天とか?」


驚愕の事実!ってか神様達って暇なんだな。会社作って働いて…

それよりも箱の中身が気になる。母様の許可を得て箱を開封すると綺麗な蔦の装飾が施された鞘に収まっている一本の剣が入っていた。


「凄い綺麗!」


 白金の下地に薄い緑で浮き上がるように彫り込まれた蔦の装飾に裏と表に色違いの薔薇の蕾が1つ。金で縁取られた蔦の装飾だが派手さはなく美的センスのない僕でもシンプルに美しいと思える。

僕はその剣を恐る恐る手に取り鞘から剣を引き抜く…


「わぁ」


思わずそんな変な声が漏れてしまうほどの剣身の美しさ。鞘に負けてない、ガードの部分から剣身中央に炎の様な模様が剣先に向かって入っているのだが…


「揺らめいてる?」


そう、刃紋だと思ってた模様がゆっくりと揺らめいていたのだ。


「凄い」


 しばらく呆然と見惚れていたが我にかえり剣を鞘に戻す。前世でも剣と関わることなんて無かったのに初めてとは思えないほど手に吸い付くグリップ。柄頭にも綺麗な薔薇の細工。ちょっと使うのが勿体無いと思えるほどだ。

父さんにこんな美的センスがあったとは信じられない…


「ウフフ、喜んでくれたようね。もちろん美的センスなんてミコトさんにはないわよ?デザインはママが考えたの。飾りの剣じゃなくて実用性バッチリだから安心してね、なんでも神鋼と呼ばれる緋緋色金とオロチ?の部材を使って剣を鍛えたそうよ。後は付与がなんたらとか言ってだけど…」


忘れちゃったわと言ってペロッと舌を出す母様。うん、他の人がやったらイタイけど母様ならアリだな。おい!隣で同じ仕草してるけどお前はイタイ方だからな!誰が?もちろんエミリーです。


「父様ありがとう」


 うん?父様?前世ではオヤジとか父さんとか呼んでいたはず…なのに口から出る言葉は父様?

そう言えば前世の記憶があるからこの歳だと母さんとか呼びそうだけども口から出る言葉は母様だ。???頭の中であれ?って考えていると…


「それはママの補整ね」


「補整?」


「こっちの世界に合うようにリトちゃんの身体を作り変えた時にちょっとね。まぁママの好みって言うのかしら?でも上手に出来たわよ?後ねママ、女の子もいいなぁーって思ってたんだけど男の子のリトも捨て難いじゃない?そしたら地球の日本に素敵な言葉があったのよ!」


うーん?母様の好みに言葉が補整されちゃうって事?まぁ母さんやオフクロって呼び方は女神には合わないもんね。それぐらいなら別にいいかな?

それよりも…


「母様、素敵な言葉って?」


ふふーんと、胸を張ってドヤ顔で


「男のオトコノコ!!」


「オイッ!!」

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