第5話
じぃじと初対面から3年が経ち僕は6歳になった。もうね暇すぎてやる事がない。ある意味スローライフだけども、だけれども!ぐてーっと毎日を過ごしてるだけなのはスローライフなのか?なんか違う気がする。
母様とは離れてた分しばらく一緒とは言われたけども何歳までだ?このままやる事ないと呆けてしまいそう…何かやる事探さなきゃ。
そうだ!下界に降り立った時にある程度の力は必要だよね。
「うんうん、ラノベ展開でもスキル貰ったり修行したりしてて!」
力を持って転生して知らないうちに
「あれ?俺なんかやっちゃいました?」
って具合に………
いやいや…前世で何回歯ぎしりした事か…
「なんかやっちゃいました?じゃねぇーよ!どんだけ鈍感なんだよ!ってか考えて行動しろよ!アイテムボックスのスキル持ちも貴重だから目立た無いようにした方がいいとか忠告されてるのに普通に人前で使っちゃってから「あ!」とか言っちゃって使ってるし人の話聞いてんのかよ!他にも……」
はぁはぁ…普通に取り乱してしまった。そんな展開の度に病院のベットの上からラノベ本を床に叩きつけてやろうかと思った事か。
まぁ結局面白いから全部読むのだけども。
うん、無自覚系だけはやめとこう。とりあえず下界に降り立った時に力がないとスローライフは難しいだろう。剣術、魔術、できれば錬金術とかもある程度使えるようになっときたい。そうと決まれば母様に相談しよう。僕は母様が居るであろう中庭に向かった。
中庭の東屋には相変わらず凛とした姿勢で椅子に腰掛けて優雅にお茶を嗜む母様の姿が。僕は母様に捕まる前にいそいそと向かいの席に座る。流石に6歳で膝の上は恥ずかしい。
ササッと向かいの席に座った僕にジト目を向けてくる母様を気にせずに話しかける。
「母様お願いがあるのですが」
そう切り出した時、メイドのエミリーが声をかける。
「リト様お茶をお持ちしました」
うん?来るのを分かっていたかのようなタイミング。お茶を持ってきてくれるのは嬉しい。だけど僕の目の前でなくて母様のカップの隣に置くのは…
机の上を人差し指でトントンと小突く母様。
メイドもグルなのか…
「ソウデスヨネー」内心で思いながら今後のためにも諦める。
「察して感じろ!自分は出来る男!」意味のない決意を持って椅子を降りて母様の側に行くとあっけなく捕縛される。
やっぱり膝の上なのね。せめて隣の椅子に…
違うな…
「察して感じて、諦めろ!」だなと新たな追加事項を決意に足す。
さっきまで机を小突いてた方の手で優しく頭を撫でながら
「それでお願いって何かしら?」
後ろから覗き込むように聞いてくる母様。確かに僕の母親だけども美人すぎて何故かこちらが恥ずかしい。
斜め後ろで控えているメイドのエミリーから
「美しい親子愛、眼福です…」
何やらブツブツ呟いている。この残念メイドめ、後で仕返ししてやろう。
「えっーと、下界に降り立った時にある程度の実力と言うか力が欲しいのですが、剣術や魔法とか習えるような先生はいませんか?」
本当ならラノベみたいにスキルを貰ったり選べたりしてみたいのだけどもそれは後々お願いしてみよう。
僕の言葉を聞いた母様は首をコテンと傾けて
「剣術や魔法の先生?」
「はい、僕はまだ剣を握った事もなければ魔法を使ったこともないので」
母様の世界は剣や魔法の世界と聞いている。もちろん魔物とかもいるらしい。だいたいのラノベの世界観と変わらないようだ。なので力のない僕がいきなり下界に降りても何も出来ないだろう。前世で出来なかった旅行とかもしたいしね。
母様は少しの間考えた後に僕の右手首を優しく掴み手の平を上に向けさせる。
「前世のガスバーナーの様な火をイメージしてごらんなさい」
「えっ、それだけですか?魔力を練るとか、身体の中を流すイメージとかは?」
「必要ないわよ?全てはイメージで出来るわよ。やってごらんなさい」
半信半疑のまま理科の実験の時に使ったガスバーナーをイメージしてみる。ガスだけで火がつくと赤い炎で酸素を混ぜていくと青い炎…
すると手の平からイメージした大きさの炎らしいものが立ち上がる。多分成功?でも…
「母様、イメージと違い炎が白いのですが…」
「それはそうよ。神の炎はあらゆるものを浄化し燃やし尽くす炎だもの、普通よ?」
うへぇー、僕の予想を軽く超えてきた。
紅茶を一口飲んで潤した後に母様が続ける。
「リトちゃんは全ての属性使えるわよ?全てにおいてイメージだけで事足りるわね。ただ単に使った事がなかっただけね。ちなみに神界には魔法神や武神、商業神とか色々いるけど皆んな能力に違いなはないのよ。ただ何となく魔法が好きだから魔法神、ちょっと剣が好きだから武神やってる感じなのよ」
そうなの!これも想像とはかなり違う。って事は誰に習っても一緒って事なのか?
「正確には習う必要がないって事よ?リトちゃんも剣を握って動けば武神や剣神と同じ強さよ。理解できたかしら?ちなみに鑑定のスキルとか欲しいと思ったでしょ?」
後々に欲しいと思ってた事バレてました。だってね薬草採取スタートで鑑定使って簡単に集めてくる駆け出し冒険者!あるよね?
「リトちゃんは誰に問いかけてるのかしら?ともかく鑑定も異空間魔法のスキルとかも必要ないわよ。全て備えてるもの。リトちゃんは私アウリーゼの神の子。その眼は必然と神眼になるわけよ」
はい、チート以上のチート標準装備でした。そうなるとですね…剣や魔法の修行に明け暮れて時間を潰す予定がなくなったわけで…
「母様暇です、いや暇すぎます…」
「そうねー神界に来て6歳とは言え、前世も含めると30歳超えてるものね。まぁ神からすれば赤子も同じ歳だけども…」
何やらブツブツと考え事をしてるらしい。
僕もちょっと一息。紅茶に手を伸ばそとしたが届かない。お腹の辺りを母親にガッチリホールドされているからだ。
スッとエミリーがティーカップを持ち上げる。
「リト様どうぞ」
あらやだ優しい、さっき仕返ししてやろうと思ったけど免じてあげよかな?
「何故口の前?自分で飲めるよ?」
「ささっぐっーとお飲みください。それとも口移しの方が宜しかったですか?」
コイツやっぱり駄メイドだな、そう来るのなら仕返ししてやろう。
「じゃあ口移しでお願い」
必殺の上目遣いからの首傾げ。
「よろしいので!このエミリー、リト様の初唇を…ぐへへへっ」
選択を間違ったかもしれない…カタカタと震えながらティーカップを持ち上げ一口、口に含み僕を見つめて…
「アババババッ!」
突然雷に撃たれて口から紅茶を吹き出すエミリー
汚ねーってか何事?
「エミリー?私のリトちゃんに何をしようとしたのかしら?」
考え事から戻ってきた母様がエミリーに問いかける。
「アウリーゼ様…リト様に紅茶を飲ませようとしまして…」
煤だらけになりながら答えるエミリー
「口移しは必要ないわよね?もう一度神罰いる?」
あ、さっきの神罰なのね。
「いえ、必要ありません。リト様紅茶のお代わりです」
あっという間に煤だらけから復活したエミリーが紅茶を手渡してくれる。最初からそうしてればいいのに。ふむ神罰かいい事聞いた。今度行き過ぎな行動してきたら使ってみよう。使えるよね?
「このエミリー今不吉な予感がしましたが?リト様?」
「ううん、何でもないよ?」
紅茶を飲み一息ついたタイミングで母様が話しかける。
「懐かしいわねー。クリスマスにプレゼント交換した夜に寒さで震えてたのか初めてで震えてたのかしら?2人寄り添って名前呼びあって…」
ん?んん!?
「2人とも焦っちゃって、歯と歯がガチんとぶつか「ヤメロ!」って」
「その後2人笑っちゃってねぇーでも2回めは上手くできたのよね?」
だからヤメテ!思い出した恥ずかしい。
「見てたの?どこで!親に見られるのは恥ずかしい!」
「イベントが起きそうな気がして神界から覗いてたのよねぇ、顔を真っ赤にした莉斗ちゃんも可愛かったわ〜」
愛と豊穣の女神だからその手に反応するのか?
えっ!待って!という事は…
「初めての時も装着するタイミングが…「だからヤメテ!」オロオロしてて…ウフフ」
メンタルが…親に覗かれてたなんて…
「アウリーゼ様。ぜひその話詳しく!」
この駄メイドめ!えいっ!
「アババババッ!」
あっ!僕にも神罰使えたわ。
---------------------
更新マイペースですみません。
今回で下界に降り立つ予定でしたが伸びてしまいました。次回には必ず!行ける?行けるよね?
今後もよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます