おにぎり:ブルーライト

目を瞑って、光が見えたら目を開けなさい。

見えるまで、目を開けてはならない。

ここには、矛盾が含まれている。


なぜ目をつぶっているのに、光が「見える」のだろう?

いつから人は、目ではなく目ではないもので世界を見ようとするのだろう。

ほらここにも、「見る」があるよね。

では。何で見ているのだろう?それはこころ、というやつだろうか。

こころだなんて、目にも見えないのにどうやって見ろというのか。

でも、「ある」ということを知っている我々はそれを尊いものだとする。



でも、こころが見えるあいてむがあるんです。それが今から当社が説明する「おにぎりブルーライト」、いかがですか?あなたの目に良さそうでしょう?人の心も丸わかり!好きなあの子もこころがまるみえ!いかがです?


「おにぎりブルーライトなんて、ダサい名前だな」

「今までのピーナッツ信号機よりいいじゃないか、あれは画質が悪い」

「でも本当にこころが見えるなんてすごい」

「知ってるか?ひとむかしまえまで、ブルーライトは目に悪いとされていたんだ。おかしいよな。今では科学的に良いとされて、大勢の人がスマホをまじまじと見ているらしいぞ」

「目がよくなるんだってな、だからこころが見えるのか。しかしそこにおにぎりを付けたすとは。この会社はたいしたものだ」

「なあスマホを見てくれ。おにぎりの具材の人気ナンバーワンは、柿の種らしいぞ」

「俺は甘栗だ」

「よおし、ブルーライトで見てやろう。そうすればだれがどんな顔をしているのかわかるからな」

「なあ見えたか?俺はどんな顔をしている?」


5人の若者が、自分の顔も知らずにのうのうと話している。

こころとからだが、常に同一のものであると信じられた世界において。

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