スライムが強すぎる

@kekumie

スライムが強すぎる

俺がこの異世界に飛ばれてから、もう二十年年ほどが経った。

実際に輪廻転生というものはあるらしく、でも一つ、俺たちが思ってたのと二つ違ったところは一つは、人間は必ず人間に生まれ変わり、もう一つは、もう一回転生する世界は、元居た世界、地球とは限らないところだったよ。


交通事故によって死んだ俺は、何もないところに飛ばされ、神という者にあった。

曰く、俺がもといた世界のようなところは、数えきれないほどあり、そしてその中で

、俺と同じような人類が生まれているところも、また数えきれないほどあるらしい。


世界の中でも、もと居た世界より文明が発達してないところもあれば、発達しているところもある。そもそも、もと居た世界にはない物質がある世界もあるらしい。

そして、輪廻転生すれば、もと居た世界などの記憶がはなくされるらしい。

そんな説明を、姿も見えない神様から聞いた俺は、新たな世界の一歩を踏み出すことになった。


で、現在。俺は何のバグか分からないけど、前世の記憶が消されないまま飛ばされてきたらしい。

俺が転生してきた世界は、魔法が存在し、魔物という生物が存在し、剣と交じり合うファンタジーの世界だった。


魔王というものが居たり、勇者という者が居たりといろいろあって、元居た世界のゲームやラノベみたいな設定だと思っていたら、一つ違うところがあった。


それはスライムが強すぎるということだ。

下手したら魔王とかよりも強いかもしれないというぐらいで、それがうじゃうじゃ居るのだ。


別に一撃で街一つを破壊するようなそんな強さではなく、シンプルに死なないのだ。

どんなに燃やしても、剣で叩き斬っても痛がりもせず、人間にまとわりついてくる。


閉じ込めたら、あるはずのない隙間からにょっと出てくるのだ。

幸いなのは、スライムの寿命が平均十年というところだけだ。


そんな世界で俺は勇者と肩を並べるほどの実力をつけ、スライムの土地に踏み入っていた。

なんとも、魔王が支配していた領土の危険のない土地はほぼほぼ奪ったので、次はスライムの土地を狙っているらしい。

攻撃力はないから、危険はないだろうと判断らしい。


そんな世界で、俺二十歳はそんなスライムにどこかへ連れ去れていた。

十匹以上のスライムが俺の手足や胴体にまとわりつき、どこかへ運んでいく。

抵抗して暴れるが、まとわりつかれて力が入らなかった。


そして俺は何日、何十日も運ばれ続けた。

途中でリンゴのような木の実を食べさせられたり、筋肉を衰えさせないように足や腕を揉んでくれる。

謎に優しいところだ。


そして俺は、もう見飽きた紫色の空を眺めていたら、いきなりドサッと地面に落とされた。

そして手足にまとわりついていたスライムが離れていく。


俺は寝転がっていた態勢から、座り直す。

辺りを見回すとそこはいかつい城が建てられていた。

絵本などで見たことがある、魔王城だ。


そして周りには大量のスライムが居た。

大小違うスライムが、何万と居た。

集合体恐怖症殺しだ。


俺が辺りを見回した後、スライム数匹が俺の下に入り、俺を運んでいく。

それに合わせるように、スライムも進んで行く。

俺の周りを囲むようにしてスライムが移動しているので、逃げる気にはなれなかった。


一時間ほど、魔王城を進んで行っていた。

途中でかなり強いと言われている魔王城に居るであろう魔物の悲鳴が聞こえてきて、だんだん怖くなってきた。


そしてスライムが、俺の前の視界から居なくなると、目の前には大きな仁王立ちの魔王が居た。

黒の王冠を被り、八本の触手を生やし、周りには黒の瘴気を漂わせている。


これが本でしか見たことのない、リアルで初めて見た魔王の姿だった。

俺と勇者、それにかなりの実力者数人で挑んでも、勝てるかどうか微妙と言われてるやつだ。


俺は思わず、腰を抜かしそうになる。勝てるはずがない。死んでしまうと思う。

そう思った瞬間、周りに居たスライムが一斉に動き出した。


それに合わせるように魔王が雄たけびを上げ、スライムを待ち構える。

その戦いは圧倒的なものだった。

スライムがだ。


魔王が周りに纏っている瘴気を気にしないかのように近づいていく。

吸ったら死ぬと言われている瘴気だ。


魔王にまとわりつく。

大きな炎を魔王が周りに纏おうと、スライムは死なない。傷を作らない。

ダメージを受けない。


腕にまとわりついていたスライムの数はだんだん増えていき、それは周りにいたスライムと繋がっていく。

十分経つと、魔王は腕を挙げられなくなっていた。


残ったスライムが足にまとわりついたり、そして床や壁に根を張るように侵食していく。

魔王は、動けなくなっていた。


動けなくなった魔王に、とどめを刺すのもやっぱりスライムだった。


===


魔王を倒し終えたスライムは、俺を元居た場所まで送ってくれた。

俺は、驚きや恐怖交じりの顔を崩すことなく、ここまで来た。

ふらふらとした足取りで、街に帰ろうとした俺の足をスライムが、掴む。


後ろを見ると、今まで見た中で一番大きなスライムが俺に向けて文字が描かれた紙を見せつける。

【侵略するなら、容赦しない】

と、短く書かれていた。


俺は駆け足で街まで戻り、必死に体験した出来事と書かれた言葉を伝え、それは王にまで届いた。


十年に月日が経った。

スライムの身体の一部を纏ったまま、俺は見るのが二度目の場所に来ていた。いつか絶対に見ることになるであろう場所だ。

「いやぁ、間違えて記憶を消さずに飛ばしたのは申し訳ないな」

「別にそれで困ったことは無かったけどね」

「それに、死に方も可哀想だったね。忠告したのにね」

神様は平坦な口調で慰めの言葉をかけた。


俺は神様に一つ、お願いする。

「神様、次はなんか平和な生き物にできません?のんきに暮らしていける鳩みたいな感じで」

「それは無理なんだよな。ごめんね」

俺はそう言われ、その瞬間視界が光に包まれた。

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