第8話

前回のあらすじ


なんかぶつかったら相手が攻略対象者バカだった件。


ぶつかったのはもちろん俺だ。


「怪我はないですか?」

「大丈夫だ、問題ない(キメ顔)」


お尻を軽く叩く。


先ほどぶつかったインテリ系眼鏡ことアルバート。


女性のように長い緑色の髪に謎の光を発する眼鏡と個性ゴッタ乗せしたみたいなキャラだ。


実際に会ってみると確かにイケメンだったが


「バカなんだよなぁ」


奴の特徴は超のつくバカ。


テストでいっつも赤点取るわ、知能系に見えて敵陣に速攻で突っ込むような感情面な部分が大きかったりだとか


「悪い奴じゃ……ないんだけどな」


だがそれ以上の欠点があるとなんとも言えないな。


「どうしたんですか?」

「いや、さっきの奴イケメンだったなって」

「そうでしたか?」

「顔ちゃんと見てなかったのか?」

「いえそういうわけでは……ただ……」

「ただ?」


リエルは少し言い辛そうに


「あまり……好みじゃないかなぁ……って感じです」

「そ、そうか」


結構バッサリいくな。


いや、ゲームの選択肢的に見れば彼女がこういった女性であることもわかるな。


酷い時なんか


『好きです!!』

『生理的に無理です!!』


の二択は流石に笑った。


俺は躊躇わず下を選び、バッドエンドになった。


「じゃあどういったタイプが好きなんだ?」

「……どうしてそんなことを?」

「え?だって(誰を攻略するか)気になるだろ?」

「そ、そうなんですね」


リエルは深呼吸し


「や、優しい人が好きかもです」


わぁ、素敵ぃ


「ってなるかいな!!」

「えぇ!!」


なんだその夢見る少女見たいな答えは!!


お前は夢の国出身なのか?


「いや、ゲームのキャラならある意味正解か」


急に俺がキレたと思えば冷静になったので、リエルもどう反応すればいいのか困っている。


「いや、悪い。ただもう少し具体的なことを聞きたくてな」

「そうなんですね。ですが……私、あまりそういうのは疎くて」

「うーん。まぁ気が向いたらいつでも相談してくれ。俺達はもう友達なんだからな」


ザ・王子様スタイルの笑顔を見せる俺。


「フフ、似合いませんよ」


失礼だなぁ。


「でも、そうですね。私達はもう友達ですね」


嬉しそうだからいっか。


◇◆◇◆


「話しかけ辛そうだな」

「そうですね」


リエルと貴族とのゴタゴタを聞いたのか、気になるが話しかけるべきか迷っている連中ばかりである。


その中に一人


「やぁ初めまして。僕の名前はエギルというんだ」


クルクルとターンを舞うように現れる男。


そう、この男こそ


「是非、友達になってくれないかな?」


親友役として、長い間プレイヤーがお世話になるキャラクター、エギルだ。


「お友達ですか?」

「ああその通りさ。君のような目麗しい女性とは友人になれとパパも言っていたからね」

「そ、そうなんですか」


古風な貴族のようなフワフワヘアーと、キザったい台詞が特徴のキャラだ。


「私もお友達が増えるのは嬉しいです」

「僕達の出会いに乾杯」


エギルはそう言ってどこからともなくワイングラスを取り出し、リエルに渡した。


「面白いだろ。これでこいつ平民なんだぜ」

「てっきり貴族の方かと」

「君、少し彼女に馴れ馴れしいんじゃないか?」


ここで俺にヘイトが向けられる。


「俺も彼女の友人だ。なら俺達も仲良くしないか?」

「シャラップ。少し黙れ」


なんで同じこと2回言ったんだろ。


「僕は君が嫌いなんだ。だからゴメンだね」


そう言ってエギルはもう一度リエルに向き合って


「あまりこう言うことは言いたくないが、人付き合いは選んびたまえよ、マイフレンド」


そう言って去っていった。


あいつは全然違うクラスなので帰ったのだろう。


「なんだか凄い人でしたね」

「そうだな」


本当に面白い男だ。


そして予鈴が鳴る。


先生のご登場というわけだ。


「リエルって得意な教科とかある?」

「ダメですよエルさん。もうすぐ先生が来ますよ?」

「大丈夫大丈夫。あいつならどうせあと五分は来ないから」


不思議そうにしているリエルと雑談し、それから10分程して


「ふわぁあああああああああ」


大きな欠伸と共に、教室に入ってくるむさ男。


「悪ぃ、遅れた」


心のこもってない挨拶をした男は教卓の前に立ち


「えぇようこそ学園に。お前達の教師を務めることになったバランだ。よろしく〜」


2秒で自己紹介を終えた。


「あの、どうして遅れて来たんですか?」


クラスメイトの一人が質問する。


「おお。実はこれには深ーい事情があってだな。えっと〜、襲い掛かる睡魔に抵抗したが、残念ながら倒されてしまった結果だな」


つまりうたた寝してただけという。


そんな教師として有るまじき発言に、教室がざわつく。


「落ち着けお前ら。余裕のない奴はモテねぇぞ。俺みたいにな」


そう言ってバランは黒板と思わしきものに何か描き始める。


「いきなりで悪いが、早速授業だ。先生に彼女いるのかーとか、先生の年収いくらだーとかは休み時間にでも聞きに来い。気分が乗れば答えてやる」


そう言って何かの図を書き終えるバラン。


「知っての通り、この学園の目的は多岐に渡るが、一番の要素はこれだ」


そこに描かれていたのは


「ダンジョン」

「ダンジョンには数多くの宝が存在する。それを持ち帰れば、時代が何世紀分も進んだと言うことが今まで何度か存在したわけだ」


この世界ではダンジョンという存在が見事に生活の一部に食い込まれているわけだ。


例えばだが


『お前ら将来決まった?』

『家継ぐ』

『俺は素直に公務員』

『ダンジョン挑むかなぁ』

『みんなちゃんと決まってんだな』


となるくらいには最早当たり前、むしろ褒められることだ。


それだけの価値があそこにはあり、その最奥に存在する宝が


「今授業受けてんだろうなぁ」


なんとも言えない気持ちだ。


「そんなわけで、今日は魔法について話していこうと思う」


ここで魔法の授業に入る。


「魔法は俺らの中にあるソウルっていうなんかよく分からんものを引っ張って使う」


なんか怖いな。


魔法を使い続けたら魂削れるとかある?


「ソウルは使えばどんどん疲れていくが、まぁ寝れば回復する」


言ってしまえば気力が魔法の元とかなのかな?


「だからダンジョン攻略では魔法はいざという時に使うわけだ。逆に温存し過ぎてると普通に死ぬから気をつけろよ」


この世界では死があってもおかしくない出来事の一つだ。


実際に死にかけた俺は言うのだから間違いないだろう。


「まぁダラダラと話したが、つまり何が言いたいかというと」


バランは低い声で


「覚えなきゃ死ぬぞ」


こうして初日のいきなりの授業が始まった。


◇◆◇◆


「最初は不真面目な方と思いましたが、授業は分かりやすかったですね」

「そうだな」


授業を終えた俺とリエルは先程の様子を振り返っていた。


「これから魔法が使えるようになると考えると楽しみですね」

「リエルならきっと上手い使いこなせられるよ」


てか使いこなせてもらわないと世界滅びるんだけどね。


「ですが私は昔から多方面で得意と呼べるものがなく、人一倍努力してなんとかといった感じでして」

「ならもしかしたら魔法の才能があるかもだろ?それに」


俺は某アニメを思い出す。


「努力出来るってのもまた、一種の才能じゃねーかな?」

「才能……ですか……」

「おうよ。俺なんて世界が滅びるって理由と、鬼教師がついてやっと勉強出来たくらいなんだからな」


俺の言葉にリエルはキョトンとした顔をし


「何言ってるんですかもう。私が騙されやすいからって馬鹿にしてるんですね」


少し怒りながらも、どこか楽しそうにするリエル。


俺は嘘なんて一言も言ってないんだが、まあ


「きっと、全部上手くいくよ」

「そうですね。何だかエルさんと一緒だとそんな気がしてきます」


微笑み合う俺とリエル。


どんどん親友値が上昇しているのを肌で感じる。


このまま是非とも何の苦労もなく進んで行って欲しいものだな。


と、平和な時間を過ごす矢先に


「な、なんだ!!」

「何かが壊れた音みたいですね」


巨大な音が鳴り響く。


場所は俺らのいる場所とは別の棟。


そう、そこは所謂上級組のいる場所。


「こ、こんなイベントあったか?」

「私、行ってきます」

「え!!ちょ!!」


リエルは走り出す。


「あーもう!!」


その後ろをついて行くように俺も教室を後にする。


弟妹達と遊び結構体力には自信のある俺だが、リエルはそれ以上に速く中々追いつけない。


「ゼェハァゼェハァ」


全力ダッシュしたため、息もキレキレで目の前がチカチカし出す。


それでも無我夢中に進んでいると


「キャッ!!」

「わ、悪い」


リエルの背中にぶつかる。


「す、すみません。ビックリしただけです」

「ハァ、それで、何で急に止まったんだ?」


てかこの子息一つ切れてないな。


「何だか私よりもエルさんの方が解決出来そうでして」

「どゆこと?」


目の前には人混みが出来ている。


野次馬精神のない俺にとっては中がどうなってるか気にならないが


「悪いリエル。俺の見間違いかもしれないが」


隙間から見える光景に嫌な予感が走る。


「あれってもしかして俺の従者?」

「もしかしなくてもメフィーさんですね」


そこには貴族らしき男を壁にめり込ませたメフィーの姿があった。


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