第7話
「え、あの」
「シー」
少しカッコつけて片目を閉じながら静かにとポーズを取る。
「キッッッッッッッッッッッ」
「おいメフィー。主人に対しての言葉じゃないよなそれ」
「マスターの勘違いです。私は純粋にキモいと思っただけです」
「全然勘違いじゃねーよ!!ドンピシャじゃねーか!!」
おっと、またメフィーのボケにツッコんでしまった。
ほらリエルがポカンとした顔をしてる。
「凄い……綺麗……」
「あー、そっちね」
まるで見惚れるようにリエルはメフィーに釘付けになる。
「初めましてリエルさん。私の名前はメフィストフェレス。メフィーとお呼び下さい」
「あ、初めまして。私の名前はリエルです。愛称は……あ、お母さんからはよくリエと呼ばれています」
「では私もリエと呼ばせていただきますね」
「はい!!これからよろしくお願いします、メフィーさん」
……あれ?
「いい雰囲気だな」
「そだねー、まるで親友になりそうな勢いだねー」
おかしいぞ〜。
なんか俺が本来いるべきポジションに俺の従者を名乗る怪物が居座っていやがる。
「なんで親友なんて嘘ついたの?」
「本当かも知れないだろ?ウェンの知らないところで意気投合したとか」
「無くはないと思うけど」
ウェンは確信するように
「けど僕以上じゃないかなって」
「ヒュー、言うねぇ」
やっぱり親友はこいつしかいないなと思った。
「まぁ仲良くなる口実だよ。俺と彼女然り、お前と彼女もまたな」
「僕も?」
「そうだな」
ウェンは不思議そうな顔をするが、それ以上は聞いてこなかった。
それが俺とウェンの関係の一つだった。
「それにしてもメフィーさん、何だか僕の時より親切じゃない?」
「確かに」
言われてみれば
ウェンのことは毛嫌いしていたが、似たような系統のリエルには優しいな。
いやそれに関してはいいや。
仲良さげに話す二人を見る
「まぁ親友役は男の俺じゃなくてもいいか」
むしろ女性同士で相性がいいのかもしれない。
俺はメフィーのサポートに回るか。
「では金にものを言わせてメフィーさんを従わせているのがエルさんだと?」
「その通りです」
「違うから」
何を吹き込んでるんだこのバカ従者。
「お前マジで俺の変な噂を立てるのはやめろ」
「申し訳ありません。事実は物語よりも奇なりですね」
「それだと俺がもっとエグい奴みたいじゃないか」
「ふふ」
リエルが突然笑い出す。
「メフィーさんとクソゲスボンボン雑魚ウジ虫さんは仲がいいんですね」
「お前マジで何吹き込んだ!!」
「あ、冗談です。メフィーさんがこう言えばエルさんと仲良く出来ると聞いて」
「いや仲良くしたいのは俺も同じだけど、それは間違ってるからな」
「それだと何とお呼びすれば?」
「エルでいいよ普通に」
俺はウェンを呼ぶ。
「さっきも言ったがこいつはウェンだ」
「改めてだけどよろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
「絵になるなぁ」
爽やかイケメンと、可憐な美少女が微笑みあう光景はなんとも言えない気持ちにさせられた。
「お、おい何だよ急に」
メフィーが突然俺の背中を押す。
「実は隠していましたが、私は綺麗なものを穢したくなる癖がありまして」
「おい待て。それだと俺がまるで汚物みたいじゃないか」
「汚物に失礼では?」
「俺に失礼だよ!!」
こいつマジで俺のこと嫌いすぎん!?
そんなんでクールキャラを貫けると思うなよ?
「あの、遅れてしまいましたが、この度は助けて頂きありがとうございます」
リエルは大きく頭を下げる。
「なーに、当然のことをしたまでさ」
「マスターは何もしてません」
「こういうのは空気が大事なんだよ」
「マスター自体が空気でしたけどね」
「エルの言う通りだ。貴族の行動は目に余るものだった。それに君は悪いことではなく褒められる行為をしたんだ。誇っていいよ」
「……あ、ありがとうございます」
照れ照れと顔を赤くするリエル。
「本物やべぇ」
「驚愕しました。あのような言葉を素で吐き出すなど人間ではありませんね」
やっぱウェンも乙女ゲー出身なんだな。
「それにしてもさっきまでいたギャラリーはどこ行ったんだ?」
「クラス分けでは」
「あ」
忘れてた。
「おーい二人とも、クラス見に行こうぜ」
「ああ」
「そうですね」
こうして俺、メフィー、ウェン、リエルの四人は一緒に歩き出す。
とりあえず第一関門突破かな。
◇◆◇◆
「同じクラスですね」
長い廊下をリエルと共に歩く。
「嬉しい誤算だな」
学園はかなりの生徒を抱えており、かなりのクラスが存在している。
そんな中でリエルと同じクラスになれたのは運がかなりいい方だろう。
「それじゃあウェンさんとエルさんは孤児院出身なんです?」
「ああ。けどシスターがやりくり上手でな。貧相な生活はしてなかったと思う」
そんな感じで軽い雑談を交えながら歩く。
リエルから聞く情報は、どれもこれもが俺の知っている内容であったが
「その時のパンが凄く美味しくてですね!!」
「そりゃよかったな」
「あ、すみません、大きな声を出して」
恥ずかしそうに下を向くリエル。
「そっか〜」
いや可愛すぎる!!
なんだこの生物終わってんのか(失礼)!!
そりゃバカ共も寒い台詞で口説くだろうな。
ゲームで何回も聞く
『可愛いな』
俺目線で見ればサブイボものだったが、あいつらの気持ちをやっと理解した。
「クソ!!魔王がいなければ俺が狙ってたのに!!」
「何か言いましたか?」
「あー、クラスメイトと仲良くなれるかなぁって」
「そうですね。やはり最初は一発ギャグでしょうか。それとも無難に自己紹介から」
「大丈夫だって。自然体のリエルが一番可愛いんだから」
「え、あ、そ、そうですか」
「そうそーーん!?」
え
俺今自然と何言っちゃってんの!?
自分でも驚くほどに自然と口説き文句が出てきた。
こっわ
もしやこれが主人公パワーなのか?
「お、遅れてるし急ぐか!!」
「そうですね!!」
俺もリエルも顔を真っ赤にしながら走り出した。
そしてまるで吸い込まれるように
「きゃ!!」
ぶつかる
「おっと、すまない」
曲がり角で衝突する二人。
「怪我はないか?」
「は、はい」
差し出された手を掴む。
「廊下は走るなよ」
「すみませんでした」
長い髪を揺らし、去っていく男性。
「優しい方でしたね」
「そうだな」
こうして俺は見事に出会いイベントをぶっ壊したのであった。
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