聖獣になった破滅済みの悪役令嬢は、冷血王子に溶けるほど溺愛されていると気づかない ~美人王子と男装麗人に愛され両手に花ですが、知識チートで乙女ゲームの世界を脱出させていただきます!~
第4話 公式イベントが始まった!+(0゚・∀・) + ワクテカ +
第4話 公式イベントが始まった!+(0゚・∀・) + ワクテカ +
――まさかイベントにまで参加する事になろうとは……オタクな性分は変えられなかったようね。
イベントが始まるのを待つ
そんな時だ。
「本当に無理です! 勘弁してください!」
物思いに耽る凛の耳に、切羽詰まった男の声が飛び込んできて、彼女は思わず声のした方へ注目した。
声の主は、会場の隅に居た。それは、眼鏡の気弱そうな男で、数人の男性に取り囲まれている。
凛は一瞬、不穏さを感じた。だが、よく見ると、眼鏡の男を取り囲んでいる男性たちは、頭を下げたり、手を合わせて拝むようなジェスチャーをしている。それに、眼鏡の男も含めて全員、カジュアルだがビジネス仕様な装いをしていて、喧嘩ではなく仕事関係のトラブルのようだと想像がついた。
この事には、凛と一緒にイベントが始まるのを待っていた何人かの客も、気づいたようだ。だが、凛と同様に事件性が無いと判断したのだろう。ほとんどの人間が、視線をステージに戻した。
それでも少しだけ気になって、凛は男たちの押し問答を見守る。だが、ワッという歓声が上がり、流石に彼女も舞台に視線を戻した。
すると丁度、乙女ゲームで一番の人気を誇る攻略キャラ『シウン』の声を演じた男性声優が、登壇するところだった。
登壇した男性声優は、観客たちに来場の謝辞を、にこやかに述べる。
因みにだが、その人物は、凛の推しキャラの声優では無い。
そもそも、凛の最推しキャラはこの乙女ゲームでは人気の高いキャラではなかったため、もともと『推しキャラの声優に会えるかも?』などという淡い期待を、彼女は抱いてはいなかった。
だが、そうは言っても何度もプレーした乙女ゲームで幾度となく聞いた声の主が、目の前に居ると思うと、彼女のテンションは自然と高くなる。
そんな中。
今まで笑顔を振りまいていた男性声優が、少々眉尻を下げ「ここで一つ、残念なお知らせがあります」と言い、トーンを変えて話し出す。
「本日登壇予定だったカエン役の声優、
そう言い終えると、男性声優は「楽しみにして下さっていた方々には、本当に申し訳ありません」と、頭を下げた。
会場の其処此処から落胆のため息が聞こえる。
凛も少し落胆した。だが、それはもちろんカエン推しの観客ほどのダメージではなかった。
少し盛り下がってしまった場の空気を盛り上げ直すためだろう。男性声優は一段声を高くすると「ですが、ご安心ください! 素敵なゲストを急遽お呼びしています!」と言って、話を進める。
「このゲームの原案を作られた、シナリオライターの
――マジかッ!
周りがざわつく。盛り下がった場の空気が、完全ではないが緩和された。
そのような雰囲気の中。シナリオライターの登壇を聞いた凛は、カエン役の声優がゲストと知った時以上に喜んだ。
先ほども言った通り、凛の最推しキャラは、この乙女ゲーであまり人気が高くない。そのため、最推しキャラの話を聞く機会は、必然的に少なくなりがちだった。
――もしかしたら、ハクウンについてのレアな話をしてくれるかも?
シナリオライターへのそんな期待が、凛の中で高まる。そして、もともと楽しみではあったこのイベントに、俄然興味が湧いてきた。
「赤月さん。どうぞ舞台へ!」
男性声優が舞台袖に目を向け、声をかける。
すると、恐る恐るといった様子で一人の男性が舞台に上がって来た。
――この人、さっきの……
シナリオライターとして登壇した男性を見た凜は驚く。何故なら、彼は既知の人物だったのだ。
シナリオライターの男性。それは、先ほど会場の隅で押し問答をしていた眼鏡の男だった。使い古された大学ノートを抱きしめるように持った彼は、真っ青な顔をしていて、なんとも頼りない。
多少盛り上がりを取り戻しつつあった場の空気が、また少し沈む。
――なるほど。きっと急にゲストを頼まれたのね。嫌がってた理由にも納得だわ。めちゃくちゃビビってるじゃん……
シナリオライターのおどおどした様子は、他人事ながら凛をハラハラさせた。
「アナタが持ち込まれたシナリオが『シンシア ~ガランデッサの聖女騎士~』の原案なんですよね?」
シナリオライターが極度の緊張状態にいることに、男性声優も気づいているはずだ。だが、彼は満面の笑みを絶やさず、シナリオライターに話を振る。
話を振られたシナリオライターは、ビクリと身を強張らせた。そして、縮こまるように背を丸めると、おずおずと話し出した。
「原案が……というだけです。諸先輩方にアドバイス頂いて、大部分に修正が入りました。だから、僕の原案がそのまま使われている攻略ルートは、ひとつだけなんです」
シナリオライターは、自信なさ気にそう答える。
――謙遜し過ぎ! そこまで
シナリオライターの受け答えに、凜は思わず心の中でツッコミを入れた。そして、周りの様子を伺う。気のせいかもしれないが、凜の近くにいる観覧客の表情も冴えない。
だが、そんな会場の雰囲気を物ともせず、男性声優が「だとしても、アイデアが採用されてゲームになるなんて、すごい事ですよ!」と、シナリオライターのネガティブな発言をカバーし、場を明るい方向へ盛り上げてくれた。
――すごいのはアナタだよッ! こんな、ずたぼろトークのフォローまで出来ちゃうの? 最近の声優さんって何でも出来て、ヤバいな……
男性声優の機転に、凜は心の底から感嘆する。
そして、男性声優のナイスアシストは、その後も更に続いた。
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