聖獣になった破滅済みの悪役令嬢は、冷血王子に溶けるほど溺愛されていると気づかない ~美人王子と男装麗人に愛され両手に花ですが、知識チートで乙女ゲームの世界を脱出させていただきます!~
第3話 乙女ゲーのストーリーを忘れちゃった? じゃあ、ココを参照ください。
第3話 乙女ゲーのストーリーを忘れちゃった? じゃあ、ココを参照ください。
さて、イベントが始まるには、まだ時間があるようだ。
良い機会なので、ここで
この乙女ゲームのヒロインは、シンシアという名の中流貴族の令嬢だ。彼女は、騎士になるため剣術を学ぶ兄と一緒に、自分も剣の稽古をするような男勝りな少女だった。
そんなシンシアは女学校に通い始めるのだが、そこは国中の人が知るある特徴を持った学校だった。
その特徴とは『毎年、その年度の卒業生の中から聖女を一人輩出する』というもの。
この聖女は、この国の女性が就ける最上位の生業だ。そのため、国中の少女が一度は聖女に憧れる。
さて、そんな少女たちが憧れる『聖女』は、国にとって大変重要な仕事だ。
その仕事とは、ガランデッサ王国の国宝である『叡智の手鏡』という魔法具に『アウラ』と呼ばれる力を捧げることだ。
叡智の手鏡とは、物質であれ、知識であれ、この世界に存在するものであれば、どんなものでもその存在をほのめかすことが出来る魔法具だ。そのため悪魔の襲撃に悩まされ続けているガランデッサ王国は、この叡智の手鏡に『悪魔が出現した場所を随時示せ』という指令を出し続けており、いち早く悪魔の出現を察知出来る体制を構築している。
よって、年がら年中、常に稼働している状態の叡智の手鏡は、その能力の源となるアウラ、もっと厳密に言えば『白のアウラ』を定期的に供給される必要があるのだ。
ちなみにだが、アウラ自体はなんら特別なものではない。
この世界はアウラと呼ばれるエネルギーに満ちていて、アウラには数えきれないほどの種類があり、白のアウラはその中の一つと言うだけだ。
だが、白のアウラを多く持つ者となると、ある程度限られてくる。大抵の場合、それは魔法を扱える十代の少女だ。
白のアウラを持つ持たないにかかわらず、魔法を扱える者は限られた存在だ。そのため、この国の王侯貴族は、こぞって魔法の才能のある者との婚姻を繰り返した。そのような経緯があり、今日では魔法の使えない貴族を探す方が難しい状況になっている。
よって、多くの貴族令嬢が通う女学校は、多量の白のアウラを持っている人間が集まりやすい環境と言えた。このような理由から聖女は、その女学校から選出されるのが、通例となっていた。
ところで、聖女になれる学生は『最終学年で学年主席になった者』とされている。
そしてシンシアは、今まさにその運命の最終学年。しかも、前の学年では学年主席だった。そのため本人も含め、多くの人々は『シンシアが聖女に選ばれるのは、確実だ』と考えていた。
だが、そんな多くの人の予想は外れる事になる。
最終学年の最初の実力考査で、シンシアは主席の座を奪われてしまったのだ。
主席の座を奪ったのは、この乙女ゲームの悪役令嬢であるイレーネ。前学年で次席だった彼女は、シンシアをライバル視していて、いつも目の敵にしていた。
ちなみに、この悪役令嬢イレーネが良い成績を取れた件には、裏があった。
イレーネは彼女の手下に命じ、ある場所からアウラを水増し出来る魔法具を盗ませた。そして、白のアウラの保持量を量る試験で、自分の白のアウラ量を不正に盛り、シンシアよりも良い成績を修める事に成功したのだ。
多量の白のアウラをその身に宿すことは、この女学校では何よりも優先される。そのため、イレーネに主席の座を明け渡すことになり、シンシアはショックを受ける。
だが、悪いことと言うのは続くもので、とある事件が傷心のシンシアに追い打ちをかけた。
なんと、シンシアの父が事業に失敗し、破産したのだ。
しかも、シンシアには兄がいるのだが、彼は家を盛り立て直すという責任に耐え切れず、行方をくらませてしまった。このようにして、シンシアだけでなく、彼女の一族も窮地に陥ってしまう。
この状況を打開したいシンシアの父は「学費を払ってやることは出来ない。学校を辞め、金持ちの商人と結婚して欲しい」とシンシアに頼む。父の願いを受け入れるのは、聖女への道を完全に断たれるのと同義だ。
聖女として活躍し、自立した女性として順風満帆な人生を送ることを夢見ていたシンシアは、失意に沈む。
だがシンシアは、物語の主人公らしい向上心の持ち主だった。
そのため「こんなことで落ち込んではいられない!」と気を取り直し、聖女とはいかないまでも結婚以外の道を模索する。そして、一つの道を見い出した。
その道とは、性別を偽って王立騎士団に入隊することだった。
もともと王立騎士団にはシンシアの兄が入隊し、功績を上げることで、家を盛り立て直すはずだった。その役目を『結婚をしない代わりに自分が担う』と、シンシアは言い出したのだ。
シンシアの父親は最初こそ渋った。
だが、兄と共に剣の稽古をし、聖女候補になれるほどの魔法力に恵まれているシンシアは、女であるということ以外は騎士になる資格を十分有している。しかも、資金繰りのためとはいえ、愛娘を商人に嫁がせるのは、シンシアの父にとっても苦渋の選択だった。よって最終的に、シンシアの父は、彼女の願いを聞き入れる。
だが、女だとバレたり、一年経っても大した実績が上げられないようなら、すぐにでも嫁に出すと釘も刺された。
そのためシンシアは、早々に功績を上げ、騎士として名を成さなければならない。
兄の入隊枠を使い、性別を偽って騎士になったシンシアは、一人前の騎士として認められたい一心で職務に励むことになる。
その騎士団での仕事をする中で、シンシアは乙女ゲームの攻略対象である五人の男性と交流を深める。
シンシアは、攻略対象である五人のうちの一人と深く関わり、悪役令嬢イレーネの妨害に遭いつつも、騎士の仕事に邁進する。
そして、叡智の手鏡に聖女が白のアウラを奉納する儀式の最中に発生した大事件を、運命の恋人と一緒に解決に導く。その際、汚い方法で聖女の座を奪った悪役令嬢イレーネも、彼女の手下を寝返らせることでギャフンと言わせ、シンシアは見事にハッピーエンドを迎える。
これが、乙女ゲーム『シンシア ~ガランデッサの聖女騎士~』の大まかなあらすじだ。
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