2022.8.23(tue)謎解きゲーム



菜都奈は暇を持て余して新しいゲームを探した。そこでヒットしたのが謎解きアプリゲーム。どうなんだろうと半信半疑ででインストールしたら、思いの外面白かった。


脱出ゲームのようなもので、箱を開けるとゲームクリア。箱には鍵がかかっていて、その鍵を手に入れるための問題を一つ一つ解いていく……といったゲームだ。

問題はパズルだったり謎々だったり、機転を効かせて解くものばかりだ。菜都奈は夢中になって三面ほどクリアしたが、四面で躓いてしまった。


「もしもし、尽?」

謎解きがやりたいと思っていたくせに、飽きっぽい菜都奈は早々に考えることを放棄。答えを求めて尽に電話をかけた。

『どうしたの?』

「今面白いゲームやってるんだけど、よかったら家来ない?」

『……うん…………あと五分くらい待って』

電話の向こうでガサガサと音がする。


「もしかして忙しかった? それなら……」

『大丈夫、洗濯物やってるだけだから』

尽はそれからきっかり五分でインターホンを鳴らした。

「ごめんね、急に呼び出して。解けない問題があってさ」

菜都奈は早速ゲームのあらましを説明する。尽は面白そうと言ってアプリをインストールすると、菜都奈が進んでいる画面まですぐに追いついた。


「謎々だね。『猿が罠を仕掛けた!』回答は数字三桁かぁ」

尽はきょとんとした顔で菜都奈を見る。

「答え、言っていい?」

「! 分かったの?」

「うん……簡単だよ。菜都奈も気づけばすぐだと思う。考えすぎてるんじゃない?」

「えーちょっと待って……なんか悔しい」

天井を仰いで「猿……猿……」と呟くが、菜都奈の思考力は夏休みにだらけきっている。


「無理……答え教えて」

「877だよ」

「あー、そういう……! うわ、簡単だ」

「あは、すごい悔しがってる」

877は読み方を変えればバナナだ。答えを知ってみれば、ものすごく単純な謎々だった。

菜都奈は巻き返すつもりでさらにのめり込む。尽も菜都奈の燃え上がる姿を見てへらへらと笑っている。


そこへ風輝が通りかかった。リビングで騒ぎすぎたかと顔を上げると、バナナの皮を剥いている。

「あー! バナナ!」

「……昼メシ足んなかったんだよ」

風輝は大口を開けて食べる。

「あと五分早く食べてくれればなな〜」

「あっははは! 何その語尾!」

菜都奈がふざけて言っのがツボに入ったのか、尽は床に転がって笑った。謎々を知らない風輝は眉間に皺を寄せて自室に戻っていく。


くふふふふ、と横になって笑い続ける尽を見ていたら、菜都奈まで笑いが込み上げてきて、二人でひとしきり笑った。

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