2022.8.21(sun)風輝と買い物
菜都奈はちらりと横目に
今日の風輝は常に菜都奈の視界の隅にいた。普段なら昼食を食べたらさっさと自室にこもる風輝が、いつまでもリビングにいるのは何か理由がある。
そういえば、昨日の夜テレビでホラー特番やってたっけ。
菜都奈はホラーが苦手なので部屋に退散して音楽を聴いていた。風輝は観ていたのだろう。
今更になって怖くなったか。
菜都奈は携帯に目を落としてSNSやアプリゲームをやっていたが、三十分もしないうちに視界の隅が気になって仕方がなくなった。
「風輝、出かけよっか」
「……どこに?」
中二の風輝は態度こそそっけないが、よく観察していると、幼い頃の可愛らしさを垣間見れる。
「駅前のショッピングモール」
菜都奈が立ち上がると風輝も立ち上がった。
菜都奈はショッピングモールに特に用事はなかったが、せっかく来たのだ。ひとまず本屋であらゆる新刊をチェックし、ガチャガチャコーナーで新作を漁った。その間も風輝は視界の隅にチラチラしていて可愛かった。
午後三時。
「何か一つ奢ったげる。欲しいものある?」
菜都奈が姉らしく尋ねると、風輝は少し悩んだ後に、
「……チョコクロ食べたい」
「いいね、私も食べよ」
せっかくなので両親の分も買う。菜都奈は帰り道はチョコクロを食べながら帰った。風輝は一分もかからず三口で食べ終えると、自分で回したガチャガチャのカプセルのセロハンテープを丁寧に剥がしながら歩いている。
何を回したのかと思い、菜都奈は風輝の手元を覗いた。食品サンプルらしきキーホルダーのようだが、いまいち何か分からない。
「それ、何の食べ物?」
「からあげ」
茶色い塊だ。けれどなぜか食欲をそそられる。
「今晩は唐揚げ食べたいなー」
菜都奈は空に向かって独り言を呟く。
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