第3話 暗闇で捕まえて

 エイトは立体地図で覚えた、追いかけっこ会場をイメージする。正面には背丈より低い壁。右側には砂利がある。左には草むらがある。また、どのエリアにも高低差がつけてある。エイトは追いかける役で、逃げる千枝田に触れることができれば、エイトの勝ちだ。

 「エイト君、お手柔らかにね。私は20秒以上同じ場所にいると警報音が鳴るようになっているからね」千枝田はルールを説明し、イヤフォンをエイトに渡す。

 エイトはイヤフォンを付けながら、視力を失って初めて少し気持ちが前に向きになっていることに気がついた。

 イヤフォンをセットし、耳を澄ませる。周囲の音が立体化され、昨日覚えた3Dマップに繋がってくる。真っ暗闇に草むらや、砂利、高低差のある丘がイメージの中に立ち上がってくる。

 「じゃあ、開始ね。3分間で私に触れてみて」

 発声があったのは10時の方向。となると今、砂利のあたりにいるはずだ。砂利の地帯までは軽い上り坂だ。

 早歩き右の移動。草むらに入ったように思う。

 一か八か、ダッシュで向かってみよう。エイトは草むらに飛び込んでみたが・・いない。

 途端にイメージしていた風景に自信がなくなった。少し、早歩きであたりをさまよっていると時間切れ。

 「どお? 難しかったでしょ。でも、あなたは元体操選手。第六感が開いたら、イヤフォンと相まって、どこまでも遠くへ行けるはず」

 エイトは第六感ってなんだと思っていた。

 「できればね、イヤフォンを使って対人と戦ってほしいんだけどね。実はこれがこの施設の目的。音を拾って自由に動ける人を育成しているの。ダムが乗っ取られたニュース知ってるでしょう?」

 ニュースで聞いたことを思い出していた。

 「大陸の脅威はすぐそばまでやってきている。小規模な武力衝突はすでに起こっているのよ。諜報員なのだから知っているでしょ」

 目が見えないまま諜報員の仕事をするのか? それがメリットなのか?

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光、射す kowoegaku @kowoegaku

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