すると「ありがとうございます」と手で頭の後ろにあるお面を触りながらにっこりと笑って菘が言った。

 その菘の笑顔を見て、湊は顔を赤く染めた。

「これ、私の大好きなヒーローのお面なんです」菘は言う。

 湊は戦隊ものに疎かったので、それがどんなヒーローなのか変わらなかったけど、なんとなくそのお面は『鳥』をモチーフにしたヒーローのように思えた。

 その中の赤い(きっとリーダーだろう)ヒーローのお面を松野菘はその頭の後ろにつけていた。

 どこかでお祭りでもあったの? と質問しようとして湊はやめた。なぜなら、その質問をする前に菘がそっとベンチの上から立ち上がったからだった。

 湊も同じようにベンチから立ち上がった。

「そろそろ帰ります」と菘は言った。

「そうだね。もう遅い時間だからね」とにっこりと笑って湊は言った。

「柏葉先輩はこの白羽神社の由来を知っていますか?」その赤い鳥居までの帰り道の途中で菘が言った。「知らない」と湊は答える。すると菘はこの白羽神社の由来を湊に教えてくれた。

 白羽という名前の通り、この神社は白い鳥を祀ってある神社だということだった。その白い鳥は人を幸福な場所まで導いてくるという伝説のある神聖な鳥で(きっと白鳩だということだった)昔、この土地で大きな災いが起こったときにも、この周辺に住んでいた村々の人々を救ったのは、この白い鳥(あるいは、その姿を形取った目には見えない神様)だということだった。

「その由来から、白い羽のお守りが作られるようになったんですよ」と菘が言った。

「人と人を結ぶお守りとして?」

「はい。その通りです」

 にっこりと笑って菘は言う。

 湊はずっとこの白羽町に住んでいるけど、町の中心にある白羽神社にそんな由来があるなんて全然知らなかった。なぜ菘がそんなことを知っているのかと尋ねると「中学生のとき、夏休みの宿題で調べました」とにっこりと笑って菘は言った。

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