第2話 配属先

「ウメス装備一式?作れるぜ?」

「ウメスってもしかして雑魚?」

「いや、あんたが25頭も狩りゃ作れるようにもなるよ」

「狩すぎた」


流石に防具がないと死ぬと思うから作りたくなった十六夜月さんだよ。

ウメス一式かぁ、一式はモンハン原作だと地雷だがこの世界でも倒した証なら作って損はないだろう。


「スキルは体術とランナーがつくな、マイナススキルはないが拡張性はまだないぞ」

「ないよりマシ程度か、作って」

「依頼の金9割飛ぶがいいのか?明日の食う金すら怪しくなるぞ?」

「木の実でも食うさ」

「お前本当に木の実食うんだな、弾丸用の」

「ん?美味いぞ?あれ?」


実際十六夜月は油で素揚げしたジャイロナッツと呼ばれる弾薬にも使われている木の実を塩で味付けした物をポテトチップス感覚で食べていた。

味は予想通りポテトチップスの素揚げ感覚で美味しかった。


「体術って蹴りとかにボーナス入るのかしら?」

「さあ?今まで双剣で蹴飛ばすやつなんて居なかったからわからん」

「で、何日かかるの?」

「1週間」

「まぁ、普通はそうだよな」


そうこうして勉強して鍛錬してサイズ調整する事1週間……。

ついに!ウメス一式が完成したのだ!

見た目は和服みたいな感じで軽いのに防御力はかなりあり現地民なら下位防具ならまぁつなぎ程度なんだろうが十六夜月にとっては念願の防具だった。


「wow!軽いからか動きやすい!」

「よかったな!」

「防御力は?」

「下位ならギリいける程度」

「上位になったら作り直しか」


十六夜月は軽々とオーバーヘッドキックしたりぐるんぐるん大回転しても酔わないから喜んで動きまくった。


「お前普通ならつなぎ程度な防具なんにここまで喜ぶか?」

「いや、なんか、体動くの楽」

「お前一度体検査してもらえ、体内にある固有のスキル判別してこい」

「なにそれ」

「私から説明させて貰おう」

「花京院典明!」

「……誰だねそれは?」


そんな馬鹿な事をしてるとあの時のギルドナイトさんがやってきたのだった。

名前はまだ知らない。


「検査だ、君の固有のスキルと適正武器を判明させる」

「やだなあ」

「まぁ、やんなきゃいけないからやるか」

「ほら、馬車にのるぞ」

「馬なんてあったんすね」

「あるよ、では乗ろうか」


こうして馬車でガタゴト2日間、ついた所は大都会!


「人多いな!アイルー、金ないから土産買えんくてすまん」

「わあ……」

「アイルーの目が田舎から来て初めて見た都会状態や」

「さあ、検査に協力したら土産と食事は出してやろう。行くぞ」

「わぁい!」


ハンターズギルド検査室


「横になって下さいねー」

「何されるの!?怖いんだけど!?」

「魔力で検査しまーす」

「怖い!」


十六夜月は魔力で動く筒に入れられ紫の光が全身を包み込んだ!

そして5分後……。


「なんか魔力を吸い取られた気がする」

「そりゃそうですよ吸い取ってんですから」

「この人でなし!」


武器適性検査


「重くて大剣とかハンマーとか狩猟笛とかヘビィボウガンみたいな奴持てないんすが、なんならライトボウガンらしきものすら反動強いと持てないんすが」

「……次」

「トンファーだ」

龍滅棍りゅうめつこんな」

「Fooooooooo!too easy!」


十六夜月はまるで自分の手足の如く龍滅棍を使いこなしている!

一人だけやってるゲームがデビルメイクライの如くウメス一式と相まってスタイリッシュな動きだ!


「……適正は双剣と龍滅棍の2つと、なんて言ったんだ最後の方」

「気にしたら負けだよ」


メンタルテスト


「ハンターが倒れてますね」

「助けます」

「……」

「かわいい」

「……(可愛いのはわかるけど助けようね?)」

「先生、どうやって助けたらいいですか?女性に触れて運んで大丈夫?」

「変な所で律儀!!」


連携力テスト兼任最終ハンターテスト


「お前武器は?」

「トンファーか双剣」

「なら俺の壁になれ」

「我回避型やから無理ゾ」

「じゃあそこの女」

「確かに重装備だけど……」

「(今年もだめかしらね、これは)」

「今回の狩猟連携はドスポイゾナスだ、毒に注意せよ」

「……いきますか」

「お前がリーダーってか?笑わせるな民間人風情が」

「なら任せた」

「(これはダメかもしれないね……)」


そうして、狩猟場に着くと異様な空気になっていた。

なんだか言い表せないが嫌な感覚だった。


「支給品は2倍!俺が取る!」

「ちょっと!?」

「一番槍はいただきだ!」

「……あのバカ行きやがった、私は支給品はいらん。二人で使って」

「いいんですか?」

「どうせ食らったら一撃死だ、私の場合」

「ごめんなさいね、あんな害悪一人のために一番優遇しなきゃいけないあなたに負担をかけさせて……」


3人は一緒になって行動し始めた。

武器的には

十六夜月は龍滅棍

一人の女性は槍と盾

もう一人がライトボウガンだった。

火薬を使って木の実弾丸を放つのだからモンハンのと大差ないやろと十六夜月は思ってた。


10分も一人単独行動したバカを探すこと、バカはもう戦っていた。


「おせーよ!くっ、強いぞこいつ!?」

「さぁて、始めますか!」


十六夜月は精神を集中しはじめる。

体に燃えるものが湧き出る!


「let's go!Moon!」

「動きが変わりました!!」

「(甘く見ていたのは私みたいね……彼は本物だわ!)」


風のようにドスポイゾナスに近づく、そして早速サマーソルトキックをお見舞いしてそこからカポエイラのような回転キックを連発して繰り出した!


「お前!?手柄!」


男ハンターがすかさず大剣でダメージを与える。

効いてるみたいでドスポイゾナスは怒り始めた!


「気をつけて!」


そう言った途端にドスポイゾナスは毒ガスブレスを吐こうとした!

十六夜月は咄嗟に龍滅棍を地面に突き刺してキックをしながら高くジャンプして回避した!


「なんだよその動き!?」

「バカ!ブレス!」


一人のハンターは油断してる隙にドスポイゾナスは毒ガスブレスを吐き直撃をした!


「か……体が……ヴェェ!」

「ドスポイゾナスの毒は致死性が高いのよ!?早く解毒薬を飲みなさい!」

「クソッタレ……」

「ドスポイゾナスが光った!?」


ドスポイゾナスが光りはじめる!

光は瞬き15秒後、服を着た女性になった!


「龍人化……!?」

「お前ら、さっきはよくも痛い目に合わせてくれたな……ぶっ殺してやるよ!私の毒魔法でな!」

「おいおい、なんで人になったんだ?」

「原理は私たちにもわからないけど稀になるのよ!つまりこの個体は上位以上!私達の手に負える相手じゃないわ!リタイアよ!」

「あ?逃げれると思ってんのか?」

「……十六夜月、囮、なる」

「えっ!?」

「お前ら、バカつれて、援軍呼べ」

「……わかりました!BCまで戻れば!」

「さぁお嬢ちゃん、この転生者と相手してもらおうか!」

「私をお嬢ちゃん扱いだと……!ふざけやがってお前から殺してやんよ!」


3人が引き下がる。

十六夜月は龍滅棍を構えなおし、戦いに備えた。


「さぁて、第2ラウンドだ!」

「オラァ!」


龍人ドスポイゾナスの強烈なラリアット!

十六夜月は龍滅棍でガードして下段足払いをしてからスピナーを繰り出した!


「力は弱いが技術はあるだと…!?」

「さぁて、服脱ごうね」

「!?」


龍人ドスポイゾナスはこの時身も悶える恐怖を感じた。

自分は犯されるのではないかという本能的恐怖だった。


「お前本気で私を犯す気なのか!?」

「君次第、私かておかしとうない」

「うっ……」


ドスポイゾナスは悩んでいた。

このまま陵辱されるか、下位ハンターについていくという侮辱を味わうかで。

しかしハンター達の仲間が来たら間違いなく殺されるか奴隷になるか見世物小屋か闘技場のどれかだった。

そしてドスポイゾナスは決心した。


「お前についてくから犯すのだけはやめて欲しいし人権だけはくれ、この通りハンター支援するからよ……」

「よく言えました」


そう言ってマウントポジションの上からだが十六夜月は龍人ドスポイゾナスの頭を撫でた。

十六夜月自体無益な殺人に殺戮も陵辱もしたくはなかったのだ。


「ところで何で君日本語使えるので?」

「龍人は多言語対応だぜ?知らんのか?」

「はへー」


そして十六夜月は近くに木の実があったため、それを龍人ドスポイゾナスに見せつけこう聞いた。


「食う?」

「いや、食えないだろ」

「みんなそう言って食わないんだよな……うめぇんに」


十六夜月はガッカリしながら空の実を食べたのだった。

味はアーモンド味だった。


「……美味しそうに食うよな、お前」

「うまい!うまい!」


25分後

一人を除き全員が集まり結果発表が行なわれようとしていた。


「結果を発表する」

「はいさい」

「十六夜月、お前は特例的に上位ハンターになる試験を受けてもらう。武器だけは支給してやる。失敗しても下位スタートだから確定だ」

「(上位なら種族のプライドは守られる……)」

「残る二人は下位認定する!あの場でよく生きて帰れた」

「やったあ!」

「やっとなれたわ、夢に見たハンターに!」

「あと十六夜月、検査結果出たぞ」


それを聞いて十六夜月は結果を聞きたかったがハンターズギルドまで戻るまではダメとなった。


ハンターズギルド


「まず、先天的固有スキルですが……腹減りがついてます。しかし格闘王がついてるため格闘攻撃に補正が入ります。格闘系武装が得意なのはこれが原因ですね」

「(龍滅棍ならつかうから許すか)」

「それと、あなたの体は神宿しが可能となってるため通常よりかなり強力な鬼神化が可能です、民間人なのに戦えたのはそれが所以です」

「はぇー」

「後、あなたが説得した龍人ドスポイゾナスですが……下位なら没収ですよ?」

「は?」

「ルールですから」

「上がんなきゃいけないじゃん……」

「では上位ハンター試験です、雌火龍ヴォルガを狩猟もしくは捕獲、説得してください」

「絶対龍人なるやつやん」

「……なったら任せますよ」

「ご主人ボクも行くニャ」

「よーし、支給武器はなんだ?」

「それは現地で」


そうこうして、十六夜月はまたネコタクに乗るのだった。

今度はアイルーを連れて。


??? ベースキャンプ


「何だよここ森じゃねぇか」

「武器は双剣と龍滅棍合計10種類ある、ヴォルガには効かない属性もあるから……と、言っても分かるわけないか」

「あ!アルターテイル!」


紫色の双剣を見て十六夜月はそう叫んだ。

十六夜月の世界では龍属性を帯びた双剣であった。


「てかこれ全部もらえるんすよね、上位なったら」

「なれたらな」

「防具ウメス一式でいけるかしら?」

「まぁ、そこは、うん」

「こちとら情報すらわからんときた」

「試験だから教えられないし、頑張れ」

「気楽にやるさ、制限時間は?」

「発見3日以内・討伐3時間以内だな」

「きっつ……」


場所が不明でなおかつそんな絶望的不利な状態で仮に見つかったとしても3時間以内。

十六夜月以外でも普通の現地民でもきつすぎる内容だった。

仮に見つけたとしても3時間討伐、モンハン世界でいう30分針だった。時間制限は。


「今回は私ヴォルテが同時狩猟と試験官として同行する。指示を出してくれ」

「よし、支給品は……あるな?半分こで」

「分かった」


こうして支給品を受け取り二人と一匹は雌火龍ヴォルガを討伐しにいくのだった。


??? エリア5(半日経過)


「夜かぁ、って桜色?あれか?」

「!?あれは桜火龍!?」

「つまり凄腕と」

「あぁ、あれを倒しても構わんが……かなりきついぞ。凄腕だからな」

「いや待て、体が光ってる!」


ドスポイゾナスと同じように体が光、そして少女になったのだった。


「うぅ……おなかすいたよお……」

「うわぁ、飯やりたい」

「餌付けをしたら責任を取らなきゃいけないし、上位だと3匹までだぞ?」

「ドスポイゾナスで一人だから後二人か……」

「ボクもネコ族の同胞が欲しいから後1人ニャ」

「いいか十六夜月のモットーはな、困ってるやつは誰でも助けるって事だよ!人に悪さしてないなら!」

「(ハンターよりテイマー適正の方が高いな……)」


そうして、十六夜月は擬人化桜火龍に近づいた。


「あっ!ハンターさんだ!たたかわなきゃ……!」

「携帯食料やる」

「いいの……?」

「ええで」


こうして桜色のヴォルガがゆっくりちんまりと携帯食料を食べる。

十六夜月はその姿を見て癒されていたのだった。


「このハンターさん、わるいひとじゃない……おかあさんいないから、ついてく」

「幼体だったか」

「成功といえば成功だが、これで君の配属先が確定した」

「を?」

「ドルマルグ調査隊だ、君はハンターとしてではなくテイマーとして登録変更する」

「テイマーイズ何」

「ドラゴンテイマー、龍使いと呼ばれるハンター以上の権限があるハンターとの共存関係にある職業だな。」

「はぇー」

「龍を殺さず説得したりする事に長けた集まりと思えばいい」

「ニャ!」

「ニャニャー!」

「黒猫だ、お前もついでに来るか?」

「来るニャ、テイマーさんなら僕たちネコ族も安泰ニャ」


そうこうしてるうちに桜火龍は携帯食料を4つ食べ終えていた。


「おとうさん、おなかへったよ」

「木の実、食うか?」

「うぇぇ」

「好き嫌いはダメだし食べてみたらおいしいよ?」

「はーい……」


そう言って素揚げしたジャイロナッツをパリポリ桜火龍ヴォルガは食べ始めた。

食べてみたら不満顔は無くなり、病みつきになって食べていた。


「まぁ、君は上位通り越してテイマーの区分だ。防具だけは狩猟して作ってくれ」

「いきなりG級とかあるなら死ぬんすが」

「当たり前だろ、だから権限が高いんだ」


こうして、配属先も決まった所だったが……下手すればかなりブラックな所だったりするのだった。


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