第3話 肺炎
「ヒーフー、ヒーフー、ゴフッ、ゴフッ」
点滴を受け、呼吸器を着けてベッドに横たわっている彼は、肺炎の末期になっていた。
「御兄ちゃん、頑張って!」
隔離の為の透明なシートの向こうでは、家族が泣きながら見守っている。
抗生物質も投与されたが、炎症が著しく、あとは死を待つだけとなっていた。
近年に流行ったコノ伝染病は、昨今の危機管理を失った日本人の特性も相まって、都内でも毎日の様に数万人の新規感染者を出し、医療レベルの高い日本でも、毎日数十人の死者を出している。
この患者の肉体も高熱の為に衰弱し、意識も朦朧としている。
現代医療は、人間の生命力の手助けをする事しかできず、いくら手術や薬、点滴をしても、肉体の方にソレを活用する力が残っていなければ、かえって死を早める結果となる。
「残念ですが、これ以上は手の施しようがありません」
「先生、お願いです。息子を助けて下さい」
「そう、言われましても・・」
助からない患者に一時間の延命をしている間に、別の患者の病状が、また一人二人と手遅れになってしまう事を、この患者の家族は考えもしない。
それは人間が現実的合理的な存在ではなく、感情と欲望と利己的な存在だからだ。
相手には相手の都合がある。
怨むべき病魔にも、我々とは違う都合がある。
本当に怨むべきは、治せない医者か?病魔か?不摂生な患者か?早めに気が付いてやれなかった家族か?運命の女神か?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
宇宙移民V 用語集
―――――――――
宇宙/せかい:
生態系
集団/コロニー:
多細胞生物
宇宙移民/V:
ウイルスRNA
宇宙船:
ウイルスの外壁
警備:
細胞の免疫
ユニット:
多細胞生物の細胞個々
通行証/パス:
ウイルスのスパイクたんぱく質
ゲート:
細胞壁の受容体。細胞の内外の物質が出入りする場所
ジーン:
RNA
複製器:
リボソーム。mRNAから情報を得てタンパク質の合成などをする。
基本構造材:
微小管、中間径フィラメント。細胞の形を支え、内蔵する器官を固定する細胞骨格の主軸。
補強材:
アクチンフィラメント。細胞骨骼の末端的存在。
エネルギー転換システム:
ミトコンドリア。有機物からエネルギーを取り出しADPをATPに変換して細胞内に送り出す。
情報ライブラリー:
細胞核/DNA
物資加工輸送システム:
ゴルジ体
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宇宙移民V 二合 富由美(ふあい ふゆみ) @WhoYouMe
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