第2話 クローン

「おお、ようやく【複製器】が見えてきたか!」


 視界全体を覆うソレは、物こそ違えV達が生まれた物と大差なかった。

 ユニットの中心に近いココには、無数の複製器が集まっており、多くのジーンが作業をしている。


 基本的には、情報ライブラリーに蓄えられた情報をジーン達が複製器に持ち込み、それを元にユニットに必要な物質や資材を作り出していくが、これは使い方によっては、V達を含む【ジーン】をも複製する事ができる。


 この世界のジーン達は、いや、ユニットやコロニーさえも、ある意味で【クローン】なのだ。

 コロニー単位では多少のマイナーチェンジはあるものの、その全てが【ライブラリー】に記録された情報での『複製クローン』だ。


 コロニーは、別の巨大コロニーから排出された一個のユニットが、この様な複製を繰り返して、新たな一個の巨大コロニーに至る形で数を増やしていく。


 この【複製器】ではユニット内の物資同様に、Vの肉体に刻まれた【宇宙船】の設計図から、宇宙船をも建造する事が可能だ。


 単一の【V】が侵入する事により、一つのユニット内で数百のVと宇宙船を産み出す事ができる。

 そこまでの数に増えないと、広大な宇宙では全滅してしまうからだ。

 ただ、ソレ故にユニット自体を崩壊させてしまい、大量のVと宇宙船が警備の手に掛かる事も少なくはない。


「さて、空いている複製器は・・・有るな」


 Vは、偶然空いた複製器の一つに滑り込んだ。

 複製器では、内部の触手がVの体から情報を読み取り、彼を排出する。


「さて、もう一回!」


 彼が複製器を通る度に、新たな【V】と【宇宙船】が産み出され、そのVも複製器に潜り込む事で、その数は2の乗数的に増えていく。


1、2、4、8、16、32、64、128、256、512、1,024、2,048、4,096、・・・・・


 元のVが12回の複製器通過をすると、その数は四千倍に膨れ上がる。

 この様に複製器を独占し、ユニット内の物資を手当たり次第に消費しては、当然、ユニット内の維持に問題が生じ、多くの場合はユニットの崩壊と共に宇宙船はユニットの外へと飛び出す。

 たまたまユニットの外壁に到達した宇宙船が外へと飛び出す事も有るが、推進力を持たない宇宙船がユニットの外へと飛び出すには、あまり選択肢が無いのだ。


 ユニットの外へと飛び出した宇宙船は、隣接する他のユニットに潜り込んで、同じ様にクローンを作っていくので、総数は計り知れない。

 コロニー内の輸送システムに紛れ込むと、その増加速度と量は飛躍的に増大し、場合によっては、コロニーの外へも放出される事がある。




 こうして、コロニーから異物として排出されたV達は、再び新たなコロニーを求めて、虚空を旅するのだ。

 幾つかのユニットを破壊してしまったが、Vがソレを気にする事はない。


 彼等は、こうしないと生きていけないのだから。


 例え、その為にコロニー全体が崩壊する事があったとしても。

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