第7話モンスター大量発生
ゆっくりと慎重にそのダンジョンの中を進んで行く。
その中はとても薄暗く前が見えない。
「ナナミは相変わらず暗いところダメなんだ」
「仕方ないでしょ暗いところ怖いんだから!」
そう言いつつミユキの後ろに隠れるようにして怖さを紛らわすために服の裾を掴む。
〈暗いところを怖がってるナナミちゃんも可愛い〉
コメントを打ち込んでいる人たちに悪気はないんだろうけどやっぱり恥ずかしいな。
ミユキが何やら不敵な笑みを浮かべて私の顔を見てくる。
「何私に言いたいことでもあるの?」
私は若干鋭い目つきでそう尋ねる。
「いや何でもない」
そう言いつつもやはりミユキの表情は何か言いたげだ。
「…」
「ただナナミにも怖いものはやっぱりあるんだなぁと思って」
「それは私だって苦手なものとか怖いものとかはあるよ」
「でもそれって別に普通のことでしょ」
「それはそうなんだけどさ私以外に学校とかでさナナミのそういう部分を知ってる人っているのかなと思って」
そう言われて少し考えてしまう。
確かに学校でそういうこと話したこと今までなかったなぁ。
そういうこと話したことあるのって思い返してみるとミユキだけなような気がする。
〈ナナミちゃんとミユキちゃんって同じ学校だったの〉
「いや違う違う私たち学校行ったことないからもし学校行ったらどうなるかっていう妄想をしながら話してたの」
ミユキはそのコメントに対して急いでそう否定の言葉を口にする。
「そんな嘘ついて大丈夫なの?」
生配信を見ている人たちに気づかれないように気を付けながら耳元で小さくそう言った。
「大丈夫だよ私たちのことは多分バーチャルのキャラクターだと思ってるから そういう設定っていうことにしておけばきっと大丈夫」
「なるほど」
それなら辻褄は合うか。
それにしても迂闊に転生する前の話が出来ないなんて少し大変だな。
本当のバーチャルの配信者の人たちって日頃からこういう事に気をつけながら配信してるのかなぁ?
なんとなくそんなことを考えながらダンジョンの中を歩いていると何かがこっちに近づいてきているのが分かる。
一旦足を止めて様子を伺う。
すると何体かのモンスターがこっちに向かってくる。
そのモンスターの目が私たちを捕らえたと同時に私たちも武器を構える。
「ナナミ気をつけて!」
「うん、分かってる」
私は真剣な表情で言葉を返す。
だんだんと近づいてくるモンスターの姿がはっきりと見えてきた。
私は剣を構える。
私たちの前に姿を現したモンスターは人形のモンスターで睨みつけてきている。
モンスターがその鋭い目で私たちの姿を捉えた瞬間勢いよく声を上げて襲いかかってきた。
「うおおおーーー!!!」
一体のモンスターが私に叫び声を上げながら襲い掛かってくる。
するどい爪の攻撃をなんとかギリギリ避けてすかさず剣を横に振る。
すると狙い通りそのモンスターにダメージを与えることができたようで唸り声のようなものをあげる。
「うーん…」
よしこれなら一緒に戦えるミユキと一緒に戦える!
私は剣を構えなおし前に進みながら目の前にいるモンスターたちを的確に倒していく。
「うおおおーーー!!!」
モンスターは再び叫び声をあげて私に向かって攻撃をしようとしてくる。
今度はその攻撃をギリギリではなく冷静に余裕の表情で避けた。
「二度も同じ手は通用しないよ!」
そのモンスターに向かってすかさず剣を振り下ろし倒す。
「これでだいたい片付いたかな?」
そう言いながら少し奥の方で戦っていたミユキが戻ってくる。
「見渡す限り他のモンスターはいなさそうだけど?」
そうは言いつつも念のため辺りを見渡して確認する。
するとわずかながら嫌な声が聞こえた。
その声はだんだんと近づいてくる。
声が近づいてくると同時に僅かに考えていた可能性が確信に変わる。
その少し遠くから聞こえてくる声はさっきと同じモンスターの呻き声だった。
「なかなか私たちをこの先に通してくれるつもりはなさそうだね」
そう言いながら魔法の杖を構え直す。
私も手に持っている剣を構え直す。
周りにいるモンスターの数はさっきと同じ少ない数ではなく今度は大勢の数で私たちを囲んでいる。
思わずそのモンスターの数の多さを見て足が震えてしまう。
〈頑張れ!〉
〈頑張れナナミちゃん、ミユキ ちゃん〉
ふとミユキが手に持っているパソコンの画面を見てみるとそんな応援の言葉で溢れていた。
ていうかこんな時でさえそのパソコン花見離さず持ってるんだ。
「私たち2人でこの状況を突破するよ!」
「うん!」
私は強く頷いてそのモンスターとの距離を一気に詰め剣を振り下ろす。
ようやくモンスターとの戦いの感覚にも慣れてきた。
でもそもそものモンスターの数が多すぎる。
私が見渡しただけでも30体以上はいる。
それでも何とかして戦わないと!
そう自分に強く言い聞かせ素早くでも的確にモンスターを倒していく。
このモンスター数は多いけどそんなに強くはない。
背中を狙って攻撃してくるモンスターを避けながらモンスターを一体一体丁寧に倒しなんとか倒すことができた。
「はぁはぁ…今度こそこれで片付いたかな」
ミユキは激しく息切れをしながらそう言葉を口にする。
「はぁはぁ…うん…もう多分大丈夫だと…思うよ」
戦いで上がった息を整える。
私たちは再びダンジョンの中を進む。
「それにしてもさっきはびっくりしたよね倒しきったと思ったら奥からゾロゾロと仲間のモンスターが出てくるんだから」
ミユキは笑い話をするように笑顔で言う。
〈でも実際さっきの結構やばくなかった?〉
〈俺もそう思う映像が動いててよく確認できなかったけど少なくとも30体以上はいたと思う〉
「戦いに夢中になりすぎてて気づかなかったけどそんなにいたんだ」
本当に気づいていなかったという表情で言葉を返す。
「嘘でしょあんなにモンスターがいたのに気付かなかったなんて!」
その言葉に思わず驚いてしまう。
「あの時は戦いに集中してたしそんなこと考えてる暇なかったからね」
前からミユキが集中すると周りのことがよく見えなくなるって事は知ってたけどまさかここまでとは思わなかった。
「そういえば!」
私は思い出したような口調で言う。
「どうかしたのナナミ?」
「大したことじゃないんだけど私の全体的な力がなんとなく上がってるような気がするなと思って、特に筋トレしたわけでもないのに」
「この世界でパワーっていうのかレベルっていうのかわかんないけどそういうもののそもそものあげ方が私たちが前にいた世界とちょっと違うんじゃない」
「だとしたらどういう風にレベルが上がってるんだろう?」
「みんなの声援が力になるとかそんな感じかなる」
「そんなスポーツ漫画みたいなシステムなのこの世界!」
「私にもはっきりしたことはわかんないけどそういう可能性もあるんじゃない」
正直信じられないけどそもそものいる世界が違うから常識はずれなことも起こるのか?
そんな雑談をしながらダンジョンの中を進んで行く。
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