第6話 隠しダンジョン
「よかったね別に武器が手に入って」
「うんでも結局お金が足りなくて譲ってもらうような形になっちゃったけどね」
「でもまぁ譲ってもらえないよりは良かったんじゃない?」
「うんそうだね」
これでミユキと一緒に戦うことができる。
「でもこれでお金なくなっちゃったね」
でもまぁあのお金だけで他に何ができたかと言われたらきっと他に何も買えないし何もできることはなかっただろう。
「大丈夫だよモンスターの素材を売れば多少なりともお金を作れることがわかったからこれからはモンスターを倒してお金を集めていけばいいよ」
「でもどこに行けば効率よくお金を稼ぐことができるのかな?」
私は疑問がこもった言葉を口にする。
「そうだなぁ多分そこまで強いモンスターはまだ相手に出来ないだろうから最初は程よい強さのモンスターを相手にしながらお金を稼いでいこう」
「でも程よい強さのモンスターってどこら辺にいるんだろうね?」
「そうだ!」
思い出したような口調で言う。
「ちょっとどこ行くの?」
なぜかミユキがさっきまでいた森の方へと駆けていく。
私は走って追っかける。
「なんで…いきなり…走り出すの!」
走って呼吸を整えつつ言う。
「ここなら大丈夫そうかな」
そう言いながら辺りを見回しているようだった。
何か他の人に見られたくないものでもあるのだろうか?
私がそう不思議に思っていると、ミユキはなぜかさっきまで使っていたパソコンを再び立ち上げる。
しばらく待ってホーム画面が開くとさっきと同じように生配信の画面を開く。
生配信を始める。
「今日はもう何も配信するつもりはなかったんですけど急にちょっとやらなきゃいけないことがあって」
「皆さんはどこら辺だったらモンスターを倒して効率よくお金を稼げると思いますか?」
特に前置きもせずにミユキは単刀直入に聞いた。
〈お金を稼ぎたいだけだったら手ごろなちょうどいいモンスターを見つけてそこにいるモンスターを順番に倒して行って素材回収をしてそれを売ればいいんじゃない?〉
〈ファンタジーゲームだったら素材を集めてお金を手に入れつつ自分のレベルを上げていくっていうのがセオリーなやり方のような気がする〉
〈そんなことより俺はミユキちゃんがもっと色んな魔法を使ってるところを見てみたい!〉
〈俺も俺も!〉
どこに行ったらいいかという場所のコメントよりもミユキが魔法を使っているところを見てみたいというコメントの方が圧倒的に多かった。
「よしそれじゃあまずなるべく人がいなさそうな所まで行って魔法を披露すればいいか」
「ちょっとそれじゃあお金を稼ぐ話はどうなったのミユキ?」
「もちろんそれもちゃんとやるよ」
そう言いながら立ち上がり森の方へと再び足を進める。
「それじゃあちょっとナナミこれ持ってて」
そう言って私に手渡してきたのはパソコンだったどうやら私は撮影係らしい。
確かにここの周りには誰もいないので万が一変なところに魔法を放ってしまってもそんなに被害は出ないだろう。
「はいはい分かりましたよ」
私は若干面倒くさいと思いながらもパソコンの画面をミユキの方に向ける。
「はいそれじゃあさっきコメントに多かった私の魔法を見せていきたいと思います」
そう言って魔法の杖を構える。
「まずこれがファイヤーボール」
そう言って炎の玉を前に放つ。
〈すげーやっぱ本物みたい!〉
〈そんじょそこらのファンタジー映画とかファンタジーアニメとかよりずっとリアルだ!〉
コメント欄はそんなコメントで溢れていた。
それはそうだここは本当の異世界で本当の魔法なんだから。
「私まだこれ以外の魔法まともに使えないんだけどどうしよう?」
おどけた口調で画面に向かって言う。
私はその言葉を聞いて思わず体勢を崩してしまいそうになる。
私はてっきり何か考えがあるものだと思い込んでいたのでその意外な発言に驚いたというより気が抜けてしまった。
「あんまり他の魔法試したことないけどいい機会だしここで試してみるか」
言いながら杖を構え直す。
「お願いだから私の方に飛ばしてこないでよ」
「大丈夫大丈夫ナナミの方に私の魔法が飛んでいったとしてもその時はその時だよ」
口調を変えることなく笑いながら能天気に言う。
「いや私の方に魔法を飛ばされて来てる時点でもう取り返しがつかないと思うけど」
ライブ配信者としてのキャラで言っているのか本音で言ってるのかがわからない。
ミユキのことだから多分両方なんだろうな。
そんなことを思いながらパソコンの画面の位置を元の位置に戻す。
「それじゃあ初めての魔法に挑戦してみます!」
そう言って魔法の杖をさっきよりも強く握る。
すると青い電気の球のようなものを勢いよく目の前に飛ばす。
その攻撃は目の前の壁に直撃し大きな穴が空いた。
するとその穴はどこかにつながっているようで道ができていた。
「この穴どこにつながってるんだろう?」
そう言いながら不思議そうな顔をしてミユキがその穴を覗き込む。
「危険だよミユキ凶暴なモンスターとかがその穴から出てきたらどうするの!」
「大丈夫だってそんな簡単に凶暴なモンスターが出てくるわけないよ」
「ちょっと中に入ってみようかな」
本気とも冗談ともつかない口調で言う。
「だからダメだって危ないでしょ!」
〈面白そうだなぁ〉
〈さらにファンタジーっぽくなってきたな ワクワク〉
〈ダンジョン攻略といえばファンタジーゲームの王道だしな〉
〈イケイケ突き進め!〉
〈そのダンジョンの中に入ってそのダンジョンのボスモンスターを倒すところが見たい〉
私の言葉とは裏腹にパソコンの画面のコメント欄にはそんなコメントが溢れている。
「このライブ配信を見ている人たちもこう言ってくれてるわけだし少しだけでも中を進んでみない?」
ミユキはそう言って途中でやめたことがない。
大体こういう時ミユキは危険な状況自体面白がって最後まで突き進んじゃうからなあ。
私は何度も巻き込まれてきたからよく知ってる。
そしてこういう状態になったら私が何を言っても聞かないこともよく知ってる。
「どうしても行きたくないって言うなら私1人でも入ってくるけど?」
「私も一緒に行く」
私1人でこのダンジョンの前に残っている方がなんだか危険な気がする。
「安心してナナミは私が必ず守るから」
〈ミユキちゃん女の子で可愛いけどやっぱりかっこいいところはかっこいい〉
一切不安を感じさせない表情で自信ありげに言った。
「そうしてくれないと困る」
私はゲームのことをよく知らないのでファンタジーゲームがどういう風なものなのか正直ってよくわからない。
だけどよく言うファンタジーゲームのダンジョンとこの世界のダンジョンが同じだとも限らない。
それにダンジョンにいるモンスターの数を把握できてないし。
そのモンスターの強さによっては私の木の剣じゃ通用しないかもしれない。
そんな不安な感情を胸に抱きながら足を一歩前に出す。
「それじゃあ行こうかダンジョン攻略に!」
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