第5話 私の剣を買いに行く

「まぁまぁ落ちついて」



「こんな状況で落ち着いていられるわけないでしょ!」



「私の黒歴史が一気に全国ネットにのって広まっちゃったんだよ!」



「これで普通にしてる方が異常だよ!」



「んまあこのライブを見ている人たちは喜んでくれたみたいだし別にいいじゃん」




いつもと変わらない口調で言葉を返してくる。



「私にとってはちっとも良くない!」



「特にこのライブを見ている人たちにとってはさっきのナナミの泣き顔はたまらなかったみたいだしね」



私のさっきの泣き顔が全国のネットに配信されたんだと思うと心の奥底から恥ずかしさが込み上げて

てきて感情が膨れ上がっていく!



それに言うまでもないことなのかもしれないけどミユキはさっきから私の反応を見て楽しんでる。



「さっきから私の反応を見て楽しんでるんでしょ!」



「いやそんなことないよ」



あからさまに白々しい口調で言う。



そんな話をしてると少し遠くの方からうめき声のようなものが聞こえる。



「うー!」



それと同時に何かの足音がこっちに近づいてくるのがわかる。



「ミユキこの声って…」



「うん多分モンスターが近づいてきてる」



真剣な口調でそう言って魔法の杖を構える。



私もどうにかして戦わないとミユキに守られてるだけなのは嫌だ!



そう思いながら地面に落ちている小枝に目を向ける。



だめだこんなので戦ってもさっきと同じようにおれるだけだ!



他に何か使えるものは!



辺りを見渡しながら戦いに使えるものが何かないか探す。



すると一つの大きな木が目にとまる。



その大きな木に生えている大きな鋭い木の枝が目に止まる。



そうだ!



その木に生えている一番鋭くて一番武器に近い枝を腕の力でおる。



こんな出来損ないの剣みたいな形をしたやつであのモンスターを倒せるかどうかわからないけどとにかくやってみるしかない。



そう思いながら武器を構える。



そのモンスターに向かって駆けていく。



「えい!」



声をあげて剣を振り下ろす。




「ナナミ!」



モンスターに向かって剣を振り下ろした感覚はさっきの感覚と少し違う手ごたえがあった。



「うおおおおぉ!!!」



ダメージを与えることは出来たが仕留め切る ことはできず叫び声をあげられ思わず後ずさりしてしまう。



そのモンスターの気迫に圧倒される。


体全体が震える。


「ありがとうナナミ これで仕留め切れる」


そう言ってモンスターとの距離を詰めさっきと同じように モンスターの顔の前でファイヤーボールを放つ。



するとさっきのモンスターと同じようにそのモンスターは地面に倒れる。


「ふうなんとか片付いた まさか連続で 来るとは思わなかった」


ほっと一息ついて言う。


「まさか3回立て続けに攻めてくるとかないよね」


そう言いながら辺りを見渡す。


「それじゃあ今日は色々ありましたけど 今日の生配信はこの辺で」


ミユキは そう言ってパソコンの画面に表示されているバツボタンを押して 生配信を終了する。


「それじゃあ町の方に戻ろうか さすがにあいつらももう追っかけて来ないだろうし」


小さいため息をつきながらそう言った。


「うん、わかった」


私はミユキのその言葉に頷いてそう言葉を返す。


なんとか入り口を探してその周りから出ることができた。



「なんとかモンスターを倒せたはいいけどこれからどうやって過ごしていけばいいんだろうね?」


お互いまだこの世界に来て間もないので そんなしっかりとした答えが返ってくるとは思えなかったがダメ元でミユキに尋ねてみる。


「そうだなあどっちにしろお金は必要になるんじゃない?」


意外とまともな言葉が返ってきた。


「確かにこうして街の中にお店が出ているって事は 売ったり買ったりする人がいるって事だもんね」


「これからお金を稼いでいくにしてもどうやって稼いでいけばいいんだろうね」


「それは私もわかんないよこの世界に来てまだ 2人とも一日も過ごしてないんだから」


「そういえば今日はライブ配信するだけで終わっちゃったけどこの

のパソコン他にどんな使い道があるんだろうね」


「ライブ配信するだけで終わっちゃったのはミユキが すぐにライブ配信止めないで 楽しんでたからでしょ」


「まあまあ楽しかったんだからよかったじゃん」


「私は全然楽しくなかったよ!」


「一生残る傷ができちゃったぐらいだよ!」


「まさか異世界で私の黒歴史を作ることになるなんて思わなかったし」


「大丈夫だって あの世界にはもう多分戻らないと思うからあそこの世界でどう思われてたって異世界にいる私たちには関係ないよ」


「そういう問題じゃない!」



「でも本当にどうしようか私たちこのまま何もしなかったら食べ物を買うお金もなくて死んじゃうだろうし」


「人生多分どうにかなるよ」


笑顔で言う。


「全くミユキは 相変わらずノー天気なんだから」


ため息をつきつつ言葉を返す。


「私も武器とか欲しいな」


言ったと同時に一つのお店に通りかかる。


ふとそのお店の方に顔を向けてみるとたくさんの武器が並べられているのが目に留まった。


「せっかくだからこの店でなんか武器買っていけば」


「そうだね、 あ!でもお金がないや」


「それならこれを売ってお金にすれば?」


そう言ってミユキはポケットから何かを取り出す。 


「これは何?」


「多分さっき倒したモンスターの毛皮だと思うモンスター倒したらドロップした」


「これを売ったら多少なりともお金になるんじゃない」


「そうだねありがとう」


私はそうお礼を言って受け取りお店のカウンターにさっき倒したモンスターの毛皮を置いた。


「すいませんこれをお金に変えてもらう事って出来ますか?」 


「それはこの素材を売りたいってことかな?」


「はいそうです」


「はいそれじゃあ銅貨10枚ね」


お店のカウンターの上に10枚のお金を置いた。


やはり当たり前かもしれないが 日本のお金とは違い小判のような見た目をしたお金だった。


「すいませんこのお金で買える武器は何かってありますか?」 


「え!このお金で買える武器」


薄々気づいてはいたがその男の人の反応を見るにこのお金はずいぶん安いようだ。


「私今これしかお金持ってないんです」


「困ったなあそのお金じゃあここの店に並んでる武器どれも買えないよ」


困った表情を顔に浮かべながら後ろに並んでいる剣を見て言う。



「お願いしますどんな古い剣でもいいんで私に売ってください!」


ダメ元でそうお願いしてみる。


「そう言われてもね…」


後ろにある棚に並べられている武器のほうを見て考えているようだった。


するとその男の人が動かしていた視線を突然止める。


「そうだこれならお嬢ちゃんに売ることができる」


そう言って男の人が手に取ったの は一番奥の目立たないところに置かれているお店の棚に並んでいない木剣だった。


「これならあげられるけどどうする?」


「是非買わせてください!」


私はとびっきりの笑顔を顔に浮かべていった。


地面に落ちてる小枝で戦うよりこの木剣で戦った方が全然いいと思う。


「ありがとうございます!」


こうして私は武器を手に入れることができた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る