第25話 自信って……
辿り着いた先は、絶対に人の手では持てないボーリングピンが目印のアミューズメント施設。ゲームセンターにカラオケ、ボーリングなどさまざまな遊びを提供してくれている。
中に入ると、さすが休日と言わんばかりに人で溢れていた。よく見ると歳が近そうな人が多い。それに男女のペアで来ている人もいる。デートスポットにもなるのかここは。来たるべき未来のためにしっかりと覚えておこう。確かに、遊ぶところが多ければ暇にならなそうだし、デートにも使えるのかもな。まあ、予習は大事だから。
「じゃ、まず受付しよっか。5人だから2レーンでいっか」
中に入ってからは篠宮がついてこいと言うのでそれに従い、やってきたのはボーリングの受付だった。
「とりあえずはこれでいっか。佐伯もついてきて」
「はいはい」
篠宮は紙を2枚取り出して手早く何かを書くと、佐伯を連れて受付に持って行った。
「あいつ手際いいな」
流れるような作業でこなしてたぞ。
「結菜ちゃんは昔からよくここで遊んでたんだって。前に教えてくれたんだ」
「ホームグラウンドというわけか」
案内板を探すことなくすいすい進んでいったわけはそれか。初見の俺なんて案内板を見てもよくわかんなかった。
「相原もこういうところによく遊びに来たりするの?」
「あんまり、かな。私はどちらかと言えばインドアだから。でも水族館はたまに行く」
相原はアウトドア派だと勝手に思っていたけど違うのか。こんな可愛い天使を周りの男や女が放っておくとは思えないんだけど。ただまあ相原が嘘を吐く理由もないし本当のことなんだろう。
でもたまに行くのが水族館っていうのが可愛い。動物園じゃなくて水族館なのがいい。なんでかわかんないけど、そっちの方が良いと思えた。
「でも、それならよく今日来ようと思ったな。しかも自分から行きたそうな雰囲気出してたし」
そうか、あの日の相原を見たから俺はアウトドア派だと決めつけたのか。最初はわからなかったけど、あの日の相原は外に遊びに行く話をしたらすげえ行きたそうにしてたわけだし、お外大好き人間だと思ってた。
「そ、それは……その……えっと」
明らかに動揺したように目を泳がせる。その目の先には篠宮に連れて行かれた佐伯の姿。
はいはいそういうことね……ったくあのイケメンは天使の心さえ奪って行くのか。
「おっけーだいたい把握したわ」
「え、嘘⁉︎」
「サポートして欲しかったらいつでも言ってくれよな」
一目惚れしたとは言え、男たるもの気になる相手の意思は尊重して然るべき。一番願うのは相原が笑顔で過ごすこと。それこそ惚れた男がするべき行動なのだ。だから佐伯、お前は俺が殺す。だめだやっぱ綺麗事じゃ殺意抑えられねぇわ。
好きな人の幸せを願うがその相手まで尊重できるほど俺は人間が出来てないんだなこれが。相原が誰かを好きになったらその相手を俺は恨むぜ。絶対にな!
「サポート?」
俺の答えにピンと来ていない相原が首を傾げる。
あれ、なんか思ってたんと反応が違う。なので本人にだけ聞こえるように相原に耳打ちする。
「目が佐伯を追っていたから、てっきり佐伯が好きなのかと。だからサポートしようと思ったんだけど」
「はあ…………」
相原は落胆のため息を漏らす。
「ちょっとでも期待した私が悪かった。神崎君はそういう人だったよね」
「どういう意味ですか⁉︎」
え? 佐伯が好きだから今日の遊びに来たかったんだなとか俺1人で納得してたんですけど。その根底が覆される反応だな。じゃあなんで遊びに来たがったのかさっぱりわからん。
「相原、篠宮が呼んでるぞ」
「あ、ほんとだ」
ハカセに言われて受付を見ると、篠宮が大きく手招きして俺たちを呼んでいた。
相原は小走りで篠宮のところに向かう。
「俺も呼ばれてるんだよな?」
相原が到着しても、依然としてこっちに手を振る篠宮。ざっきーも来いって言ってるし。せっかくだからハカセも入れてあげて。
「で、あえて相原を先に行かせた理由を聞こうじゃないか」
「ふっ、さすがだな」
受付に向かいながら言えば、ハカセは口角を僅かに上げて笑みを浮かべる。
「いやよく気づいたなみたいな顔するなよ」
俺でも気づくわそんくらい。二人で受付してんのにそこから相原だけ呼ばれるのは不自然だろうが。全員呼んだと考えるのが自然だろ。まあ相原という天使を近くに置いておきたいだけって理由なら理解出来なくもないが。
「そういったところには気がつく割に、自分のことは気がつかないのか?」
「何が言いたい?」
「八尋、お前はもっと自分に自信を持つべきだ」
「なんだよそれ」
「…………」
いや言いたいことだけ言って黙るなよ。
自信なんて目に見えないものなのに、お前に何がわかるんだよ。そう言いたかったけど、言葉には出来なかった。
ハカセ、俺だってそんくらいわかってるよ。でもさ、自信ってどうやって持てばいいんだ? そこを教えてくれよ。
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