第29話
回転灯が回る中、武装のチェックを行う。
肩背面にミサイルポッド、腰にイオンカノンと紅椿。片腕にマルチシールドを備え、もう一方にはロングレンジライフルを持つ。
操縦桿から手を離し、両手のグローブを強く引く。そして大きく息を吸い込むと、ゆっくり吐き出し桿を固く握り締めた。
リフトが止まる。
広々としたアリーナに観客の姿は無く、広さもあって物寂しい。何もないフィールドを見渡した時、咆哮が空に響き渡った。
巨大な影が頭上を過ぎる。
光沢のある赤みを帯びた鱗に長く伸びた尾。大きく裂けた巨大な口には鋭利な牙が。引き締まった身体からは逞しい脚が伸びており、大きな鉤爪が覗く。黒く固まる溶岩に覆われた特徴的な角を振り上げると、巨大な生物は着地し再び咆哮を上げた。
ヴォルケニックドラギオン、と称されるエネミーの内の一種だ。
その名の通りマグマに生息する竜の一種で、滅多に姿を現すことはない。動きは鈍いが圧倒的な防御力と、放たれるブレスは強力で、何機ものギアフレームを返り討ちにして来たと聞く。貴重なパーツを落とすことから徒党を組んで狩りに勤しむ者はいるらしいが、安定した討伐方法は確立されていないそうだ。
竜はファントムナイツで目を止める。そして二本の脚で立ち上がり、口を大きく開けながら胸いっぱいに空気を吸い込む。赤い鱗を白く光り輝かせると、ファントムナイツへ熱線を撃ち放った。
ようやくロックが解除される。
同時にタイマーが動き出す。
ブーストを一気に噴かしブレスの下に潜り込む。手にしたライフルと盾を投げ捨て、紅椿へと手を伸ばす。オーバーブーストを起動すると、接敵し、抜剣しながら切り上げた。
セイバーを払う。そして納める。
深紅の刃が消えた時、竜の首が傾き音を立てて落下した。
「ファントムナイツ、ヴォルケニックドラギオン討伐完了。討伐タイム一秒三、被ダメージゼロ。スコア百。これにてシミュレーターを終了します。結果発表までお待ちください」
ベルトを外す。そしてシミュレーターのドアを開ける。
立ち上がれば、すぐ目の前でベルノートが待っていた。
「フルスコア、やるじゃん」
「紅椿が強かった。あれで無ければもっと時間が掛かっていただろう」
「業物中の業物だもの。譲ってあげた私に感謝しなさい」
「仕留めたのは俺だがな」
アキラが腰に片手を当てる。ベルノートが顔を背けて鼻を鳴らすと、会場中にシステム音声のアナウンスが響き始めた。
「ただいまをもって、エントリーが終了いたしました。これより本戦出場者を発表致します。お近くのモニターをご覧ください」
アキラとベルノートの二人は小さなモニターを見つけ出す。人だかりの後ろからモニターを見上げて腕を組む。
盛大な音楽と共に大会のロゴが表示される。次いでアルカディアと、スターライト・サジタリウスの紋章が映し出された。
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