第28話

 二人は受付に進む。

 人型のボットが笑顔で迎える。レプリカーナと言われるタイプで、レプリカントとは違うらしい。レプリカーナは空中にモニターを出すと口を開いた。

「セントラル・クロスシティ、グランドアリーナへようこそ。現在バトルアリーナ、コンバット・ギアフレームの部の参加を受付中です。エントリーなさいますか?」

「二人、参加だ」

「かしこまりました。先に本大会のルールについて説明させていただきます」

 モニターが切り替わる。

「まずエントリー致しましたらワタクシの後ろにございます、シミュレーターにてスコアアタックを行なっていただきます。スコアアタックはギアフレーム一機での戦闘となっております。評価基準は主に、時間や被ダメージ、命中率等によって判定されます。全参加者がスコアアタックを終えた後、スコアの高い上位十六名が本戦への参加権を獲得します」

 二人を見る。特に質問が無いのを確認すると話を続ける。

「本戦は勝ち抜き方式、いわゆるトーナメント方式で実施されます。ルールは一対一、制限時間は三十分。どちらかのギアフレームが戦闘不能、もしくは降伏した時点で終了です」

「三十分過ぎた場合は」

「残存基本パーツ数が多い側が勝利。同数の場合は被ダメージ量が少ない側、ダメージ割合も同じ場合は燃料残量が多い側が勝利となります」

「引き分けは、あり得ないと」

 レプリカーナは頷く。モニターを手で示せば、表示が変わり予定されたスケジュールが表示された。

「スケジュールはこのようになっております。注意事項として、エントリーと同時にギアフレームを登録して頂きます。大会中、登録されたギアフレームの各種装備、武装の変更はできませんのでご注意ください。最後に優勝者には主催者でもあるセイクリッド・アルタイル、クランマスターのリュウセイより表彰されます。何かご質問はございますか?」

「大丈夫だ」

 アキラが頷いた時、おもむろにベルノートが言った。

「気が変わった。やっぱり私は辞めとく」

「なんだと。お前、参加しないのか。さっきまでやる気だっただろう」

「ちょっと見るだけって言ってたでしょ。人に会う気でこの街に来たのに、どうしてもスケジュールが合わないの。ギアフレームのロックは解除してあげるからアンタ一人で参加しなさい」

「俺の不戦勝ってことで良いんだな」

「アンタが優勝したらね。百万クレジットは譲ってあげる」

「お前と戦えると思ったんだがな。残念だ」

「仕方ないでしょ。誰かさんの金策の為に会うんだから。途中までなら見ていてあげるから我慢しなさい」

「嬉しさで胸が張り裂けそうだ」

 皮肉もそこそこにしてアキラは腰に手を当てる。片足に寄り掛かるとレプリカーナに向き直った。

「変更だ。俺一人が参加する。使う機体はファントムナイツ」

 かしこまりました、と応じる。仮想モニターを目の前に作りあげると、ファントムナイツの機体情報を映し出す。黒の機体を見せながらレプリカーナは言った。

「こちらの機体、装備でお間違えありませんね?」

「問題ない」

「かしこまりました。ファントムナイツ、エントリーいたします」

 素早く端末を操作する。出力されたカードを出すと、アキラへと出しだす。受け取ったのを確認すると、レプリカーナは背後のシミュレーターを示した。

「ファントムナイツ、エントリー完了しました。シミュレーターにてスコアアタックを開始してください」

 アキラはシミュレーターのドアを開けて乗り込む。ベルトで身体を押さえる間、シートが自動で調整される。左右のペダルに足を置き、操縦桿を軽く動かす。納得のいく位置に座り直してドアに手を掛けた時、ベルノートと目が合った。

「恥をかかないように気を付けなさい」

「努力しよう」

 笑って応える。

 ベルノートは微笑むと、シミュレーターのドアを閉めた。

「シミュレーター起動。データカードを挿入してください」

 レプリカーナより受け取ったカードを挿入口に差し込む。ファントムナイツのデータが表示されるとタッチパネルに、使用する機体は合っているか、と映し出される。

 はい、をタッチすると、モニターにシステムメッセージが流れた。

「ファントムナイツ。バトルアリーナ、コンバットギアフレームの部、予選、模擬戦闘を開始します」

 ギアフレームの起動音が響く。振動と共にモニターに周囲の景色が映り込む。

 無機質な薄暗い通路の先にリフトが見える。ファントムナイツをゆっくり進めてリフトの上に乗れば、機体をロックし警報と共に上昇を始めた。

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