第23話

「わざわざ来てやったんだから文句言わない」

 いぶし銀の胸部装甲を閉じる。急いで機体を起動させてブースターを噴かす。離脱するブラックキャットを追う途中、すぐ脇を対艦ミサイルがすれ違う。

 迎撃ミサイルが放たれる。

 やや低速なミサイルは対艦ミサイルを迎え撃つ。爆発は爆発を生み、空中で盛大な爆発を引き起こす。ギンジの店を、村を、全てを巻き込み広がる爆風に煽られる中、ギンジはウイングスタビライザーを展開し、機体の姿勢をなんとか保つ。

 そんな事などお構いなしに、ファントムナイツとジャックポットは互いに着かず離れず距離を取る。ライフルで撃ち合うも、致命傷には程遠い。だが装甲を掠めた弾丸は確かな傷となって残し合う。

 ばら撒かられる爆弾を回避し、反撃のミサイルを撃ちこむ。

 ジャックポットはミサイルを避けると、空中で全てのミサイルを撃ち落とす。

「本来は黒猫の為に用意した物だが。仕方ねぇ。フルメタルジャケット、全ミサイル発射。一機残らず破壊しろ」

 フルメタルジャケットより、数百にも見える程の多量のミサイルが上がる。煙の軌跡を残しながら、向きを変え、次から次へと襲い来る。

 撃ち落とし、切り払い。ミサイルを避ける。黒のセイバーを構え、迫るミサイルを切って落とすとベルノートが叫んだ。

「いつまで遊んでんの!」

「そう言うな。これはゲームだぞ。お前も楽しめよ」

 アキラは言って盾で防ぎ、回避し、反撃の一撃を叩きこむ。だが茶色の機体は引き金を引くより早く回避を入れて避ける。

 距離を取るジャックポットを追えば、ライフル弾が飛んでくる。盾で防ぎつつオーバーブーストを起動すると、急加速して赤のセイバーを抜いた。

「遊んでるなら置いて行くから。好きにしなさい」

 セイバーを抜き、ファントムナイツを迎え撃つ。

 深紅の刃を受け止めて、互いに押し合う。ファントムナイツがやや優勢で、ジャックポットを押していく。深紅の刃がジャックポットに触れかけた時、ミサイル接近の警報が響きだす。

 蹴り飛ばし、距離を取る。

 二機の間にミサイルが落ち、地に当たって爆発する。ミサイルは、一つや、二つ、程度では無く、続々とファントムナイツに降りそそぐ。それらは厚い壁となって、ジャックポットの壁となる。

「ここまでか」

 回避し、盾で弾き飛ばし。アキラは小さく舌打ちする。尚も警報は鳴り止まず、残るミサイルをジャックポットに叩き込む。結果を見ずに背を向けると、オーバーブーストを使ってブラックキャットの後を追う。

「客って言うのはギンジのことか」

「お前はお前で、その機体どうしたんだ」

「アンタ等、一回黙りなさい」

 散開し回避。そして迫るミサイルを撃ち落とす。追って来るジャックポットの攻撃を防ぎ止め、反撃のライフル弾を叩きこむ。

 ジャックポットは難なく回避し、一層速度を上げて迫る。

「代われ、下手くそ。火器管制を使うからだ。漢なら自分の手で狙わなにゃ」

 銃身だけでも倍近くもある対物ライフルを展開する。劣化ウラン弾を手で装填し、銃の照準カメラをモニターに映し出す。オートパイロットでブラックキャットに追随させると、バック飛行に切り替えて、銃口を茶色の機体に向けた。

「悪いねぇ。ジャストミートちゃん。俺もキルされたく無いんでね。ここでくたばって貰うぜ」

 肩から観測ボットを射出する。距離、速度、風向、温度に湿度、気圧に至るまで、あらゆるデータを映し出す。ミサイルの合間へ狙いを付けると、一発の弾丸を撃ち放った。

 弾丸は回転しながら一直線に飛んでいく。何もない朝の空へ、まっすぐに飛ぶ。外したかにも思えたが、ジャックポットがミサイルの影から飛び出す。茶色の機体は吸い込まれたかのように、自ら弾丸の前に飛び込んでいた。

 小さな悲鳴が上がる。弾丸が機体の中心を撃ち抜く。

 回転と、発熱により綺麗な穴を作り上げ、貫き、空へと飛び抜ける。ジャックポット・オールセブンは沈黙し、推進力を失うと、墜落し、転がりぶつかり大破した。

「ジャストミート。ド真ん中だぜ。見たかアキラ。俺の完璧な偏差撃ちよ」

 バレットファングは機体を戻す。そして対物ライフルを折りたたみ、背に納める。腰からイオンカノンを抜くと、迫るミサイルを撃ち落とす。

「旅人の安らぎ、浮上。着艦用意。支援射撃始め」

 徐々に砂地が広がっていき、荒野から砂漠に変わる。旅人の安らぎからの支援射撃を受けて、ミサイルの嵐の中を潜り抜けていく。隆起する砂の中から旅人の安らぎが姿を現し、誘導灯を展開する。真っ先に開かれた装甲の中へと飛び込んだのは、先行していたブラックキャットだった。

 クレーンで格納される間、ファントムナイツが援護射撃に回る。バレットファングの格納を支援して、最後に離着陸パッドに飛び乗る。同時に装甲を閉じると、潜砂船は潜航を開始した。

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