第21話

「おいおいおいおい、ジャストミートさんよぉ。何が楽しくて俺を捕まえたんだ? ギンジさん、別に悪いことしてねぇってば。ただ真っ当に商売していただけだろうに」

「うるせぇよ。誰がお前に用があるって言った。用があんのはお前じゃなくて、黒猫だ」

「なんだ、ジャストミートおじさん。かわいいかわいい子猫ちゃんにボコボコニされて怒ってんのかよ。大人げねぇな。相手はかわいい女の子だろう?」

「ばぁか。女の子がロボゲーなんてやってる訳ねぇだろ。中身はおっさんに決まってんだろ。かわいい女の子だったら、あんなに性格悪い訳がねぇ」

「それは言えてる。だけどどうするよ、実際風呂にもロクに入らねぇような不潔なオッサンだったらよ。テレビの前で横になりながら新聞開いて尻掻きながら鼻くそほじってるとか、想像しただけでも寒気がする」

「やめろやめろ。それ以上いうな。世の中のオッサンに謝れ。風評被害だぞ。どうすんだ、ウチの父親をバカにしないでくださいって苦情入ったら。仮にも公共の場なんだぞ、誰が聞いてるか分からねぇって」

「聞いてんのは、お前と手下の雑魚だけだろうがよ。苦情が入ったら当然責任を取ってもらう」

「俺は何も言ってねぇだろうが。全部ギンジがバカにして言った事だろうが。あとアイツ等のことを雑魚って言うな。おら見てみろよ。サイコパスの目をしてやがる」

「お前が一番バカにしてるだろ。やめてくれ、お前の失言のせいで死にたくねぇぞ。第一、雑魚は事実だろうが。初期機体のラファルグ・ベータに負けたんだろう? 流石に恥ずかしくないか?」

「言うじゃねぇか、ギンジ。ちょっと意表を突かれただけだ。それに俺はキルされてねぇから負けた訳じゃねぇ。次に会った時は本気で行く」

「あーらら。大人げないねぇ。だからオッサンと言われるんだよ。縛り方も見てみろよ、これ。麻縄でグルグル巻きって、いつの時代だ。どうせ拘束するんならギロチン拘束にしてくれよ。クッ殺せ、って言ってみてぇんだわ」

「勝手に一人でやってろ。ん、なんだ」

 仲間の一人がジャストミートに耳打ちをする。たった一言囁きかけて、離れ際にギンジを睨む。わかった、とジャストミートは短く言うとギンジを見下ろして笑った。

「協力助かるぜ、ギンジ君。子猫ちゃんが現れた。予定通り、まずはお前たちでアルティメットを切らせろ。俺が行くのはその後だ。さぁ、行け。絶対に勝つ」

 ジャストミートは慌ただしく出ていく仲間たちを見送ると、顎に触れながらほくそ笑む。

 そんな企みに気づくことなく、ブラックキャットの影が近づく。荒野の上空を一直線に、ウエスタンビューへ飛ぶ。

 ジャストミートの仲間たち五人組がギアフレームへと乗り込む。メインストリートを滑走路代わりに、次々とギアフレームが飛び上がっていく。編隊を組み、ブーストを吹かしてブラックキャットへ速度を上げた。

「さぁ、黒猫。アルティメットを切って来い。てめぇも俺と同じ条件なら、必ず俺が勝つ」

 黒の機体が黒のセイバーを抜く。そしてオーバーブーストを起動させる。燃焼ガスを激しく噴射し、急激な推進力をもたらす。

 まずは一機、すれ違い際に切って捨てると、着地し、二機目を見上げた。

「おいおいおいおい、なに普通に戦ってくれちゃってんだ。アルティメットを切ってくれなきゃフェアにならねぇじゃん。全然ダメだ。わかってない」

「そういう気分なんだろう。お前らなんてアルティメットを切るまでもないってよ。やられ役も大変だねぇ。就職先はアクション俳優なんてどうだ? もちろんやられ役として」

「喋るなギンジ。お前は自分の単位の心配してろ」

「やめてくれ。ゲーム中に大学の話を持ち出すな」

 オーバーブーストの再始動に合わせて荒れた大地を強く蹴る。一直線に飛び上がりつつ、二機目を下から切り上げる。強引に機体を捻り、進行方向を変えて三機目を両断する。黒のセイバーを振るうたび、花弁にも似た黒の粒子を撒き散らす。

「カッコいいねぇ。夜桜八戒。俺もあのセイバー欲しいわぁ」

「黙ってろギンジ。そこを動くなよ、俺が行く」

 ジャストミートはジャックポット・オールセブンに乗り込む。

 四機、五機と切って捨て、ブラックキャットがジャックポットへと迫る。

 起動し、立ち上がりかけた時、ミサイル接近の警報が響いた。

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