第18話

「どうだ」

「やるじゃん」

 わずかに残ったボットを捌く。タッチパネルに素早く触れて、ミサイルポッドを投棄する。機体は気持ち軽くなったが、相も変わらず極めて重い。もっさりとした動きながらも弾幕を避けて艦へ近づく。

 対空砲を破壊してチェスの駒に似た艦橋に取りつく。厚い装甲に覆われたブリッジを覗き込む。内部までは見えなかったがアキラは笑みを浮かべながら言った。

「自堕落大公。俺の武装が見えるか? 残念だがチェックメイトだ」

 レーザードリルを稼働させ、艦橋に固定する。

 短いチャージが終わり、熱ゲージが表示される。レーザードリルを艦橋に押し当てると、ドリルの引き金を引いた。 

 赤い閃光が迸る。

 金属が溶解し、徐々に溢れて流れ出す。オーバーヒートに気を付けながら適度に緩め、熱ゲージを注視する。厚い装甲の半分程度も貫いた時、甲板で警報が鳴り出した。

「ラファルグ・ベータ。我が誰か知らぬようじゃな。理由なく泰然自若の自堕落大公などと呼ばれていると思ったか」

「違うのか?」

「いかなる窮地も、不意打ちにも。動じぬ屈強な精神を持ち合わせ、常に冷静沈着。故に他者からすれば自堕落に見える。それが我の強さよ」

「要するに。図太い、って事だな。出て来いよ。お前の慌てふためく顔が見たい」

 甲板上で回転灯が回る。ハッチが開き、迷彩色のギアフレームが姿を現す。

 リフトが停止するのを待って、緑色のギアフレームが顔を上げた。

 機体名はキングクラウン。

 重厚な上半身に、無限軌道のタンクレッグ。右手にはイオンカノンを、左手にチェーンガンを装備し、肩後部にはパイロランチャーに、レールカノンを搭載している。両肩先にはミサイル迎撃レーザーと、脚の上には機銃を一対備え、重武装の極みであった。

「我の艦から離れてもらおう」

 前かがみになり肩武装を展開する。折りたたんでいたパイロランチャーを展開し、艦橋に取りつくラファルグ・ベータを狙う。警報を聞き、ライフルを盾に切り替えると砲弾を真正面から受け止めた。

 熱風が辺りを包む。

 機体への損傷は軽微だ。だが、けたたましく警報が鳴る。真っ赤に光るタッチパネルには最大にまで振り切った熱ゲージと、温度計が限界温度を示す。

 レーザードリルの固定解除を急ぐ間、続けざまに二発、三発とランチャーが放たれる。

 真正面から盾で受け止めるも、その度機体の温度が急上昇し、各部位から次々と警報が悲鳴を上げる。ペダルを踏み込み横方向へ回避すると、ブースターを噴かしキングクラウンへと挑む。

 砲身を畳むキングクラウンへと盾を構え、真正面から突進していく。装甲に触れた瞬間、予想に反した反動が機体を襲った。

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