第17話

「艦影確認。デカいな」

 大地を抉り、砂煙を巻き上げて地上戦艦が北上している。余程重いのか、通過した後はタイヤ痕が深く残り、茶色い土砂を巻き上げていく。一気に高度を落とすと後方へと回り込む。

「装甲も厚いし武装も多く搭載している。背面は死角になりがちな分、相手も対策してきているはず」

「見えている。針山みたいに重武装だ。お前も直接見に来いよ。驚くぞ」

「お断り」

「残念だ。さぁ、始めるぞ。エンゲージ!」

 排煙を巻き上げる地上戦艦を見定めてオーバーブーストを起動する。低空を擦るように急加速して、一気に距離を詰めていく。地上戦艦の泥はねの中、取りつこうと高度を上げた時、戦艦に動きがあった。

 小さなハッチが開かれる。黒々とした靄が溢れ出す。

 霧か、煙かにも見えたそれは、不規則に蠢き集う。決して風に流されることなく、霧散し集いを繰り返し、明確な意志を持ってラファルグ・ベータへと迫る。急いで解析させれば、スワームボットと表示された。

「スワームボット。厄介なのが来たね。電磁パルス砲か、イオンカノンでもあれば楽なんだけど」

「幸いなことにどちらも装備していない」

「なら戻ってくる? こっちにはあるけど」

「武器を売りたいだけだろう。戻る時間も惜しい。このまま突破する」

 ここで邦ジャズに切り変わる。相も変わらずハイテンポで、ロックにも似た曲調だ。指の腹で軽くリズムを刻みながら、操縦桿を握り直す。

 オーバーブーストを停止して左右に細かく回避をいれていく。常に止まらず動きながら距離を置き、群のロボットへ射撃し続ける。

 一機一機が放つレーザーの攻撃頻度は極めて低い。だが何百と何千ともいるボットは、代わる代わる射撃して息つくような暇もない。ライフル弾の一発で一機のボットを落とせるも、代わりのボットが補完し、群れとして再生しているようでもあった。

 地上戦艦の砲塔が回る。そして対空射撃が始まる。

 レーザーと実体弾の雨あられの中を危うい所で掻い潜り、ミサイルを三発スワームボットへ撃ち放つ。小さなロボット群は迫るミサイルを感知して散開、回避し、また集う。

 そう動くなら、と桿を引くと射撃しながら高度を下げる。

 地上すれすれでブースターを噴かす。燃焼ガスで草を焼きながら、スワームボットから距離を取る。追って来たのを確認すると、一転、桿を押し込みオーバーブーストを起動した。

 凄まじい圧力の中、機体が前上方へと加速する。スワームボットの上空へと抜けながら狙いを付けるとミサイルを全て撃ち放った。

 二十一ものミサイルが、地上を飛ぶスワームボットへ降りそそぐ。

 案の定スワームボットは回避する。だがミサイルは草地に当たって炸裂し、ロボット群を巻き添えに大きな爆発を引き起こした。

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