第15話

 少女はガラクタの山の中から抱える程の端末を取り出す。それをアキラに渡すと、腕を組んで机に寄り掛かる。

「そこら辺の別プレイヤーを適当にキルしていけば確かに稼げる。だが大金を手に入れたいなら時間が掛かってしまう。このゲームにおいて比較的効率の良い金策と言えば、賞金稼ぎだ。どれでも良い。欲しいだけ選べ」

 アキラは賞金首リストを表示させて、少女へとつき返す。片手で端末を受け取ると、退屈そうに捲っていく。

「どれでも良いって言ったって。コイツ等がどうして賞金首になっているかわかってる? 強くて勝てないけどお金出すのでどっかの誰か倒してください、って言われてんの。高額になればなるほど相手は強いって事なんだけど?」

「わかっている。俺が賞金首に挑戦した所でお前には何のデメリットは無い。ラファルグ・ベータの燃料代や、弾薬代は手持ちのカネから支払うし、負ければ俺がデスしてそれでお終いだからな。だが奴らの首を獲ったら、賞金はそっくりそのままお前にやろう」

「よっぽど自信があるんだ。初期機体のくせに」

 いかにもな賞金首が並ぶ。プレイヤー名と機体名、それぞれ画像と共に金額が表記されている。最高額の自分の顔とブラックキャットを流して、次点で最も高額な賞金首を表示させた。

「泰然自若な自堕落大公ドン・ドドリコ・ドドリゲス、とドン・ドドリコ・ドロゾーア。賞金は二人で三百万クレジット」

「見せてくれ」

 端末をアキラへ戻す。

 アキラは片手を口元に当てながら詳細を確認する。

「泰然自若な自堕落大公ドン・ドドリコ・ドドリゲスか。すごい名前だな。音感が良い。機体名はキングクラウンと。ドロゾーアの方はクイーンティアラで、船の名前はチェックメイト。アルティメットモジュールの有無までは不明、と」

「気を付けておくに越したことはないけど。そもそも初期機体で勝てる相手じゃないんじゃない? 無理そうだったらもっと弱そうな奴にしても――」

「いや、これで良い。お前がコイツと言ったんだ。どれだけ強かろうとやってやるさ。その代わり、と言っては何だが。一万クレジット出す。バックアップを頼みたい」

「具体的には?」

「ラファルグ・ベータのメンテ。輸送。弾薬の補充。必要な武装の購入だ」

「戦闘区域にまで立ち入らない。ドロップ品は私が頂く。いざとなればアンタを見捨てる」

「いいだろう。充分だ。その代わり戦闘中に困らないようメンテだけはしっかりしてくれ」

「良いけど。期間はいつまで? 一ヶ月とかならお断り」

「心配無用だ。今夜中に片付ける」

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