第13話
戦艦フルメタルジャケットは傾き黒煙をあげながら、全速力で離脱していく。時折、爆発を引き起こし、船橋から構造物が落下する。あえて追撃をすることもなく、アフターバーナーの光を見送りブラックキャットは言った。
「よくやった。着艦用意」
潜砂船の一部が開く。離着陸パッドが露出し誘導灯が展開される。砂煙が立ち込める中、赤い灯りが列を成す。
「ラファルグ・ベータ。お先にどうぞ。私の船にぶつけないでよ」
誘導灯の光に合わせて徐々に高度を落としていく。離着陸パッドを照らす四つの投光器が動き、迫るラファルグ・ベータを照らす。
目標の離着陸パッドをターゲットすると、着陸シーケンスに移行した。
「素晴らしいアルティメットだった。ランクは?」
「EとD」
操縦桿から手を離す。ラファルグ・ベータは自動でパッドへ降りていく。風向きも、強さも全て計算し、砂吹雪の中をブレなくまっすぐ降下していく。
右足、左足とパッドに触れ、同時に二度の振動が機体越しに伝わった。
ブースターが停止する。そして甲高く轟く動作音が徐々に低音へと変化していく。
クルクル回る回転灯の光の中、拘束具が両の脚を固定する。次いで肩、そして背を燃料ホースと共に固定する。クレーンが機体を釣り上げれば、すぐ正面の巨大な扉の奥へと動き出す。
冷水のカーテンをくぐる。
機体に着いた砂を落とし、同時に冷却を行う。水のベールを抜けると、高圧の空気が機体の水滴を吹き飛ばす。
扉の前でクレーンが止まる。そして一階層分、下降していく。運搬台車がラファルグ・ベータを受け止め、開く扉の奥へと進む。広々とした空間で、ギアフレームの格納庫となっていた。
ハンガーに格納される。タラップが胸元へ伸びていく。ファントムナイツを停止させてから装甲を開き、タラップに移る。
艦内と思えぬ程の広さがあり、ギアフレームも数機分なら格納できるようだ。ギアフレームに限らず、戦闘機や、輸送機にスーパーカーも備えられ、中々のコレクターぶりが伺える。
中でもとりわけ驚いたのが、ギアフレームを圧倒する程の大きさのある多連装式のロケットブースターだ。超長距離単独飛行用ギアフレーム追加ブースターユニットと称される物で、一般に追加ブースターユニットと呼ばれる。それが二つも鎮座しているのだから思わず見入ってしまう。
「驚いた? でも触らないで」
艦内に響く警報と共に、ブラックキャットが侵入してくる。アキラのすぐ目と鼻の先を、台車と共に過ぎていく。比較的武装は少なく、しなやかで軽装。人型であるが逆脚で、だからこそ正位と異なり、爆発的な機動力を生み出せる。
ブラックキャットはラファルグ・ベータの隣に落ち着くと、胸部装甲を開いた。
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