第8話
「ダブルアクション形式だ。引き金を引けば勝手に撃鉄が起きる。装填数は六発だが持ち歩くときは一発分空けておけ。ほら弾薬だ。二十四発も有れば充分だろう」
バラバラと音を立てて弾薬を散らす。薬莢に包まれた弾薬は、先端がすり鉢状になっている。ギンジは指で示すと見えるようにして言った。
「ホローポイント弾だ。人体に打撃属性の大きなダメージを与える事ができる。対してギアフレームには全くと言っていいほどダメージを与えることはできない。もしも生身でギアフレームと戦うんならロケランでも調達するか、炸裂弾を使うことだな」
「助かる」
言って、弾薬をポーチに納める。
「それでお前の言うスクラップ業者とやらはどうやって会う」
「まだ待て。まだお前に渡す物がある」
「まだあるのか」
「うるせぇ。無くても良いがお前が辛いだけだぞ。こちとらサービスしてやってんだ」
「わかった。早くしてくれ」
次いで取り出して見せたのは、ブーツと、そしてロングジャケットだ。どちらもテーブルの上に置くと、身に着けるようにと言った。
「砂地用のブーツだ。砂に足を取られねぇし、砂丘を登るのに最小限の力で済む。ジャケットは砂から身を守るためだ。日差しも強いし、砂漠は風も洒落にならんくらいに痛てぇからな。スリップダメージの軽減になる」
ブーツを履き替え固く紐を結ぶ。立ち上がり、ジャケットに袖を通してみれば、サイズは見事にぴったりだった。
「うし、だいぶ良くなったな。くそ雑魚みたいな見た目から、雑魚くらいにはなっただろう」
腕を広げ、自分の格好を見下ろす。
慣れない服格好ではあるが、動きにくい、なんて事は無い。背を向けて、鏡も無しに自分の後ろ姿を見ようとするも、流石に何もわからなかった。
「最後に直さなきゃいけねぇ部分がある」
「まだ何かあるのか」
「これは好意で言ってやるが。その偉そうな口調。今の内にやめた方が良い」
「なぜだ」
「お子様みてぇな見た目で偉そうな口を利いてんじゃねぇ。一人称は見た目らしく僕にするべきだ。ただの痛いキッズだぞ」
アキラは深いため息をつく。そしてギンジに向き直ると、両手を腰に当てた。
「俺」
「僕」
「俺」
「僕」
「俺」
「おい。俺じゃ無くて僕にしろ、僕。お前が俺って言ったら俺とキャラが被るじゃねぇか」
「俺は元々俺だった。文句あるか」
「だったらなんで今まで一人称が私だったんだ、まったく」
頭の後ろを掻きながらぼやく。
「それで報酬の話だが。言い値だってさっき――」
「そんなもの、無事に手に入れてからに決まっているだろう」
「ですよねぇ。知ってましたとも、お客様のご期待にお応えするのが我々商売人の喜びですよってね。クソが」
吸い殻を口から吐き捨てる。火の点いた煙草は絨毯に触れるより早く燃え尽きると、灰は風に吹かれて消え去った。
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