第7話

「座ってくれ。何か飲むか? コーヒーか、紅茶か。それともビールかウイスキーか、それともミルクか」

「不要だ。それよりもアルティメットモジュールは」

「手元にはねぇ。だが持ってる奴を紹介する事ならできる」

「誰だ、それは」

「俺がいつも卸しているスクラップ業者だ」

「どこに居る」

「まぁ、待て。焦るな。まずは座れ」

 言われてソファーに腰を下ろす。

 ギンジも対面に腰を下ろすとベストのポケットから煙草を出した。

「そのスクラップ業者だが、潜砂船に乗って常に移動してる。だから具体的にどこにいるかは俺にもわからん。だが連絡を取る事なら可能だ。奴の乗る船の名は、旅人の安らぎ号。そして機体はブラックキャットだ。アキラ、お前の機体の名前は?」

「ラファルグ・ベータ」

「ラファルグ・ベータ、初期名か」

「パーツが揃ったら名前は変える」

「そうしろ。そのスクラップ業者ならアルティメットモジュールを所有している可能性がある。お前はお前の機体で奴の元に向かってもらう。ラファルグ・ベータの武装は?」

「ハンドガン六百発、ライフル千二百発、アイアンシールドとセイバーが一つずつ、垂直ミサイル二十四発。全て実弾だ」

「背面ユニットは」

「オーバーブースト、初期仕様だ」

「本当に初期機体だな。砂地適応は」

「してない」

「だろうな」

 煙草を胸いっぱいに吸いあげて、ゆっくりと吐き出す。ギンジの口から漏れる煙が細い筋となり、バニラの甘い香りと共に広がっていく。

「砂地適応はした方が良いが、海と違って必須じゃねぇ。もしも本当にアルカディアのアキラなら砂地適応なんて無くても充分に戦えるだろう。気がかりがあるとすれば、それはお前だよ。アキラ」

「私のどこに問題がある」

「まずお前自身の装備だ。見たところ武器は持っていないな」

「当然だろう。まっすぐここに来たのだからな」

「うれしいねぇ。だが裸でここに来たのは間違いだった。せめて護身用の武器は調達しておくべきだったな。でないとハイエナ共に襲われちまう。ちょっと待ってろ」

 ギンジは言って部屋を出る。しばらく経って帰ってきたと思ったら、大量の荷物を抱えて戻ってきた。

「まずは護身用の銃だ。オートマチックでも良かったが、これから行くのは砂漠だ。安定と信頼のリボルバーを使うべきだ。ジャムらねぇし、砂による故障もねぇ。その上メンテも簡単、デザインも良い」

「だがリロードには時間がかかる」

「うるせぇ! 練習しろ練習。対人ハクスラゲーだぞ、デスする訳にはいかんだろうが。さぁ選べ。脇下に下げるタイプか、腰に下げるタイプか」

「腰の方が慣れている。腰が良い」

「オーケイ。ならコイツを着けてみろ」

 ポーチの付いたホルスターを投げてよこす。重たい音を立てて横たわるホルスターを掴み上げ、手早く腰に巻き付ける。銀色のリボルバーを受け取ると、ホルスターに納めては素早く引き抜き構えた。

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