第4話

 強く頷く。姉の背中を見送って、パソコンの画面に向き直る。

 今までのアカウントでログインすればクランのみならず、フレンド達に通知が届いてしまう。追放されてしまったとは言え、フレンドの多くは同じクランのメンバーだ。ログインしてると知られたら、何か企んでいると警戒されてしまうかもしれない。加えて機体を失った以上、新しくアカウントを作り直すのがいいだろう。

 新規メールアドレスを取得してゲームを起動する。そして新規アカウントの作成に進む。利用規約やポリシーを流し見程度で同意していく。アカウント名に誕生日、パスワードを二度入力して作成すると、キャラクタークリエイトに移行した。

 デフォルトの少ないパーツを組み上げて一人の少年を組み上げる。本垢は時間を掛けて細かく調整したが、どのみち後から変更できる。名前はどうしようかと悩んだが、結局自分の本名の、アキラ、と入力して決定した。

 次に決めるのは自分の機体だ。

 既に組み上がっている機体から、自分の戦闘スタイルに合った機体を選ぶようにと指示が出る。

 バランス型、遠距離型、防御型、近接型、索敵型の五種類で、初期機体故にいずれも強そうには見えない。どうせパーツは交換するからと、バランス型を迷わず選ぶ。次にカラーリングだが、深く考えず黒にした。

 ラファルグ・ベータ。

 それが機体の名前であった。もちろんランダム生成されたデフォルトの名前であって、本編が始まってからでも変更できる。考えるのも面倒だったし、良い名前が浮かんだらその時変更しようと、ラファルグ・ベータのままで確定させた。

 無数の光が背後へ流れゆく。

 光は徐々に数を増し、眩むほどの光となる。視界の全てが光に包み込まれた時、機械じみた声が響いた。

「ようこそ、新たなるドライバー。リミットオーバーワールドへ」

 光が晴れる。

 右手元、左手元に操縦桿と、足元には左右にそれぞれ二つずつ合計四つのペダルがある。正面と、左右の巨大なモニターに、上下左右に小さなモニターがいくつも並ぶ。

 最も近い正面手前にはタッチパネルが備え付けられ、ラファルグ・ベータの名を表す。

 右手を見る。そして左手を見る。

 身体に合ったシートに着脱可能なベルトで固定され、身体がぶれないようになっている。タッチパネルが光を放ち、スタートアップのアイコンが現れた。

 タッチするよう、自己主張を繰り返す。

 アキラはアイコンをそのままに、右足、左足をペダルに置く。手のグローブを引っ張って左手、右手で操縦桿を軽く握る。二、三度、握り直すと、顔を上げタッチパネルを殴りつけた。

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