第3話 幼馴染である彼女の言動②
シーン4。昼休み。
僕は友達と一緒にお昼を食べようと誘われるが、沙夜の世話役がある為、お昼は沙夜と食べる習慣漬けが付いている。
「いただきます!」
「いただきます」
「いやー。身体を動かした後の飯は美味いね」
と、僕は無理に会話をする。
「はい。とても美味しいです」
「いつも誰が弁当を作っているの?」
「はい。いつも私の母が早起きをして家を出るタイミングで手渡しをしてくれます。中身は肉団子、卵焼き、春巻き……」
「うん。分かったから。見れば分かるよ」
沙夜はどこまでも律儀に説明口調になる。
「それでは私はデザートの林檎を食べようと思います」
弁当を食べ終えた沙夜は弁当とは別にタッパーを取り出しながら言う。
「デザート? 食べきれるの?」
「はい。大丈夫です。何故なら私の腹部に別離している部分があるからです」
別離? 僕は一瞬考えて別腹であることを解釈する。
「しかし、母からは誰かと正当な出し分をするように言付けられています」
「ん? Shareするってこと?」
「はい。よってあなたにこの林檎を差し上げることとします」
「ありがとう。有り難く貰っておくよ」
僕は一切れの林檎を取って口に運ぶ。
「うん。美味しいよ」
「お粗末さまでした」
シーン5。午後の授業。
「……で、あるからしてこのようになります」
社会の教師、飯塚は教師の中で怖いとされている。授業態度が悪いと何をさせられるか分からないほど緊張が絶えない授業だった。実際に授業中にスマホのゲームをしていた者は生徒指導室に連行された事例もある。
そんな時、僕は睡魔と戦っていた。午後になると眠くなるのはよくあること。しかし、実際に眠ることはできない。
まずい。瞼が重くのしかかっている。このままでは僕の名誉に反する。何か対策を打たねば鳴らぬ。僕は自分の頬っぺたを抓ったり、叩いたりして正気を取り戻そうと頑張る。だが、まるで通用しない。
「先程からあなたの様子がおかしいのですが、何かあったのですか?」
小声で沙夜は僕を気にかけた。席が真横だったので目に入ったようだ。
「いや、凄く眠くて眠りそうなんだ。なんとか目を覚ましたいんだが」
「はい。私はあなたが起きていられるように努力しましょう。では一つ。あなたが小学校六年の修学旅行の時、こんなことがあったのを記憶しています。女子の部屋に忍び込もうと仲間と共に行動したあなたは、先生に見つかりそうになり私の布団に潜り込んで……」
「起きた! もう目覚めたからそれ以上は言うな!」
「コラ! 夏宗! うるさいぞ。ちょっと生徒指導室に来い!」
結局、僕は授業の妨害をした罪として生徒指導室に連行されてしまった。
以上のことから分かっていただけただろうか。冬月沙夜が変わり者であると言うことが。
そんな訳で僕は毎回のように手を焼いている。しかし彼女は悪気があってやっている訳ではない。普通の人であればお手上げになるだろうが、小さい頃から傍で付き添っている僕としたらもう慣れっこである。この程度で世話役が務まらないようであれば長く続けることはできない。
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