第511話 J1開幕!! その2
「おいっ、一英(かずふさ)!最後の守備、あれは何だよ!!」と俺はロッカールームに帰るなり一英を怒鳴りつける。
なんだ、なんだ……とざわつくローカールーム。
「別に点取ったからいいじゃないですか?」と一英。
確かにこの日の一英は、後半の45分だけで1ゴール1アシスト。数字だけ見れば文句なしのMVP。
だが、無謀な単騎突入によってカウンターの起点になり後半二失点の原因でもある。
「オメーの所から二失点してんだよ、デコスケ!!」
「それ防ぐのがDFの役目だろ、神児」と平気でタメ口を叩いて来る、チョー生意気な4つ下の後輩。
ファーッ〇!!
まず、このクソガ〇に、敬語の大切さって奴を身に染みて分からせてやろうか、アアン!!
俺が頭から湯気を出しながら一英に詰め寄ろうとしたら、「まあ、まあ、冷静に、冷静に」と中に割った入ってくれた石丸さん。ちなみにこの石丸さん。明和の先輩で今日も右のCBで出てくれて俺とコンビを組んでくれた。あざーっす。
そこに、「一英ー初得点おめでとうー」とニッコニコの翔太がやって来た。
おいっ!翔太、今から一英に説教するんだから邪魔すんじゃねーぞ!アアン!!
「翔太君、ありがとー」と二人で手を合わせキャッキャウフウフ喜ぶ二人。
「シーズン初出場で1ゴール1アシストだなんて、やっぱりカズはもってるなー」と気の合う後輩にご満悦の翔太。
なぁ、翔太、気は済んだか?じゃあ、週末の多摩川クラシコに向けて、さっさと寮に帰って寝てろ!!
すると……「よう、ナイスシュート一英」と司。
「あっ、北里さん、ナイスパスありがとうございます」とペコリと頭を下げる一英。そういや、こいつの一点目、司のサイドチェンジからの得点だったな。ってことはアレか?司もデビュー戦いきなり1アシスト!?!?
ってか、ちょっと待て、おいっ、一英、テメーちゃんと敬語使えんじゃねーかよ、アアン!!
たしか俺には「ゴメン、神児。ボク小学生の時からスペインに行ってたから敬語とかよくわかんなんだよ」ってスペイン語と英語を交えながら言ったよな。ちょっと訳を聞こうじゃないか?
「ただ、最後の守備はちょっといただけないな。ボールを取られた者がファーストディフェンダーだぞ、一英」とコーチの顔で司。
「はい、わかりました。ただ、最後のプレーで足がちょっと攣ってしまって……」と殊勲な顔を見せる一英。
おい、お前、そういう顔、俺に一度でもしたことあったか。まあ、いいや、今から嫌って程させてやるからな!!(グヘヘヘヘ)
すると司がやってきて俺に耳打ちする。
「おいっ、神児。あんまり熱くなるな、一英には俺から言っとくから」と。
「お前が、いつも甘い顔ばっかしてっから、ヤツがつけ上がるんだよ!!今日だって、あいつ起点で二失点だぞ、二失点!!」
本来なら一英に言わなきゃならないことだが、とりあえず、ムカついてたんで司に言ってやった。しかも俺が守ってた右サイドでだ!!
「でも、1ゴール、1アシストだ」
「ぐぬぬぬぬー」
「しかも相手は高2だぞ、高2。こっちに来てからだって、高2の時なにしてたよ、おれら」と司。
「多摩っ子ランドでボール蹴ってたわ!!」知っとるわ、そんな事!!
「一英には俺から言っておくから、お前はさっさとシャワー浴びてマッサージ受けてこい。さっき監督から聞いたけど、週末、リーグ戦、お前も出すって言ってたぞ」
「ファッ、マジすかっ!!」
ってことは、アレだ。中二日で川崎と多摩川クラシコ!!
やべっ、川崎の分析さっさとしなくっちゃ。
「あのー……司」と俺は上司の顔を伺ってみると……
「分かってる、データー全部あっから、寮帰ったらみっちし仕込むからな」
「あざーっす」
念願かなってJリーガーに成れたはいいが、予想を遥かに上回る忙しさだ。
今は春休みだからいいけれど、大学行きながらなんて、出来るのか!?俺!!
すると……「15分後にミーティングやるから、それまで準備しとけー」とコーチの芦田さん。
「「「はいっ!!」」」
俺はロッカールームの奥にあるシャワー室に大急ぎで向かって行った。
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