第453話 トゥーロン国際 イングランド戦 後半 その4
いったん仕切り直して、イングランドのゴールキックでゲーム再開。
だが、その前にイングランドもこのタイミングで選手を交代。
するとなんという事でしょう、トップのワトキンスと右ウイングのレナードに替わってDFの選手を投入してきたのです。
その上イングランドは相変わらずゴール前でブロックを敷いたまま、どうやら2-1で逃げ切る気まんまんです。
俺も才君も腹をくくって最終ラインをイングランド陣地まで押し上げる。もう、どうなったって知らないんだからね!
もう展開はずーっと日本が攻めてイングランドが守る。
伊藤さんの縦の突破から、イングランドゴール前にクロス。ガシャガシャどっかーん!!
優斗の縦の突破から、イングランドゴール前にグラウンダー。ガシャガシャどっかーん!!
そのたびに、シュートを打つのだがゴールの予感が全く無い。
ええー、イングランドさんっていつからイタリア代表になったのですか?ってくらいのカテナチオ発動。
打てども打てども、ゴールに届かず。
そうこうしている内に、ついにイングランドのカウンターが発動した。
DFラインからグーリッシュにボールが入る。
よし、来い、グーリッシュ。
だが、日本の陣地に攻めてくるのはグーリッシュ一人のみ。あれれー。
しかも、単騎突入してくるのはいいけれど、どんどんと日本のゴールから離れ、日本のコーナー付近でボールキープする始末。ああー、もう、イライラする!!
だが、グーリッシュをサポートしようとさすがにイングランドの選手が数人やってくる。
やっとイングランドゴール前のブロックが無くなった。
時計を見る。残り時間あと2分!!
俺と才君と木田さんとなんと伊藤さんまでがやって来てグーリッシュを囲い込む。
伊藤さん、なんかすみません。
「早く!早く!!」と切羽詰まった感じで伊藤さん。
すると、グーリッシュの野郎はニヤッと笑って思いっきり俺の体にボールをぶつけてきやがった。
いったーい!もう!なにすんのー!!
そしてボールは無情にもタッチラインを割る。
イングランドボール。
時計を見る。後半39分。ああー、もう!!
するとグーリッシュは足の裏を使ってコネコネしながら、またニヤッと笑いやがった。
典型的ないじめっ子の顔だ。
くっ、来るのか?俺は一瞬身構える。
が、グーリッシュの野郎は一旦キックフェイントをしてから、また俺の太もも目掛けて思いっきりボールを蹴りやがった。
いったーいい!!
だが、俺は歯を食いしばってボールに体を投げ出す。
だって、よけたらタッチラインをまた割っちゃうからね。
すると、俺の執念が実ったのか、俺の下っ腹にドスンッと当たったボールはタッチライン上をコロコロと転がっていく。
げっ、げほ、ふほ……い、息ができん……けど、ボールを絶対に割らしてなるものか!!
俺はボールの上に体を覆いかぶさると、死に物狂いでボールをキープ。
すると敵味方が一緒くたになって俺を囲み、ボールを掻き出そうと必死に足を出す。
痛い、痛い、痛い、痛い。
誰だ、今、俺の事蹴ったやつは。
どうやら、ボールを掻き出そうと、誰かがどさくさに紛れて俺の横っ腹に蹴りを入れやがったのだ。
ふざけんなよ!!
だが、さすがにこれには審判が反則を取ってくれた。
納得いかなさそうなグーリッシュ。
おい、お前だよな、今、俺の事蹴ってたのは。
だが、グーリッシュは口笛を吹き、俺から目を逸らし知らぬ存ぜぬを決め込んでいる。
ぐぬぬぬぬー。
しかも、したたかにも、ボールの前に体を出して、FKの邪魔をしてくる。
審判さん、さっさとこの野郎どかしてください。
審判が注意をするも、グーリッシュは聞こえないふり。
時計を見る。後半40分。
さすがに審判がカードを出そうとする。
あっ、あっ、あっ、もう、いいです。時間がもったいないから。
ボールを蹴るコース上に相変わらずグーリッシュはいるが、俺はもうお構え無し。
えーい、もう、どうにでもなーれ。
俺は思いっきり助走を取ってからボールを蹴る。
ああー、もういいや!
ボールが当たろうが構うもんか!!
勝とうが負けようが、どうせ明後日には日本に帰るのだ!!
だが、グーリッシュ。貴様もこの大会はここで終わりだ。
決勝戦は、病院のベッドの上で一人寂しく観るがいい。
鳴瀬神児の心がついに暗黒面に落ちると、もう一人のダース神児が顔を出す。
「めいざふぉーすびーうぃずゆー!!(フォースのご加護があらんことを)」
俺はグーリッシュの顔面目掛け、フルスロットルのスカッドを放つ。
悪いな、グーリッシュ。お前を自由にプレーできなくするって……やっぱ、冗談じゃなくなっちまったわ。
フンぬっ!!
ジェームス グーリッシュの頭蓋骨よ砕け散れとばかり、俺は渾身の力でボールを蹴る。
すると、俺の殺気にさすがに身の危険を感じたのか、グーリッシュはまるでマトリックスのキアヌリーブスのように体を反らせボールをよけた。
クソッが、仕留め損ねた。
が、自軍コーナーキック付近からグーリッシュの顔面目掛けて放たれた俺のスカッドは、追い風にも乗ってグングンと伸びていく。
あれれー、一体どこまでいくんだろう……とボールの行き先を眺めていると、なんと、イングランドの右サイドで待ち構えていた司にドンピシャで通ってしまったのだ。
結果として60mを優に超えるスーパーロングサイドチェンジになった俺のスカッド。
瓢箪から駒ってこういうこと?
まさか、自軍コーナーキック付近から、60mをゆう超えるサイドチェンジをしてくるとは思いもしなかったイングランドの選手達。
しかも、グーリッシュをサポートするためにブロックを崩して人数を割いていたためにゴール前に人が足りてない。
あれれ、コレってもしかして。
すると、今まで散々優斗にスルーパスを通してたせいか、優斗にがっちりマークがつくと、優斗は気を利かせてイングランドディフェンダーを引き連れ縦に走り込む。
すると、なんという事でしょう。
イングランドのペナルティーエリア左45度の場所にポッカリとスペースが空いた。
そこは別名デルピエールゾーンと言われている場所で……
https://kakuyomu.jp/users/t-aizawa1971/news/16817330669011140462
そんな千載一遇のチャンスを司が見逃すわけもない。
北里司は伝家の宝刀を抜く。
しかもおまけに、今回は念には念を入れ、拓郎がイングランドゴール前でデコイジャンプ。
ついでに先程の失敗を教訓にいかし、しっかりとオフサイドラインも確認済。
そういうのさ、俺の時にやってくんねーかな。
北里司の右足のインフロントから放たれたボールは美しい弧を描きながらイングランドのゴール右隅に吸い込まれていく。
後のイングランドの英雄は、八王子の鯱に気を取られ、一歩も動けず。
トゥーロン国際選手権 2016 グループB 第4節
日本対イングランドは後半41分、北里司のゴールにより、2-2の同点となった。
https://kakuyomu.jp/users/t-aizawa1971/news/16817330669011180852
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます