第442話 プロフェッショナル 西野照義 お仕事の流儀 その2

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「いやー、魚介の旨味がたまらんでー、これ」と舌鼓を打ちながら優斗。


「これは、メバル……それとも、カサゴかな?」とブイヤベースの中に入っている魚を食べながら司。


「いやー、オマールエビなんて入れちゃっていいんですかねー」と南君。


「西野さんの優しさに、胃袋も感動してますわー」と俺。


「いやー、北里君だっけ?物知りだね君は。それは白カサゴだね。トゥーロンの港で今朝上がったものだよ」とニコニコの西野さん。


「どおりで、とっても新鮮で身もプリプリです。それに、このスープの味がたまりません」と司。


「そう言ってくれると、私も作り甲斐があるというものです」と西野さん。


 すると、「僕も早く、そのブイヤベース食べたいのねー」と一人、西野さん特製の激辛ペペロンチーノを食べる拓郎。


「「「うるせえっ!!」」」思わずみんなから声が上がった。



 みんなに怒鳴られながら、西野さん特製の激辛ペペロンチーノを白飯で掻っ込む拓郎。


https://kakuyomu.jp/users/t-aizawa1971/news/16817330668836133977


 実は西野さん、集合時間よりも早く食堂にやって来てうろちょろしていたこのアホたれが目に留まり、「やあ、君はいつも、ご飯をたくさん食べてくれる子だね」と声を掛け、のこのこと厨房に入れてしまったのだ。


 しかも、よせばいいのに、「ブイヤベースちょっと多めに作ってしまってね、良かったら味見しないかい」ととんでもない提案をしてしまったのだ。


 こんなの、強盗に刃物、いや、独裁者に核ミサイル渡すよりも質が悪い。


 調子の乗った拓郎は、あろうことか、ビュッフェのトレイに入れてあったブイヤベースを一人で全部喰っちまいやがった。


 お前さ、昨日の今日だぞ、ちょっと俺と一緒に脳神経外科の外来に行くか?ああん!!


 そんなわけで、急遽、めいめいが自由に取れるビッフェスタイルから、一人一皿ずつのスタイルに変更。


 しかも、悲しいことに、一人に一匹ずつのはずだった、オマールエビちゃんが、どういうことだか、1匹を4人で分ける始末。ちなみに俺は右の爪ね。ガッテム!!


 そんなわけで、二日連続の失態をしでかした拓郎はU-23日本代表の皆様の怒りを買い、キャプテンの円藤さんから、「オメーは、先に、ペペロンチーノと白米で胃袋満たしてから、みんなと一緒の食事しろ」とのお達しを告げられることになった。ヘヘ、ザマー。


 そんなわけで、拓郎は、ディナーの前に、トレイ山盛りのペペロンチーノと白米を必死に搔っ込んでます。


 その間、我々は、ゆっくりと味わいながら西野シェフのブイヤベースに舌鼓。あーおいしー。


 すると、西さん「やあ、みなさん、明日はイングランド戦ですので、イングランドの名物料理のローストビーフを食べて、みんなでイングランドをやっつけましょうー」と。


https://kakuyomu.jp/users/t-aizawa1971/news/16817330668836163022


「やったー」思わずみんな。


 それにつられて拓郎も「ヤッター」


 その途端、「テメーは目の前のパスタ全部喰ってからだよ!」と鬼の形相で円藤さん。おーこわ。


 しおしおになりながら、一人もふもふとペペロンチーノを食べる拓郎。


 しかし、私は、その瞬間を見逃さなかった。


 なんと、西野シェフは、みんなの目を盗むように、拓郎のペペロンチーノの山に、ローストビーフちゃんの端っこを紛れ込ませたのだ。


 うるうるとした目で西野シェフを見る拓郎。


 何も言わずにうんうんと頷く西野シェフ。


 まるで二人の姿は野良猫に餌付けをするおばあちゃんとその野良猫。


 ねぇ、西野シェフ、そういうの癖になるから止めといたほうがいいですよ!!

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