42.決勝戦その1。
女子の決勝戦が始まった。山本学園は第3中学がここまで勢いづいているのに驚いた様子だった。私立らしい旗とユニフォームが準備されておりまた観客の質が違う。メガホンにお揃いのタオルを持った客たちはさながらプロのスポーツ観戦にきているみたいだ。
山本学園は県1位をずっと走りつづけている中学でまさに王者の貫禄があった。しかも選手の女のコたちは目指す所が山本学園高等部での勝ちである。中学生から一皮むけた高校での勝利を狙っているスタメンにとっては地区予選は勝って当たり前、さらに上のステージのための踏み台でしかないという認識だ。
格がちがう。選手同士対面してお辞儀をした瞬間に凛は悟った。この子たち目の色が違うもの。今までのような勝負のかけ方じゃ負けちゃう。凛は山中でヒグマに出会ってしまったかのような恐ろしさを感じた。
序盤から。山本学園はスクリーンを多発してきた。第3中学のディフェンスのシーン。4番がドリブルしている。5番が4番についていた奏歩の背後にスッと現れた。5番はそのまま壁になって奏歩を足止め。4番はドリブルで奏歩をぬきさり、ワンモーションでシュート。敵ながら小気味いいくらいに、スパっとはいる。スウィッシュ。リングにあたらずに吸い込まれるようなシュートであった。
凛は5番についていた。しかし目の前でおこなわれたスクリーンがあまりにも見事でフォローに行けなかった。
「ごめん奏歩!」
叫ぶ凛。今のはあたしの責任だ。ディフェンス、スイッチしなきゃいけなかったのに。初っぱなからやられちゃった。
「いいよ、取り返そう」
奏歩が答える。もしかして凛に謝られたの始めてじゃないか? と奏歩は思った。それはそれで気持ち悪いもんだ、あのプライドの高い凛が、ねえ。私たち、チームっぽくなってきたね。
ニシシと奏歩は笑った。強い敵だとワクワクするじゃん。よし、いこう!
山本学園がまたスクリーンを用いてきた。特技のようだ。凛は既視感を味わっていた。奏歩の背後に入り込む5番。5番を壁にして奏歩を抜く4番。よし。凛はわかってきた。ここで、4番へスイッチすればいい。
凛は奏歩とディフェンスを交代して4番を足止めした。だが敵は次の次の手を打ってきた。5番が奏歩を背中で抑えて開く。面をとる。5番の前にシュートにいけるくらいのスペースがあき、4番からパスが回った。
やられた。凛がそう思った瞬間、シュートが打たれた。スパッ! 決めてくる。流石山本学園のオフェンスはとんとんと、リズムよく決まる。まるで第3中の男子みたいだ。
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