30.OG。練習試合。
ゆったりと8月が終わった。凛は毎日好きなだけゴロゴロしてそろそろ活動してもいいかなと思い始めていた。
9月が始まる。気持ちも新たに部活へ臨める。規則正しい生活も悪くはないわ、凛が気を引き締めていたのとは裏腹に、親友のるみは浮かない顔だった。
「どうしたの?」凛が気遣う。
「私、テニス部辞めたんだ。」るみは登校中に切り出した。
「先輩のワンマンプレーにもう辟易。私だってあっついなか突っ立ってるだけじゃないもの。うまくなりたいのに。すごく見下されてさ。もうペア競技はやりたくないの。」
「あらら。ついに堪忍袋の緒が切れたか。」
凛はうすうすこうなるだろうと察していた。それほどるみからのSOSや愚痴は多かった。
「ねえ凛、バスケ部廃部になったって?」
「え?」
「なんでも、顧問のやりかたに生徒がついていけないからストライキしたって」
「半分合ってて半分間違ってる」
凛は説明した。たしかに8月中1日も体育館にこないとなると他の部活からはストライキだと言われるはずだ。だが、廃部ではない。むしろ心機一転やる気まんまんである。
「それをきいて安心したわ」るみはホッとしていた。
「だって私バスケ部に入りたい。凛と一緒にバスケやりたい」
凛にとっては心強い申し出だった。親友と一緒なら部活も今以上に充実するはず。
「一緒にやろう」凛は浮足立って教室にはいった。
「りーんーちゃん。」
「げ、一華さん。それにナノさん。」
「えへ。一年の教室まで遊びにきちゃった。」
「先輩。怖いんですから。みんな怯えてますよ。」
「そう?気分いいわ。なんてね。凛ちゃんも言うようになったじゃん。」
「何のご用ですか?」
「謹慎があけたからお祝いとご挨拶よ。」
「そんなチンピラみたいな。」
「ウソウソ。あのね、私たちOGが練習試合をしてあげるっていうお知らせにきたの。」
「え、先輩とですか?」
「そうよ。入部したてのころ以来よね。強くなったって聞いたわ。ほんとかしら?試してみましょ。」
「先輩には及びませんよ。」
「男子のBチームに勝ったってきいたの。それで居ても立っても居られなくて。」
「そうなんだ。」
「これは村上先生の案でもあるから絶対よ。」
「ひええ。」
部活動の時間がきた。三年はお手製のあみだクジを用意していた。
チーム分けをした結果はAチーム、一華、ナノ、唯、凛、雄。Bチーム、有佐、奏歩、信子、麻帆、そして飛び入り参加のるみ、となった。
凛は奏歩を敵に迎えて張り切っていた。久しぶりに勝ってやろうじゃない。そう思っていた。ゲームはAチーム対Bチームの10分かける2クォーター。
試合開始のホイッスル。ジャンプボールは雄が勝利した。ナノがボール運びだ。一華と凛はフォローに回った。ナノが真ん中に突っ込んだ。急いではけて合わせる他のメンバー。
だがナノはBチームの信子と麻帆に囲まれボールはルーズボールへ。それを拾ったのがBチームるみだった。
「ヘイ、パス」奏歩が叫ぶ。るみはできる限りの力で投げた。見事パスは通って奏歩の独擅場。安定したドリブルとレイアップシュートでBチームに2点が入った。
「仕方ないよ。切り替えていこう」一華が声をかけた。
「唯、センタープレーでガツンといこう!」唯の取り巻きの観客たちが黄色い声で応援する。
「唯さあん! ふぁいとお」
だが、奏歩のこのプレーで、Bチームは波に乗ることになる。
凛がボールを持ちセンターの唯へとバウンドパス。応援の女子たちのプレッシャーから、唯へパスを回さないといけないと感じたためだ。
しかし信子はそれを見越していてディフェンスで1枚の岩壁となった。信子の身長はいつの間にやら唯をぬいており、唯はボールを持ったまま立ち往生。
仕方なくぽろりとこぼすようにして凛へボールを戻したが、そのすきをBチーム有佐がついた。
「有佐がもーらいっ」
唯にそう言って有佐はまたもや走っていた奏歩へとパス。唯のファンからブーイングがあがる。奏歩がレイアップシュートを決めるのをAチームは誰も止められなかった。
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