13.凛。綾瀬くん。
奏歩と凛とは言いたい放題して、互いに抱きあっていたうっぷんがほんの少しだが晴れた。凛は仲間をチームワークを大切にするといいつつ凛自身が自己中心的だった、多少は自分の態度が悪かったと反省の心を持てたし、奏歩はいじめの事情を先生の前でぶちまけて信子と雄から謝って貰えた事には満足していた。先生の指摘通りこれからは業務連絡くらいは話そうと両者思っていた。
「なんで。」
凛は帰り道奏歩に追いついて聞いてみた。もともと家の方角は同じなのだ。
「なんでボールの扱いは器用なのにそんなにシュートが下手くそなの?」
それは前々から思っていた疑問だった。
「だって公園にはバスケットゴールがないもの。身長だってちびだし、練習したくてもできなかったの。」
「じゃあ今日この後自販機でジュースおごってくれたらシュートのコツ教えてあげよっか。」
「またいじめ? 私んち貧乏なの知ってるでしょ。」
「まあね。ちょっといじめた。」
「最悪ー。」
だが奏歩は確かにシュートのコツを知りたそうにしていた。それが叶えば奏歩は戦力として有望どころではない。
「100円のならいいよ。120円のは駄目。」
凛はニシシと笑顔を見せた。通りすがりの自販機で奏歩は100円を差しだした。凛が選んだのはアイスミルクティー。疲れた体によく染み渡る。
「シュートはね、ゴールの四角いラインの斜め45度を狙えばいいのよ。」
凛は練習で得た知識を披露した。自慢顔だ。
「なに、それだけ?知ってるし。」
最悪だと奏歩。100円返してと奏歩。嫌だと凛。揉めているうちになんと男バスの綾瀬くんの姿が見えた。ヤバいと凛。奏歩は平気な顔をしている。そしてあり得ない提案をしてきた。
「綾瀬くんが好きなんでしょ? 電話番号とか聞いてあげよっか?。」
「無理無理無理、やめてよねそういうの。」
「だって結局いじめの原因は嫉妬だったんでしょ? 凛と付き合っちゃえばいいじゃん。」
「そんな抜け駆けしたらクラスの女子に殺される。」
「ほら来たよ。行っちゃうよ。嫌なの?」
「そりゃ知りたいけど。」
「じゃあ私に感謝しなよ。貸しが一個できたからね。」
奏歩は自販機の影からさりげなくでていきばったり偶然という風に綾瀬くんに対面した。
「よっ!」
気軽に手をあげる綾瀬くん。
「お疲れ。どう?男バスは。」
奏歩も気軽に言った。
「やっぱ先輩はつえーよ。さすが県大会優勝常連だね。だけど俺も食いついて見せる。」
「強気だね。がんば。ところでさ綾瀬くんと友達になりたいって女の子が居るんだけど。」
「あ、わりい。俺マネージャーの三雲さんと付き合うことにしたから。」
「そーなの? 残念だなあ。女子バスケ部員として情報交換したがってたのに。」
「女バスの子なの?」
「うん。」
「浮気は良くないからなあどうしようか。」
「メールするくらいなら浮気じゃないよ。平気平気。」
「てか誰?」
「凛だよ。同じ小学校だったじゃん。」
「あー、あの子ね。」
「アドレス教えてよ。」
「まあ、いいかな別に。だけど一応三雲さんには内緒にしてな。」
「了解。」
半ば強引にアドレスを聞くと奏歩はニシシと凛の真似をして笑いながら戻ってきた。ミルクティーの味が薄い。凛は思った。
そっか三雲さんともう付き合ってんだあ。すごく今すごく胸が痛い。せっかく教わったメールだがメッセージを送ることは無いなと凛は思った。
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