12.凛。対決。
村上先生はまさかの事を言い出した。え? 腹筋100回とか背筋とかじゃないの? 凛は朦朧とする意識の中、村上先生の声を聞いていた。
「奏歩のプレーについてです。……どうにかしてください」
村上先生は一字一句読み上げた。罰ゲームにも程がある。奏歩は辞めて欲しいという文章のところで青い顔になった。
「以上が凛の本音です。奏歩、言いたいことはありますか?」
「私は悪くない!」
奏歩が叫んだ。声があまりに大きくて男子バスケ部員たちが一瞬こちらをみた程だ。
「凛は私をいじめている。なんで私が退部しなきゃいけないの? 被害者なのに。皆もそうだ。私が口をきかないんじゃない。無視されてるだけよ。」
雄が口を開いた。
「奏歩、ごめんね。ボールの件は知っていたし無視してたのは女子みんなだよ。私だって悪かった。」
信子は泣いていた。何も言わなかった。凛は先生のやり方に腹がたったが奏歩の言い分を聞く気になったのは初めてだった。
「私は皆知ってるけど貧乏なんだ。だからといって無視される覚えはないし嫌な事をした訳じゃない。スポーツが好きなだけ。」
「でも男子に色目使ってんじゃん」
凛は反論した。
「は?色目って何。女子が仲間外れにするから男子に仲間にしてもらってるのよ。」
「逆でしょ。奏歩が男子とばかり遊ぶから女子は嫌うんだよ。」
「女子は教室で愚痴ばっかりで盛り上がるから私は嫌な気分だし一緒にぐちぐち言いたくないの」
「そんな風に皆を見てるから上から目線だって言うの。奏歩だって私を嫌ってるでしょ。」
「当たり前よ。大嫌い。」
「ほら。」
「じゃあ凛が私を嫌う訳を教えてあげる。凛は綾瀬くんが好きで嫉妬してるのよ。」
「はあ? ここでそういう事言う神経があり得ない。」
「はいはいそこまで。」
聞いていた村上先生が割って入った。
「お互い嫌い合ってるのがよくよく分かったわ。喧嘩両成敗したいところね。いい? これからは普通に話しなさい。別に親友になれなんて言わないわよ。同じチームとしてどうやってうまくやっていくか考えなさい。いじめの根は深いわね。凛が奏歩と話すようになれば他の女子から凛がハブられるかもしれない。でも同じバスケ部でしょ。どうせ体力的にしんどくて苦しいんだから精神的には励ましあったほうがましよ。損得勘定できるわよね?もう甘ったれた小学生のおちびちゃんじゃないのよ。好き嫌いなんて言ってたら世の中渡っていけないの、わかる?」
それから村上先生は信子に向き合った。
「あなたは気が弱すぎよ。どうして泣いてるの、周りに気を使って奏歩と話さなかった罪はあなたも同罪。泣けばなんでも許されるなんて思わないで。ほら何か言うべき事があるわよね。」
信子はしゃくりあげながら奏歩に向き合った。
「ごめんなさい。奏歩ちゃんの悪口を聞いていたの。何も否定しなかった。凛に言われたの、無視しなって。本当にごめんなさい。」
「いいよ。信子ははな垂れだって知ってたし。味方になって欲しかった訳じゃない。私は一人で強くなりたい。信子みたいな弱虫はいらない。」
「違うでしょ奏歩。信子もちゃんとチームメイトなのよ。」
村上先生がたしなめた。奏歩は少しすっきりしたのか目尻を緩めた。
「わかった。謝ってくれてありがと信子。雄も。麻帆さんは関係ないごたごたに巻き込んですみません。凛の事は許さないけど、そっちが話したいなら聞いてあげてもいいよ。」
奏歩は相変わらず頑固だった。
「じゃあ話すわ。奏歩シュートセンス無さすぎ。」
「余計なお世話。あんたも根性無さすぎ。これくらいでぶっ倒れるんじゃないよ。」
「うるさい。そういうところ上から目線。イラつくわ。」
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