7.村上先生。贔屓
「先生、私辞めたいです」
凛は顧問部屋に入ってそう切り出した。
「入部したのは三年の圧力に負けたから。今の試合でも何もできなかったし。バスケに興味なんてなかったんです」
村上先生はいつになく不機嫌で凛の話をじっと聞いていた。
「あなた、奏歩のボールにイタズラしたそうね」
凛はギクッとした。告げ口したのは奏歩だ。もしくは信子。やっぱり先生の耳に入っていたのだ。
「辞めさせないわ。絶対に。この学校ではいじめは許されません。特に私と校長は絶対に許しません。もしバスケ部をやめるならこの事実を職員室に公表し、凛、あなたこそ学校に来れなくしてやるわ。不登校に追い込むわよ。職員一同全力でね。それくらい加害者として糾弾します。そうしないのはバスケ部でしごいてやるつもりなのよ。いじめの責任をとらせます。そして奏歩と和解させてみせます。だから辞めるのは許しません」
むちゃくちゃな理屈だ。だが弱みを握られている。私が学校に来れなくするって? なにそれ怖い。教師が生徒を脅していいわけ? 凛は怯えた。
「そんな。横暴です」
「じゃあいじめの事を校長に報告します」
「いや、ダメ。やめて。悪かったって反省してますから」
「そんな生半可な言葉はいらないわ。あのボールがどんなに宝物か。奏歩がクラスに馴染めなくて辛いかをわかってないのよあなたは」
「そんな」
「バスケを続けなさい」
「……はい」
新任の村上先生は絶対に奏歩を贔屓している。奏歩の普段の態度を知っている先生なら、こんな贔屓はしないはず。自分の意地悪は棚にあげ、このときから凛にとっての敵は2人になった。
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