第1話

 ◇


 わたしは誕生しました。

 百億の世界の片隅にてでございます。

 西暦一九八三年八月二三日いんうんたる猛暑であったのかあいたいたる曇天であったのか新潟県長岡市の産婦人科にて豪放らいらくなる母親のしんしようたんの結句一九時一五分にほうはいとして誕生致しました。かんなんしんの難産のゆゑにさいたる脳髄にしようがいじやつされるかもしれないとせいかくなる担当医は母親に告知したようですがぎようこうにももうまいなるわたしはめいちようたる先天的後天的しようがいにもひようされずかくしやくとして成長してゆきました。きゆうていたいりよの家族はたる零細企業たる鉄工所の取締役であったしゆんたる祖父鉄工所の事務をしていたしゆんがいなる祖母鉄工所の専務をしていた荘厳なる父親鉄工所の手伝いをしていたらいらくなる母親の四人でございました。しゆんがいなる祖母とらいらくなる母親が愚鈍なるわたしをともにちようあいしてくださりちようあいするがゆゑにたいしたことから豪放なる母親はわたしを木造二階建ての一室に幽閉しからわたしの人格が陰陰滅滅としていったようでございます。六親眷族に溺愛されたわたしは仏教系のみどり幼稚園に入園してもきんじやくやくたるおともだちとなかよくなれずいよいよ陰鬱なる少年として市立神町小学校に入学致しました。しよくそうぜんたる小学校ではTVゲームを一緒にするようなばくぎやく友も幾人かできましておよそ同様に市立神西中学校に進学したため小中学校時代はいささかしゆんぷうたいとうとしておりました。めいちようたる問題は中学三年じやつされひつきよう難産による脳髄の圧迫が原因かはしつかいわかりませぬが軽度の統合失調症を発病したらしく優秀であった学業の成績もちようらくし長岡市内の私立の三流高校に進学することとなりました。ひつせい最初となる恋人ができたもののごうの三箇月であんたんたるけつべつをむかえ特別進学科でのきよくべんにもろうこんぱいし複雑怪奇なる統合失調症を悪化させて高校二年に自主退学することとなりました。

 わたしは『ひきこもり』となりました。

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