第56話

「それで話とは何でしょうか?」


「実はね。国王様に他国から依頼が来ているらしくてね・・・」


「もったいぶらずに単刀直入にお願いします」


話を促したのは領主様なのにかなり慌てている。これは良くない相談事だと思った。


「ポーションを作るための薬草が絶滅した地域がある。それも国内外問わず」


「・・・・・・」


「君が無言になるのもよくわかる。私も聞いた時には耳を疑ったしね。だけどポーションが開発されて切り傷程度ならすぐに治療できるようになってしまった今、薬草の価値はすごく高いのだよ」


「ならなぜ管理できないのですかねぇ」


「ひぃ」


おっと領主様に八つ当たりしてしまったようだ。現実に戻り薬草の運搬について考える。


「薬草を運搬するにあたっては専用の馬車を作り、適切な管理をするしかありませんね」


「その。種なんかはないのかい?」


「あるとは思いますけれど、私も育成して数年しかたっていませんからね。しかも株分けして増やしているわけですし。薬草が無くなった地域がどれほどあるかは分かりませんが一世代は回復するまでにかかるのではないでしょうか?」


「そこを何とかできないか?」


「領主様も言っていたじゃないですか。需要が高すぎるのですよ。この領地内でさえ薬草園を作って傷の具合でポーションの利用の有無を判断しているのですよ。おそらく一番薬草の栽培で成功しているこの領地で」


「馬車はこちらで何とかする。国王の方も何とか抑える。薬草に関してだけでいいから力を貸してもらえんか?」


「薬草だけでは駄目でしょう。治療方法も各地に広めないと。一番は結界魔法の応用を広めることなのですけれどこういう時に限って役に立ちそうな魔法師ギルドはありませんし。変に欲を出さなければここで大儲けできたものを・・・」


私と領主様は遠くを眺め始める。数分現実逃避したところで私から話し出す。


「治療を行うものは、治療院の医師から他の領地に行ってもいいという人間を探すしかないでしょうね。この好景気の領地の他に行ってもいいという変わり者を・・・」


「それは・・・。領地側に金を出させるしかないな」


「無理やり行おうものなら私が制裁を与えますからね。ウルフェンに乗っていけば馬車の数倍は早く到着できるのですから」


「それは洒落にならん。こちらから重要人物として扱うように厳重注意しておく」


「あとは薬草の育成方法を広めるしかありませんね。別に独占したかったわけではありませんがこのような形で広めることになるのは遺憾です」


「今はこれ以上その話をするのは嫌なので案がまとまり次第呼んでください。私は一旦屋敷に帰り休みます」


「ああ。ご苦労だった。申し訳ないが世界樹の件も報告をあげるようにしてくれ。時間はいくらかかっても構わん」


「はい。それでは失礼します」


屋敷に戻った私はお風呂に入ることにした。雇った使用人に頼んでお風呂を入れてもらう。少しの間お茶をしてお風呂が入った連絡を受けたのでお風呂に向かうと、世界樹のことを話していた小さな妖精がお風呂を堪能していた。


混乱した頭で別にいいかと判断した私は一緒にお風呂に入る。すると双子の妖精が話しかけてきた。

「これはいい物なのです」


「世界樹の近くにも作るのです」


「それは無理じゃないかな?魔物も出るしお湯の準備できる?」


「できないのです」


「なら毎日ここに来るのです」


「私が使っている時限定で他の人には見つからないようにね」


「この家の裏手にある薬草を世界樹の近くに植えるのです」


「あれには回復の魔力がたまっているから世界樹の活性の役に立つのです」


「植えると薬草にはどんなことが起こるの?」


「それはやってみないと分からないのです」


「最悪の場合は薬草の力を世界樹が吸収して枯れるのです」


これも薬草を増やさなければいけない案件だなぁと心がおられたアリシアだった。

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