第53話
ホーンラビットの養殖場と街門前の戦闘は終わったが畑の方からはまだ戦闘の音が聞こえてくる。私は指笛を吹きウルフェンとリルを呼び寄せる。
ウルフェンは変わらない毛並みだったがリルはゴブリンの血で真っ赤に汚れていた。あとで丹念に洗ってあげないとなぁなんて考えつつも指示を出す。
「まだ畑の方で戦闘が終わっていないみたいなの。今から救援に向かってくれる?」
「わふ。わふわふ。わふ」
ウルフェンがそう語りかけると二匹は畑の方に駆けていった。
一方そのころ畑での戦闘の指示を出しているギルドマスターは冒険者の練度の低さに嘆いていた。ゴブリン一匹相手に冒険者二人から三人で相手をしているのだ。ランクの高い冒険者は兵士に引き抜かれたとはいえこれでは有事の際に冒険者は必要とされないだろう。
そんなことを考えている最中に二匹のウルフがこちらに駆け込んできては、ゴブリンを瞬殺していく。これには冒険者も呆気に取られていた。
戦闘がゴブリン優勢だったものが冒険者優勢に変わった途端、ゴブリンは森の中へ引き返し始めた。冒険者たちは興奮しているためそれに追い打ちをかけようと追いかける。
「待て、追い打ちの前に体制を立て直せ」
ギルドマスターのその声を聴いて立ち止まったのは半数。それ以外の冒険者は森へと突っ込んでいった。
ギルドマスターは残った冒険者で隊列を整え戦線を上げていく。その道中には追いかけていった冒険者の死体は見受けられない。もともと食料確保のために襲撃をかけてきたのであろうゴブリンが死体を持ち帰っているのだろうとギルドマスターは考えていた。
畑の防衛に当たった冒険者たちの戦列が森と畑の中間地点に差し掛かった時、森の奥の方から狼の遠吠えが聞こえてきた。
これはあらかじめ親玉を発見し、討伐が難しい場合にウルフェン達に命じていた合図だ。つまり森の奥には今のウルフェン達には倒すのが困難なゴブリン種がいるか、はたまた多くのゴブリンがいて親玉を相手にできない状態だということが考えられる。
ウルフェン達には遠吠えを上げた後は退却の指示を出していたので、すぐに私の元に帰ってきた。私は兵士を半分選別し、状況を確認するためにウルフェンに道を案内してもらう。
三十分程かけて歩いていくとそこは崖の陰になっており向こうからこちらを視認するのが難しい立地となっていた。そこをのぞき込むと大型のゴブリン。おそらくキング種を思われるのが三体。その他にもジェネラルが多数存在していた。
私たちはゴブリンにばれないようにその場を退却。その道中で冒険者を運んでいるゴブリンに遭遇した。私がインパクトの魔法で運んでいるゴブリン達を一撃で葬り去り冒険者たちの容態を確認するが全員が息絶えていた。
これはギルドマスターに話を聞かなければならないと思い、私たちは畑の防衛地区へ向かう。
ギルドマスターへ冒険者たちの死体を見せた。すると。
「その者たちは私の待機命令を無視して逃げるゴブリンへ追撃を書けた者たちです」
悲痛な顔でそう告げるギルドマスターには冒険者たちの指揮系統をしっかりわきまえさせるように厳命するにとどめた。
私は兵士長とギルドマスターの三人でこれからどうするべきかを話し合うことにした。そこで目を覚ます領主代理。かなり怒っていて私と兵士長を謹慎処分にすると言い出した。
「では、領主代理が今の状況を打開する術を持っているということでよろしいですか?」
「そんなもん、この領都を防衛に専念し、領主様が兵士を連れて帰ってくるのを待つに決まっているだろう」
「その間の食料やホーンラビットの養殖場はどうするのですか?」
そう問いかけた瞬間、領主代理の顔は青くなった。ころころと顔を色が変わり忙しい人だ。
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