第51話
結局、使い切れないお金は貴族街の家を買い漁りいろいろな実験施設を建てることで半分ほど使い切った。そのほとんどが領の収入となってしまったが致し方ない。
そうしてお金を使うことに集中していること半年、私は十歳になった。変わったことは特にないのだが・・・。
しかし、街と言うか国と言うかその単位で変化は大きくあった。まず冒険者ギルドでの身分証の発行を停止し、各街で住民登録を義務付けることとなった。冒険者ギルドで発行されているカードは一応使用できるが、扱いは流民となり冒険者ギルド以外から仕事を斡旋してもらうことが難しくなる。
エラデエーレ領では、ランクの高かった冒険者は兵士として住民登録をして、中ランクの者は商人の護衛として別の街を渡り歩いているらしい。低ランクで仕事をどうしても探さなければ生きていけなかった者は領主様が孤児院を作りそこで生きていけるようになった。
それで冒険者ギルドが立ちいかなくなったかと言われればそうではなく、ウルフェンが魔の森の浅瀬の魔物を定期的に間引いているおかげで薬草や薪などを集める依頼が増えた。この街限定ではあるが冒険者は実力主義ではなくなり街の雑用係として気ままに生きている。そんな調子で街の一大事の時に戦力になるのかは不安が残るところではあるが・・・。
次に魔法師ギルドである。街としては勝手にいなくなっていたが、結局国も魔法師ギルドを排斥する流れとなった。今まで持ちこたえていたのも王都の魔法師ギルドのギルドマスターが常識的な人物だったからなのだが、その人も王国民となって魔法師ギルドを退職してしまった。そうなってしまうと目ぼしい結果を残していなかった魔法師ギルドはたちまち権威を失い、誰からも見向きもされなくなってしまった。
この二つのギルドの勢いが失われたのとは逆に商業ギルドは大きく立場を上げることとなった。魔の森から魔物があふれるスタンピートが減ったおかげで王国内における食料生産が大きく上昇。その食料を他の国へ売りさばくことで大きく利益を上げていた。また、特許技術の費用も問題なく支払われている。まだ新しい技術であふれているとは言えないがそうなってもおかしくない状業ができていると言える。
それはさておき
今日もウルフェンの狩りに付き合い、魔の森の浅瀬に来ていたのだがウルフェンが銀色の毛並みを持つウルフを連れてきた。そのウルフはいたるところに傷があり血が足りていないのかふらついている。私の目の前で倒れた銀色のウルフを甲斐甲斐しく世話をしているウルフェンを見ると助けてあげなければならない気持ちになった。
人間の治療と同じように傷口を塞ぎ、ポーションをかけて傷を治療していく。全ての傷を治療し終わっても銀色のウルフは目を覚まさない。仕方がないので兵士に頼み私の屋敷まで運んでもらった。
明け方、何やら外が騒がしくて目が覚めた。外に向かうとウルフェンと銀色のウルフが仲良く屋敷に入ってきているところだった。ウルフェンは足を洗ってから屋敷に入るのが日課になっていたが銀色のウルフは足が汚れていた。それを掃除しているメイドたちの悲痛な叫びが騒がしくなっていて原因だったようだ。
「ウルフェン。待て」
そう言うとウルフェンは止まる。一緒に銀色のウルフも立ち止まる。私はメイドからタオルを受け取ると銀色のウルフの足を拭いてあげた。銀色のウルフもなされるままで暴れるようなことはなかった。
「いつまでも銀色のウルフでは味気ないわね。あなたの名前はリルよ。フェンリルから文字ってリル」
何度か名前を呼んでみたが何の反応も見せない。ウルフェンとリルは人目もはばからずいちゃいちゃしている。リルも何度も名前を呼んでいれば自分のことと把握してくれるだろう。
こうして屋敷には新しくウルフの従魔が増えた。
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