第49話

冒険者ギルドで会議をした翌日、珍しく予定のなかった私はウルフェンと一緒に魔の森の浅瀬で狩りを行うことにした。


ウルフェンはこの一年半で大型犬並みに大きくなり、毛皮は水色に変化した。普通のウルフ種だと思っていた私は何かの病気かと心配になったが、毎日薬草に水やりをしているし鏡写しの儀を行っても何の違和感もなかったことからこういう種なのだと思うことにした。


馬車で森に向かうために玄関へ行くと、執事から言伝があった。どうやら昨日の会議について私の意見を聞きたいらしく、領主の館まで来て欲しいらしい。


こういわれては拒否権のない私は馬車に乗り込み領主の館へ向かった。ちなみにウルフェンは森に行く気満々で説得しても無駄だったため一緒に馬車に乗り込んでいる。


馬車の中でウルフェンの毛をモフモフしていると、あっという間に領主の館へたどり着いた。もともと貴族街の中を移動しているだけなのでそんなに距離があるわけではないのだが・・・。


ウルフェンに馬車でお留守番を言いつけたのだが、力ずくで馬車から降りてしまった。いつもは聞き訳が良いのだが。仕方がないので一緒に執務室まで行くと領主様はソファで紅茶を飲んでいた。


「急に呼び出してすまないな。ん。そのウルフはウルフェンか?思ったよりも大きいのだな」


「すみません。今日は森に狩りに行く予定だったので我慢できずについてきちゃいました」


「執務室を荒らさないのであれば構わん。それで早速ではあるが昨日の会議で思ったことは何かなかったか?」


「まず冒険者の仕事ですが商人ギルドの護衛依頼はないのでしょうか?毛皮を売りに出しているのであれば護衛は必要な仕事だと思うのですが」


「確かに護衛の依頼はある。しかし毛皮の持ち出しと食料、主に穀物だな。その輸入を行商人が行っている。そして、街に冒険者があふれている現状、往復で契約している行商人がほとんどらしいのだ。まあ街に来ている冒険者はランクが低く信用が低いため護衛を引き受けるのは困難だろうがな」


「それでは領営の畑でも作るのはどうでしょうか。この街に畑を作るとなるとどうしても魔の森からの魔物を警戒しなければいけません。それを冒険者に任せるのと、農業をする人手を街に入ることのできない人間から選別すればいいかと」


「それしかないか。せっかくたまった資金がどんどん流れていくな」


「お金は貯めこんでいても仕方がないと思いますよ。もちろん緊急時の資金は残すべきですがあまりため込むと市場のお金が無くなってしまいます」


その話を聞いた時領主様は目から鱗と言った様子であったが、それもそうかと納得していた。


「なら、そのような形で財務担当と話を進める。急に呼び出してすまなかったな。あとはこちらでまとめておくから戻ってよいぞ」


領主様がそう話した瞬間、ウルフェンが私の近くにより頬ずりし始めた。その様子を見て領主様は笑っていた。


領主の館を出て、魔の森へ向かうと街の街門で兵士が数十人お供としてついてきた。兵士たちはそれぞれ大きな台車を持ってきている。それは、今までウルフェンの狩に参加した者たちであり、初めは私の護衛としてついてきていたのだがウルフェンの狩る魔物の量の多さに街への運び手として変わり果てた兵士たちの姿だった。


ウルフェンの狩りの方法は水魔法で呼吸を止めるという方法であり、傷がなく上質な素材が大量にとれる。この日も大量の魔物を水魔法で仕留め、兵士たちは肉の一部をその場で焼いては食べていた。


これは休憩などではなく、肉の匂いにつられてきた魔物をウルフェンが狩るための餌だ。魔の森の浅瀬にはウルフェンの相手になる魔物はおらず、ビックボアやグリズリーと言った中腹部に現れる魔物ですら相手にならなかった。


こうして大量の魔物の素材を街へ持ち帰り、ウルフェンの狩りを終えた。

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