第43話
私が放ったインパクトの魔法は何か鈍い音を立てた。しかし、若い男は平然としており魔法の詠唱をしている。その詠唱が終わる前に次はあごを狙ってインパクトを放つと次はきれいに命中し男の意識を刈り取った。
私は兵士を呼んで、この男を縛り上げてもらおうかと思ったが、私の連れていた兵士以外は無力化されていたため手が足りない。仕方がないので男の口に羊皮紙を詰め込んでさらに口を結界で覆うことで魔法の詠唱ができないようにした。ついでに太めのロープ状にした結界で手を背中で縛り上げて犯人を現行犯逮捕した。ちなみに腹に放ったインパクトが効いていなかったのは腹に鉄板を仕込んでいたからだった。
私は男を見張り、兵士たちが衛兵を連れてくるのを待った。十五分程で衛兵を連れてきた兵士は。
「お嬢様一人でこの状況を作り出した犯人に向かって行かないでください」
とのお叱りを受けた。私は右から左へと聞き流していたが・・・。
屋敷の使用人たちは後頭部を殴られて気絶していたようで重傷者はいなかったが怪我をしたものがいたためポーションを作り治療しておいた。
次の日、朝早くに領主様に呼び出しを受けた。私は馬車に乗り込み領主様の館へと向かう。執務室に通されると早速話しが始まった。
「昨日、また魔法師ギルドのギルドマスターにちょっかいをかけられたらしいな」
「はい。私の執務室に侵入して何かを探しているようでした。執務室内の物は何も持ち出されていないことを確認しているので目的も物は見つからなかったと思われます」
「そうか、しかしここまでしでかされてはこの街で魔法師ギルドをそのまま営業させるわけにはいかない。国王様に経緯を説明する必要があるが最悪の場合には国全体から魔法師ギルドを排斥するかもしれない」
「私個人の意見としましてはそれで構わないかと。私は魔法師ギルドに必要性をそもそも感じていませんので」
「どういうことだ?」
「現状、魔法は国で秘匿して扱っている物だと思っております。だからこそ私も魔法師ギルドへ改良した石生成の魔法を伝えていません。これは他の国との戦争となった際に砦を作られると厄介だと感じたためです」
「その判断は正しいだろう。しかし、魔法を教わるのにも魔法師ギルドは必要だぞ」
「それ機関が国をまたがる必要はないと考えています。そうした方が国の発展とともに魔法が発展するとも。今の魔法師ギルドはその発展を止める障害でしかないと思っています」
領主様は私の発言に顔をしかめていた。
「君の発言は少し言いすぎだとは思うが、二度も問題を起こされればそのような考えになっても仕方ないか。分かった。先んじてこの領地だけではあるが魔法師ギルドを排斥する」
「ありがとうございます。つきましては、平民用に文字の読み書き、計算、生活魔法の使い方を学ぶ学校を設立してはいかがでしょうか?」
「平民の子供にそのような余裕はないと思うが、なぜだ」
「まずこの領地には文官の数が少なすぎます。優秀な者のおかげで私のところは何とかなっていますが領主様のところは人が足りないのではないですか?」
「確かに人は足りん。だが、学校を作ることで解決されるとは思えないのだが」
「短期間では無理でしょう。ですが、長期的に見れば平民から士官できる可能性は出てくると思います。そしてこのエラデエーレ領は街門や外壁の建設で仕事があふれている最中です。より多くの人が集まれば裕福な者も増えるかと思います」
「今すぐには結論は出せん。書類にまとめて提出してくれ。一応議題には上がるようにしておく」
「分かりました。話しが変わりすぎましたね。それで魔法師ギルドの目的は何だったのでしょうか?」
「はあ。おそらく君の無詠唱魔法だろう。君は自分の偉業に無関心すぎる。ちなみにギルドマスターは自害したからこれ以上は何も聞けないぞ」
「そうですか。誰か裏で手引きをしている人間がいると考えていたのですが仕方ないですね。それでこれ以上話しはありますか?」
「ない。退出して構わないぞ」
領主様から了承を得られたことで私は屋敷へと戻った。
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