第42話

一月後、王都の魔法師ギルドより手紙が届いた。その内容は無詠唱の詳しい使い方が分からなければお金は出せないという結論に至ったらしい。どのみち私は無詠唱についてギルドに報告はしないと結論を出していたためこれは構わなかった。続いてエラデエーレの魔法師ギルドのギルドマスターは左遷され、副ギルドマスターが昇進するらしい。今は手が出せないが何か問題があれば報告してほしいと書いてあった。


エラデエーレの魔法師ギルドに良い印象が全くないため、私から魔法師ギルドには関わらないことにした。


次は、領主様に提案した魔力を含んだ食料について結論がでたとの知らせがあった。私はその結論を聞くために領主の館へと向かう。館に着くと執事が待っておりすぐに執務室へ通された。


私がソファへ座ると早速話しが始まった。


「結論から言うと、魔力を含む食料を使うという提案は可決された。まずは土魔法を使う奴隷が王都よりこちらへ移送されてくる。その者に食材を食べさせ、本当に魔力が増幅するのか、そしてどれだけ摂取すると死に至るのかを実験することになった」


「つまり、実行に移すまでに一か月はかかるということですね」


「そうだ。それと最初に食べる魔物はホーンラビットとすることも決まっている。可能であれば繁殖させて毎日食べられるようにするのが望ましいのだが、まだどれだけ人体に作用するのかわからないうちに育てても仕方がないからな。それは結果次第でと言うことになる」


「分かりました。しかし、その報告をするためだけに私を呼んだのですか?」


「いや。こちらが本題なのだが、今は土魔法師以外の魔法使いを育てていないがそれはどうなのかと国王様がおっしゃっていてな。君の考えを聞かせてもらえないかと思ってな」


「私の考えとおっしゃられても、今は生活の基盤を整えることに重点を置いた方がいいと思って土魔法師を訓練させています。下手に攻撃魔法を覚えさせると魔の森に行くものが出かねませんから。傷の手当てが十分にできない現状ではそれは避ける出来だと判断しました」


「そうだな。君の判断は正しそうだ。それでポーションの材料である薬草の育成はどうなっている?」


「ようやく、薬草を植え終わったところです。必要に応じてポーションが作れるような環境が整いました。街にも治療院なる場所を作りまして、貴族街に出入りしなくても治療が受けられるようになっています」


「それは順調ということでいいのかな?」


「今のところはと言ったところですね。何より薬草の栽培方法が確立できていないためそちらの実験にも薬草を取られることを考えると無用な怪我等は避けて欲しいところです」


「分かった。だがこの街も落ち着いてきたので魔の森の魔物たちを間引かねばならん。何とかして最低限のポーションを確保するようにしてくれ」


「分かりました」


話しを終えたことで私は自分の屋敷に帰ると、護衛が数名倒れていた。しかも私が雇っている護衛だ。執事を呼ぶも返事がなく護衛も意識を失っているだけのようなので馬車に乗っていた護衛に看病を任せ、私は屋敷の中に入った。


屋敷の中も外と同じようにメイドや執事が倒れている。一人のメイドが怯えながらも私に報告しに来た。


「新しく魔法師ギルドのギルドマスターとなった方がいらっしゃいまして。お嬢様はお会いにならないことを伝えたのですがいきなり攻撃を受けましてこのような状況になりました」


「それでそいつはどこにいるの?」


「お嬢様の執務室に行きました」


私は久しぶりに怒りを覚えながらも執務室に向かう。そこには書類を荒らし何かを探している若い男がいた。私はその男に向かってあいさつ代わりにインパクトの魔法を放った。

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