第41話
私は領主様への相談を終え、自分の屋敷へと帰った。時刻は夕方、土魔法師たちは既に寮に帰っているだろう。念のため裏手に回ってみると、積み上げられた石が十個。一日でこれでは街門の修復には十数年かかるだろう。しかし、それは先程、領主様にお願いしてきたので大丈夫であろう。私は魔法師たちの軍規を定めなければならない。
それは次の日の訓練の合間に話し合うことにした。次の日、軍規について話し合うことにした。
「まず、これは絶対遵守してもらう案件なのだけれど、私が教えた魔法は私の命令以外ではだれにも教えてはいけないわ。それがたとえ国王様の命令であってもよ」
その言葉に四人は驚いていたが、アダルヘルムより質問が入る。
「私共が国王様の命令を断れるとは思えないのですが、その時はどうすればいいのでしょうか?」
「そうね。なんとかごまかしなさい。何か考えておくわ」
その答えに四人のジト目が突き刺さる。私はごまかすことをせずにみんなに説明した。
「別に国王様になら話してもいいとは思っているのよ。私が懸念しているのはそれが偽物、他国のスパイだった場合ね。その場合にはこの国の優位性が損なわれかねないわ」
すると先程ジト目で見ていた四人は納得した表情を見せた。
「まあ最悪は今使っている言語以外の言葉を詠唱として用いることになると思うから覚悟はしておいて。それとこの規律を破った場合は死刑になると思っていてね」
四人は顔を青くしていたが既に魔法を教えられているので断ることができない。そこでテベリオが反抗し始めた。
「てめぇが勝手に魔法を教えておいて他に教えたら死刑なんて横暴だろ」
どうもテベリオはかなり苛立っているようで、今にもこちらを攻撃してきそうだ。
「そうね。今退団するなら全財産没収と魔法師ギルドへの関与が見られた場合後も財産の没収という形で納めるけれどどうする?」
「命を取られるよりはマシだ」
そう言ってテベリオは出ていった。私は護衛の一人をテベリオの後を追わせ財産を没収してくるように命令した。
「あなた達はいいの?」
私は三人となった魔法師候補へ尋ねると全員が頷いた。
「そう言えばあなた達は鏡写しの儀を受けているから危険手当てで給金が銀貨二枚追加になったわ。よかったわね」
危険が伴っているとはいえ給金が上がったことに関して三人は嬉しそうにしている。
「それと領主様が新たに土魔術師を採用し始めているわ。おそらくあなた達の部下になると思うからしっかりと訓練を積んでちょうだい。それと軍規に関しては何か提案があれば私に直接話してちょうだい」
三人はそれぞれ返事をした。
それから十日後、領主様が選んだ土魔法師二十名が合流した。全員で石材を生成するのは一日百個が限界だった。まあ前は一日十個が限界だったので効率が十倍になったと思えばかなりの進歩だ。その石材の利用について話しがあるとのことで私は領主の館へ呼ばれた。
「いきなり呼び出してすまないな。要件は石材の使用についてだ。今までは街門の修理に使おうと考えていたが、今までの石材に比べ魔法で作られたものの方が何倍も強度が高いのだ。それで街門、外壁を新しく作ろうかと考えている」
「それは領主様の命とあれば領民も動かすことは可能でしょうが、石材を作るだけで十数年はかかると思いますよ」
「それは土魔法師を増やすことで対応できないか?」
「できるとは思いますが、中には規律を破るものも出てくると思います。数はもちろん重要ですが、質もないがしろにはできないかと思います」
「質と言うことは例の儀式を行うということか?」
「書庫にある本によると魔力を含む食材を食べることでも魔力量の増幅が見られるそうです。ただし、魔力量が多すぎる場合は死に至るようですが」
「それを実験してみろというわけか。成功すれば確かに魔法について他国よりも一歩先んじることができるが本当にうまくいくのか?」
「それはやってみないことには分かりません。ですが、実力がなければ魔の森からこの街を守り切ることは難しいかと思います」
「確かにな。少し考えさせてくれ」
これで領主様との話しは終わり、私は領主の館を後にした。
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